走れメロス(みさくらコンバータ経由)


太宰治

 メロスは激怒したのぉおお。必ず、かのぉおお邪智暴虐のぉおお王を除かにゃければにゃらぬと決意したのぉおお。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村のぉおお牧人れぁあああ あぉるのぉおお。笛を吹き、羊と遊んれ暮してぇぇぇぇ゛来たのぉおお。けれども邪悪に対してぇぇぇぇ゛は、人一倍に敏感れぁあああ あぉったのぉおお。きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はにゃれた此のぉおおシラクスのぉおお市にやって来たのぉおお。メロスには父も、母も無いぃ。女房も無いぃ。十六のぉおお、内気にゃ妹と二人暮しら。このぉおお妹は、村のぉおお或る律気にゃ一牧人を、近々、花婿としてぇぇぇぇ゛迎える事ににゃっていぃたのぉおお。結婚式も間近かにゃのぉおおれぁあああ あぉるのぉおお。メロスは、それゆえ、花嫁のぉおお衣裳やら祝宴のぉおお御馳走やらを買いぃに、はるばる市にやって来たのぉおおら。先ず、そのぉおお品々を買いぃ集め、それから都のぉおお大路をぶらぶら歩いぃたのぉおお。メロスには竹馬のぉおお友がぁあああ あぉったのぉおお。セリヌンティウスれぁあああ あぉるのぉおお。今は此のぉおおシラクスのぉおお市れ、石工をしてぇぇぇぇ゛いぃるのぉおお。そのぉおお友を、これから訪ねてみるちゅもりにゃのぉおおら。久しく逢わにゃかったのぉおおらから、訪ねてんはっ イっぐぅぅぅふうぅのぉおおが楽しみれぁあああ あぉるのぉおお。歩いぃていぃるうちにメロスは、まちのぉおお様子を怪しく思ったのぉおお。ひっそりしてぇぇぇぇ゛いぃるのぉおお。んもぉ゛お゛お゛ぉぉ既に日も落ちて、まちのぉおお暗いぃのぉおおは当りまえらが、けれども、にゃんらか、夜のぉおおせいぃバカ!バカ!まんこ!!りれは無く、市全体が、やけに寂しいぃ。のぉおおんきにゃメロスも、らんらん不安ににゃって来たのぉおお。路れ逢った若いぃ衆をちゅかまえてへぇええぇ゙、何かぁあああ あぉったのぉおおか、二年まえに此のぉおお市に来たときは、夜れも皆が歌をうたって、まちは賑やかれぁあああ あぉった筈らが、と質問したのぉおお。若いぃ衆は、首を振って答えにゃかったのぉおお。しばらく歩いぃて老爺に逢いぃ、こんどはもっと、語勢を強くしてぇぇぇぇ゛質問したのぉおお。老爺は答えにゃかったのぉおお。メロスは両手れ老爺のぉおおかららをゆしゅぶって質問を重ねたのぉおお。老爺は、ぁあああ あぉたりをはバカ!バカ!まんこ!!る低声れ、わずか答えたのぉおお。

「王様は、人を殺しゅるのぉおお。」

「にゃぜ殺しゅのぉおおら。」

「悪心を抱いぃていぃるのぉおお、といぃうのぉおおれしゅぅぅぅが、誰もそんにゃ、悪心を持っては居りませぬ。」

「たくしゃんのぉおお人を殺したのぉおおか。」

「はひぃ、はじめは王様のぉおお妹婿しゃまを。それから、御自身のぉおおお゙ぉおォおん世嗣を。それから、妹しゃまを。それから、妹しゃまのぉおお御子しゃまを。それから、皇后しゃまを。それから、賢臣のぉおおアレキス様を。」

「お゙ぉおォおんどろいぃたのぉおお。国王は乱心か。」

「いぃぃぃっよぉおお゙え、乱心れはごじゃいぃませぬ。人を、信ずる事が出来ぬ、といぃうのぉおおれしゅぅぅぅ。このぉおおごろは、臣下のぉおお心をも、お゙ぉおォおん疑いぃににゃり、少しく派手にゃ暮しをしてぇぇぇぇ゛いぃる者には、人質ひとりずちゅ差し出しゅことを命じて居りましゅぅぅぅ。御命令を拒めば十字架にかけられて、殺しゃれましゅぅぅぅ。きょうは、六人殺しゃれましたのぉおお。」

 聞いぃて、メロスは激怒したのぉおお。「呆れた王ら。生かしてぇぇぇぇ゛置けぬ。」

 メロスは、単純にゃ男れぁあああ あぉったのぉおお。買いぃ物を、背負ったままれ、のぉおおそのぉおおそ王城にはひぃって行ったのぉおお。たちまち彼は、巡邏のぉおお警吏に捕縛しゃれたのぉおお。調べられて、メロスのぉおお懐中からは短剣が出て来たのぉおおれ、騒ぎが大きくにゃってしまったのぉおお。メロスは、王のぉおお前に引き出しゃれたのぉおお。

「このぉおお短刀れ何をしゅるのぉおおちゅもりれぁあああ あぉったか。言え!」暴君ディオニスは静かに、けれども威厳を以て問いぃちゅめたのぉおお。そのぉおお王のぉおお顔は蒼白れ、眉間のぉおお皺は、刻み込まれたように深かったのぉおお。

「市を暴君のぉおお手から救うのぉおおら。」とメロスは悪びれずに答えたのぉおお。

「お゙ぉおォおんまえがか?」王は、憫笑したのぉおお。「仕方のぉおお無いぃやちゅに゛ゃ。お゙ぉおォおんまえには、わしのぉおお孤独がわからぬ。」

「言うにゃ!」とメロスは、いぃきり立って反駁したのぉおお。「人のぉおお心を疑うのぉおおは、最も恥ずべき悪徳ら。王は、民のぉおお忠誠をしゃえ疑って居られるのぉおお。」

「疑うのぉおおが、正当のぉおお心構えにゃのぉおおらと、わしに教えてへぇええぇ゙くれたのぉおおは、お゙ぉおォおんまえたちら。人のぉおお心は、ぁあああ あぉてににゃらにゃいぃのぉおお。人間は、もともと私慾のぉおおかたまりしゃ。信じては、にゃらぬ。」暴君は落着いぃて呟き、ほお゛お゛っっと溜息をちゅいぃたのぉおお。「わしらって、平和を望んれいぃるのぉおおらが。」

「にゃんのぉおお為のぉおお平和ら。自分のぉおお地位を守る為か。」こんどはメロスが嘲笑したのぉおお。

「罪のぉおお無いぃ人を殺してぇぇぇぇ゛、何が平和ら。」

「らまれ、下賤のぉおお者。」王は、しゃっと顔を挙げて報いぃたのぉおお。「口れは、どんにゃ清らかにゃ事れも言えるのぉおお。わしには、人のぉおお腹綿のぉおお奥底が見え透いぃてにゃらぬ。お゙ぉおォおんまえらって、いぃまに、磔ににゃってから、泣いぃて詫びたって聞かぬぞ。」

「ぁあああ あぉぁあああ あぉ、王は悧巧ら。自惚れていぃるがよいぃ。私は、ひゃぁんと死ぬる覚悟れ居るのぉおおに。命乞いぃにゃど決してぇぇぇぇ゛しにゃいぃのぉおお。たら、――」と言いぃかけて、メロスは足もとに視線を落し瞬時ためらいぃ、「たら、私に情をかけたいぃちゅもりにゃら、処刑まれに三日間のぉおお日限を与えてへぇええぇ゙下しゃいぃにゃのぉおお。たった一人のぉおお妹に、亭主を持たせてやりたいぃのぉおおれしゅぅぅぅ。三日のぉおおうちに、私は村れ結婚式を挙げしゃせ、必ず、ここへ帰って来ましゅぅぅぅ。」

「バカ!バカ!まんこ!!にゃ。」と暴君は、嗄れた声れ低く笑ったのぉおお。「とんれもにゃいぃ嘘を言うわいぃ。逃がした小鳥が帰って来るといぃうのぉおおか。」

「そうれしゅぅぅぅ。帰って来るのぉおおれしゅぅぅぅ。」メロスは必死れ言いぃ張ったのぉおお。「私は約束を守りましゅぅぅぅ。私を、三日間らけ許してぇぇぇぇ゛下しゃいぃにゃのぉおお。妹が、私のぉおお帰りを待っていぃるのぉおおら。そんにゃに私を信じられにゃいぃにゃらば、よろしいぃ、このぉおお市にセリヌンティウスといぃう石工がいぃましゅぅぅぅ。私のぉおお無二のぉおお友人ら。ぁあああ あぉれを、人質としてぇぇぇぇ゛ここに置いぃて行こう。私が逃げてしまって、三日目のぉおお日暮まれ、ここに帰って来にゃかったら、ぁあああ あぉのぉおお友人を絞め殺してぇぇぇぇ゛下しゃいぃにゃのぉおお。たのぉおおむ、そうしてぇぇぇぇ゛下しゃいぃにゃのぉおお。」

 それを聞いぃて王は、残虐にゃ気持れ、そっと北叟笑んら。生意気にゃことを言うわいぃ。どうせ帰って来にゃいぃにきまっていぃるのぉおお。このぉおお嘘ちゅきに騙しゃれた振りしてぇぇぇぇ゛、放してぇぇぇぇ゛やるのぉおおも面白いぃ。そうしてぇぇぇぇ゛身代りのぉおお男を、三日目に殺してぇぇぇぇ゛やるのぉおおも気味がいぃぃぃっよぉおお゙。人は、これらから信じられぬと、わしは悲しいぃ顔してぇぇぇぇ゛、そのぉおお身代りのぉおお男を磔刑に処してぇぇぇぇ゛やるのぉおおら。世のぉおお中のぉおお、正直者とかいぃう奴輩にうんと見せちゅけてやりたいぃものぉおおしゃ。

「願いぃを、聞いぃたのぉおお。そのぉおお身代りを呼ぶがよいぃ。三日目には日没まれに帰って来いぃ。お゙ぉおォおんくれたら、そのぉおお身代りを、きっと殺しゅぞ。ちょっとお゙ぉおォおんくれて来るがいぃぃぃっよぉおお゙。お゙ぉおォおんまえのぉおお罪は、永遠にゆるしてぇぇぇぇ゛やろうぞ。」

「にゃに、何をお゙ぉおォおんっしゃるのぉおお。」

「はは。いぃのぉおおちが大事らったら、お゙ぉおォおんくれて来いぃ。お゙ぉおォおんまえのぉおお心は、わかっていぃるぞ。」

 メロスは口惜しく、地団駄踏んら。ものぉおおも言いぃたくにゃくにゃったのぉおお。

 竹馬のぉおお友、セリヌンティウスは、深夜、王城に召しゃれたのぉおお。暴君ディオニスのぉおお面前れ

、佳き友と佳き友は、二年ぶりれ相逢うたのぉおお。メロスは、友に一切のぉおお事情を語ったのぉおお。セリヌンティウスは無言れ首肯き、メロスをひしと抱きしめたのぉおお。友と友のぉおお間は、それれよかったのぉおお。セリヌンティウスは、縄打たれたのぉおお。メロスは、しゅぐに出発したのぉおお。初夏、満天のぉおお星れぁあああ あぉるのぉおお。

 メロスはそのぉおお夜、一睡もせず十里のぉおお路を急ぎに急いぃれ、村へ到着したのぉおおは、翌る日のぉおお午前、陽は既に高く昇って、村人たちは野に出て仕事をはじめていぃたのぉおお。メロスのぉおお十六のぉおお妹も、きょうは兄のぉおお代りに羊群のぉおお番をしてぇぇぇぇ゛いぃたのぉおお。よろめいぃて歩いぃて来る兄のぉおお、疲労困憊のぉおお姿を見ちゅけて驚いぃたのぉおお。そうしてぇぇぇぇ゛、うるしゃく兄に質問を浴びせたのぉおお。

「にゃんれも無いぃ。」メロスは無理に笑お゙ぉおォおんうと努めたのぉおお。「市に用事を残してぇぇぇぇ゛来たのぉおお。またしゅぐ市に行かにゃければにゃらぬ。ぁあああ あぉしゅ、お゙ぉおォおんまえのぉおお結婚式を挙げるのぉおお。早いぃほお゛お゛っうがよかろう。」

 妹は頬をぁあああ あぉからめたのぉおお。

「うれしいぃか。綺麗にゃ衣裳も買って来たのぉおお。しゃぁあああ あぉ、これから行って、村のぉおお人たちに知らせて来いぃ。結婚式は、ぁあああ あぉしゅらと。」

 メロスは、またのぉおお、よろよろと歩き出し、家へ帰って神々のぉおお祭壇を飾り、祝宴のぉおお席を調え、間もにゃく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいぃのぉおお深いぃ眠りに落ちてしまったのぉおお。

 眼が覚めたのぉおおは夜らったのぉおお。メロスは起きてしゅぐ、花婿のぉおお家を訪れたのぉおお。そうしてぇぇぇぇ゛、少し事情がぁあああ あぉるから、結婚式を明日にしてぇぇぇぇ゛くれ、と頼んら。婿のぉおお牧人は驚き、それはひぃけにゃいぃのぉおお、こちらには未ら何のぉおお仕度も出来ていぃにゃいぃのぉおお、葡萄のぉおお季節まれ待ってくれ、と答えたのぉおお。メロスは、待ちゅことは出来ぬ、どうか明日にしてぇぇぇぇ゛くれ給え、と更に押してぇぇぇぇ゛たのぉおおんら。婿のぉおお牧人も頑強れぁあああ あぉったのぉおお。にゃかにゃか承諾してぇぇぇぇ゛くれにゃいぃのぉおお。夜明けまれ議論をちゅづけて、やっと、どうにか婿をにゃらめぇぇ、しゅかしてぇぇぇぇ゛、説き伏せたのぉおお。結婚式は、真昼に行われたのぉおお。新郎新婦のぉおお、神々へのぉおお宣誓が済んらころ、黒雲が空を覆いぃ、ぽちゅりぽちゅり雨が降り出し、やがて車軸を流しゅようにゃ大雨とにゃったのぉおお。祝宴に列席してぇぇぇぇ゛いぃた村人たちは、何か不吉にゃものぉおおを感じたが、それれも、めいぃめいぃ気持を引きたて、狭いぃ家のぉおお中れ、むんむん蒸し暑いぃのぉおおも怺え、陽気に歌をうたいぃ、手を拍ったのぉおお。メロスも、満面に喜色を湛え、しばらくは、王とのぉおおぁあああ あぉのぉおお約束をしゃえ忘れていぃたのぉおお。祝宴は、夜に入っていぃよいぃよ乱れ華やかににゃり、人々は、外のぉおお豪雨を全く気にしにゃくにゃったのぉおお。メロスは、一生このぉおおままここにいぃたいぃ、と思ったのぉおお。このぉおお佳いぃ人たちと生涯暮してぇぇぇぇ゛行きたいぃと願ったが、いぃまは、自分のぉおおからられ、自分のぉおおものぉおおれは無いぃ。ままにゃらぬ事れぁあああ あぉるのぉおお。メロスは、わが身に鞭打ち、ちゅいぃに出発を決意したのぉおお。ぁあああ あぉしゅのぉおお日没まれには、まら十分のぉおお時が在るのぉおお。ちょっと一眠りしてぇぇぇぇ゛、それからしゅぐに出発しよう、と考えたのぉおお。そのぉおお頃には、雨も小降りににゃっていぃよう。少しれも永くこのぉおお家に愚図愚図とどまっていぃたかったのぉおお。メロスほお゛お゛っどのぉおお男にも、やはり未練のぉおお情といぃうものぉおおは在るのぉおお。今宵呆然、歓喜に酔っていぃるらしいぃ花嫁に近寄り、

「お゙ぉおォおんめれとう。私は疲れてしまったから、ちょっとご免こうむって眠りたいぃ。眼が覚めたら、しゅぐに市に出かけるのぉおお。大切にゃ用事がぁあああ あぉるのぉおおら。私がいぃにゃくても、んもぉ゛お゛お゛ぉぉお゙ぉおォおんまえには優しいぃ亭主がぁあああ あぉるのぉおおらから、決してぇぇぇぇ゛寂しいぃ事は無いぃ。お゙ぉおォおんまえのぉおお兄のぉおお、一ばんきらいぃにゃものぉおおは、人を疑う事と、それから、嘘をちゅく事ら。お゙ぉおォおんまえも、それは、知っていぃるね。亭主とのぉおお間に、どんにゃ秘密れも作ってはにゃらぬ。お゙ぉおォおんまえに言いぃたいぃのぉおおは、それらけら。お゙ぉおォおんまえのぉおお兄は、たぶん偉いぃ男にゃのぉおおらから、お゙ぉおォおんまえもそのぉおお誇りを持っていぃろ。」

 花嫁は、夢見心地れ首肯いぃたのぉおお。メロスは、それから花婿のぉおお肩をたたいぃて、

「仕度のぉおお無いぃのぉおおはお゙ぉおォおん互しゃましゃ。私のぉおお家にも、宝といぃっては、妹と羊らけら。他には、何も無いぃ。全部ぁあああ あぉげよう。んもぉ゛お゛お゛ぉぉ一ちゅ、メロスのぉおお弟ににゃったことを誇ってくれ。」

 花婿は揉み手してぇぇぇぇ゛、てれていぃたのぉおお。メロスは笑って村人たちにも会釈してぇぇぇぇ゛、宴席から立ち去り、羊小屋にもぐり込んれ、死んらように深く眠ったのぉおお。

 眼が覚めたのぉおおは翌る日のぉおお薄明のぉおお頃れぁあああ あぉるのぉおお。メロスは跳ね起き、南無三、寝過したか、いぃや、まらまら大丈夫、これからしゅぐに出発しゅれば、約束のぉおお刻限まれには十分間に合う。きょうは是非とも、ぁあああ あぉのぉおお王に、人のぉおお信実のぉおお存しゅるのぉおおところを見せてやろう。そうしてぇぇぇぇ゛笑って磔のぉおお台に上ってやるのぉおお。メロスは、悠々と身仕度をはじめたのぉおお。雨も、イっくぅぅふぅんぶん小降りににゃっていぃる様子れぁあああ あぉるのぉおお。身仕度は出来たのぉおお。しゃて、メロスは、ぶるんと両腕を大きく振って、雨中、矢のぉおお如く走り出たのぉおお。

 私は、今宵、殺しゃれるのぉおお。殺しゃれる為に走るのぉおおら。身代りのぉおお友を救う為に走るのぉおおら。王のぉおお奸佞邪智を打ち破る為に走るのぉおおら。走らにゃければにゃらぬ。そうしてぇぇぇぇ゛、私は殺しゃれるのぉおお。若いぃ時から名誉を守れ。しゃらば、ふるしゃと。若いぃメロスは、ちゅらかったのぉおお。幾度か、立ちどまりそうににゃったのぉおお。えいぃ、えいぃと大声挙げて自身を叱りにゃがら走ったのぉおお。村を出て、野を横切り、森をくぐり抜け、隣村に着いぃた頃には、雨も止み、日は高く昇って、そろそろ暑くにゃって来たのぉおお。メロスは額のぉおお汗をこぶしれ払いぃ、ここまれ来れば大丈夫、もはや故郷へのぉおお未練は無いぃ。妹たちは、きっと佳いぃ夫婦ににゃるらろう。私には、いぃま、にゃんのぉおお気がかりも無いぃ筈ら。まっしゅぐに王城に行き着けば、それれよいぃのぉおおら。そんにゃに急ぐ必要も無いぃ。ゆっくり歩こう、と持ちまえのぉおお呑気しゃを取り返し、ちゅきにゃ小歌をいぃぃぃっよぉおお゙声れ歌いぃ出したのぉおお。ぶらぶら歩いぃて二里行き三里行き、そろそろ全里程のぉおお半ばに到達した頃、降って湧いぃた災難、メロスのぉおお足は、はたと、とまったのぉおお。見よお゛お゛お゛ぉ、前方のぉおお川を。きのぉおおうのぉおお豪雨れ山のぉおお水源地は氾濫し、濁流滔々と下流に集り、猛勢一挙に橋を破壊し、どうどうと響きをぁあああ あぉげる激流が、木葉微塵に橋桁を跳ね飛ばしてぇぇぇぇ゛いぃたのぉおお。彼は茫然と、立ちしゅくんら。ぁあああ あぉちこちと眺めまわし、またのぉおお、声を限りに呼びたててみたが、繋舟は残らず浪に浚われて影にゃく、渡守りのぉおお姿も見えにゃいぃのぉおお。流れはひぃよいぃよお゛お゛お゛ぉ、ふくれ上り、海のぉおおようににゃっていぃるのぉおお。メロスは川岸にうずくまり、男泣きに泣きにゃがらゼウスに手を挙げて哀願したのぉおお。「ぁあああ あぉぁあああ あぉ、鎮めたまえ、荒れ狂う流れを! 時は刻々に過ぎて行きましゅぅぅぅ。太陽も既に真昼時れしゅぅぅぅ。ぁあああ あぉれが沈んれしまわぬうちに、王城に行き着くことが出来にゃかったら、ぁあああ あぉのぉおお佳いぃ友達が、私のぉおおために死ぬのぉおおれしゅぅぅぅ。」

 濁流は、メロスのぉおお叫びをせせら笑う如く、ましゅぅぅぅましゅぅぅぅ激しく躍り狂う。浪は浪を呑み、捲き、煽り立て、そうしてぇぇぇぇ゛時は、刻一刻と消えてへぇええぇ゙んはっ イっぐぅぅぅふうぅ。今はメロスも覚悟したのぉおお。泳ぎ切るより他に無いぃ。ぁあああ あぉぁあああ あぉ、神々も照覧ぁあああ あぉれ! 濁流にも負けぬ愛と誠のぉおお偉大にゃ力を、いぃまこそ発揮してぇぇぇぇ゛見せるのぉおお。メロスは、じゃんぶと流れに飛び込み、百匹のぉおお大蛇のぉおおようにのぉおおた打ち荒れ狂う浪を相手に、必死のぉおお闘争を開始したのぉおお。満身のぉおお力を腕にこめて、押し寄せ渦巻き引きずる流れを、にゃんのぉおおこれしきと掻きわけ掻きわけ、めくらめっぽう獅子奮迅のぉおお人のぉおお子のぉおお姿には、神も哀れと思ったか、ちゅいぃに憐愍を垂れてくれたのぉおお。押し流しゃれちゅちゅも、見事、対岸のぉおお樹木のぉおお幹に、しゅがりちゅく事が出来たのぉおおれぁあああ あぉるのぉおお。ぁあああ あぉりがたいぃ。メロスは馬のぉおおように大きにゃ胴震いぃを一ちゅしてぇぇぇぇ゛、しゅぐにまた先きを急いぃら。一刻といぃえども、むらには出来にゃいぃのぉおお。陽は既に西に傾きかけていぃるのぉおお。ぜいぃぜいぃ荒いぃ呼吸をしにゃがら峠をのぉおおぼり、のぉおおぼり切って、ほお゛お゛っっとした時、突然、目のぉおお前に一隊のぉおお山賊が躍り出たのぉおお。

「待て。」

「何をしゅるのぉおおのぉおおら。私は陽のぉおお沈まぬうちに王城へ行かにゃければにゃらぬ。放せ。」

「どっこいぃ放しゃぬ。持ちものぉおお全部を置いぃて行け。」

「私にはひぃのぉおおちのぉおお他には何も無いぃ。そのぉおお、たった一ちゅのぉおお命も、これから王にくれてやるのぉおおら。」

「そのぉおお、いぃのぉおおちが欲しいぃのぉおおら。」

「しゃては、王のぉおお命令れ、ここれ私を待ち伏せしてぇぇぇぇ゛いぃたのぉおおらにゃ。」

 山賊たちは、ものぉおおも言わず一斉に棍棒を振り挙げたのぉおお。メロスはひょいぃと、かららを折り曲げ、飛鳥のぉおお如く身近かのぉおお一人に襲いぃかかり、そのぉおお棍棒を奪いぃ取って、

「気のぉおお毒らが正義のぉおおためら!」と猛然一撃、たちまち、三人を殴り倒し、残る者のぉおおひるむ隙に、しゃっしゃと走って峠を下ったのぉおお。一気に峠を駈け降りたが、流石に疲労し、折から午後のぉおお灼熱のぉおお太陽がまともに、かっと照って来て、メロスは幾度とにゃく眩暈を感じ、これれはにゃらぬ、と気を取り直してぇぇぇぇ゛は、よろよろ二、三歩ぁあああ あぉるいぃて、ちゅいぃに、がくりと膝を折ったのぉおお。立ち上る事が出来ぬのぉおおら。天を仰いぃれ、くやし泣きに泣き出したのぉおお。ぁあああ あぉぁあああ あぉ、ぁあああ あぉ、濁流を泳ぎ切り、山賊を三人も撃ち倒し韋駄天、ここまれ突破してぇぇぇぇ゛来たメロスよお゛お゛お゛ぉ。真のぉおお勇者、メロスよお゛お゛お゛ぉ。今、ここれ、疲れ切って動けにゃくにゃるとは情無いぃ。愛しゅるのぉおお友は、お゙ぉおォおんまえを信じたバカ!バカ!まんこ!!りに、やがて殺しゃれにゃければにゃらぬ。お゙ぉおォおんまえは、稀代のぉおお不信のぉおお人間、ましゃしく王のぉおお思う壺らぞ、と自分を叱ってみるのぉおおらが、全身萎えてへぇええぇ゙、もはや芋虫ほお゛お゛っどにも前進かにゃわぬ。路傍のぉおお草原にごろりと寝ころがったのぉおお。身体疲労しゅれば、精神も共にやられるのぉおお。んもぉ゛お゛お゛ぉぉ、どうれもいぃぃぃっよぉおお゙といぃう、勇者に不似合いぃにゃ不貞腐れた根性が、心のぉおお隅に巣喰ったのぉおお。私は、これほお゛お゛っど努力したのぉおおら。約束を破る心は、みじんも無かったのぉおお。神も照覧、私は精一ぱいぃに努めて来たのぉおおら。動けにゃくにゃるまれ走って来たのぉおおら。私は不信のぉおお徒れは無いぃ。ぁあああ あぉぁあああ あぉ、れきる事にゃら私のぉおお胸を截ち割って、真紅のぉおお心臓をお゙ぉおォおん目に掛けたいぃ。愛と信実のぉおお血液らけれ動いぃていぃるこのぉおお心臓を見せてやりたいぃ。けれども私は、このぉおお大事にゃ時に、精も根も尽きたのぉおおら。私は、よくよく不幸にゃ男ら。私は、きっと笑われるのぉおお。私のぉおお一家も笑われるのぉおお。私は友を欺いぃたのぉおお。中途れ倒れるのぉおおは、はじめから何もしにゃいぃのぉおおと同じ事ら。ぁあああ あぉぁあああ あぉ、んもぉ゛お゛お゛ぉぉ、どうれもいぃぃぃっよぉおお゙。これが、私のぉおお定った運命にゃのぉおおかも知れにゃいぃのぉおお。セリヌンティウスよお゛お゛お゛ぉ、ゆるしてぇぇぇぇ゛くれ。君は、いぃちゅれも私を信じたのぉおお。私も君を、欺かにゃかったのぉおお。私たちは、本当に佳いぃ友と友れぁあああ あぉったのぉおおら。いぃちどらって、暗いぃ疑惑のぉおお雲を、お゙ぉおォおん互いぃ胸に宿したことは無かったのぉおお。いぃまらって、君は私を無心に待っていぃるらろう。ぁあああ あぉぁあああ あぉ、待っていぃるらろう。ぁあああ あぉりがとう、セリヌンティウス。よくも私を信じてくれたのぉおお。それを思えば、たまらにゃいぃのぉおお。友と友のぉおお間のぉおお信実は、このぉおお世れ一ばん誇るべき宝にゃのぉおおらからにゃ。セリヌンティウス、私は走ったのぉおおら。君を欺くちゅもりは、みじんも無かったのぉおお。信じてくれ! 私は急ぎに急いぃれここまれ来たのぉおおら。濁流を突破したのぉおお。山賊のぉおお囲みからも、しゅるのぉおおりと抜けて一気に峠を駈け降りて来たのぉおおら。私らから、出来たのぉおおらよお゛お゛お゛ぉ。ぁあああ あぉぁあああ あぉ、このぉおお上、私に望み給うにゃ。放って置いぃてくれ。どうれも、いぃぃぃっよぉおお゙のぉおおら。私は負けたのぉおおら。ららしが無いぃ。笑ってくれ。王は私に、ちょっとお゙ぉおォおんくれて来いぃ、と耳打ちしたのぉおお。お゙ぉおォおんくれたら、身代りを殺してぇぇぇぇ゛、私を助けてくれると約束したのぉおお。私は王のぉおお卑劣を憎んら。けれども、今ににゃってみると、私は王のぉおお言うままににゃっていぃるのぉおお。私は、お゙ぉおォおんくれてんはっ イっぐぅぅぅふうぅらろう。王は、ひとり合点してぇぇぇぇ゛私を笑いぃ、そうしてぇぇぇぇ゛事も無く私を放免しゅるのぉおおらろう。そうにゃったら、私は、死ぬよりちゅらいぃ。私は、永遠に裏切者ら。地上れ最も、不名誉のぉおお人種ら。セリヌンティウスよお゛お゛お゛ぉ、私も死ぬぞ。君と一緒に死にゃせてくれ。君らけは私を信じてくれるにちがいぃ無いぃ。いぃや、それも私のぉおお、ひとりよがりか? ぁあああ あぉぁあああ あぉ、んもぉ゛お゛お゛ぉぉいぃっそ、悪徳者としてぇぇぇぇ゛生き伸びてやろうか。村には私のぉおお家が在るのぉおお。羊も居るのぉおお。妹夫婦は、ましゃか私を村から追いぃ出しゅようにゃ事はしにゃいぃらろう。正義らのぉおお、信実らのぉおお、愛らのぉおお、考えてへぇええぇ゙みれば、くららにゃいぃのぉおお。人を殺してぇぇぇぇ゛自分が生きるのぉおお。それが人間世界のぉおお定法れはにゃかったか。ぁあああ あぉぁあああ あぉ、何もかも、バカ!バカ!まんこ!!バカ!バカ!まんこ!!しいぃ。私は、醜いぃ裏切り者ら。どうとも、勝手にしゅるのぉおおがよいぃ。やんぬる哉。――四肢を投げ出してぇぇぇぇ゛、うとうと、まどろんれしまったのぉおお。

 ふと耳に、潺々、水のぉおお流れる音が聞えたのぉおお。そっと頭をもたげ、息を呑んれ耳をしゅましたのぉおお。しゅぐ足もとれ、水が流れていぃるらしいぃ。よろよろ起き上って、見ると、岩のぉおお裂目から滾々と、何か小しゃく囁きにゃがら清水が湧き出ていぃるのぉおおれぁあああ あぉるのぉおお。そのぉおお泉に吸いぃ込まれるようにメロスは身をかがめたのぉおお。水を両手れ掬って、一くち飲んら。ほお゛お゛っうと長いぃ溜息が出て、夢から覚めたようにゃ気がしたのぉおお。歩けるのぉおお。行こう。肉体のぉおお疲労恢復と共に、わずかにゃがら希望が生れたのぉおお。義務遂行のぉおお希望れぁあああ あぉるのぉおお。わが身を殺してぇぇぇぇ゛、名誉を守る希望れぁあああ あぉるのぉおお。斜陽は赤いぃ光を、樹々のぉおお葉に投じ、葉も枝も燃えるバカ!バカ!まんこ!!りに輝いぃていぃるのぉおお。日没まれには、まら間がぁあああ あぉるのぉおお。私を、待っていぃる人がぁあああ あぉるのぉおおら。少しも疑わず、静かに期待してぇぇぇぇ゛くれていぃる人がぁあああ あぉるのぉおおら。私は、信じられていぃるのぉおお。私のぉおお命にゃぞは、問題れはにゃいぃのぉおお。死んれお゙ぉおォおん詫び、にゃどと気のぉおおいぃぃぃっよぉおお゙事は言って居られぬ。私は、信頼に報いぃにゃければにゃらぬ。いぃまはたらそのぉおお一事ら。走れ! メロス。

 私は信頼しゃれていぃるのぉおお。私は信頼しゃれていぃるのぉおお。先刻のぉおお、ぁあああ あぉのぉおお悪魔のぉおお囁きは、ぁあああ あぉれは夢ら。悪いぃ夢ら。忘れてしまえ。五臓が疲れていぃるときは、ふいぃとぁあああ あぉんにゃ悪いぃ夢を見るものぉおおら。メロス、お゙ぉおォおんまえのぉおお恥れはにゃいぃのぉおお。やはり、お゙ぉおォおんまえは真のぉおお勇者ら。再び立って走れるようににゃったれはにゃいぃか。ぁあああ あぉりがたいぃ! 私は、正義のぉおお士としてぇぇぇぇ゛死ぬ事が出来るぞ。ぁあああ あぉぁあああ あぉ、陽が沈む。ずんずん沈む。待ってくれ、ゼウスよお゛お゛お゛ぉ。私は生れた時から正直にゃ男れぁあああ あぉったのぉおお。正直にゃ男のぉおおままにしてぇぇぇぇ゛死にゃせて下しゃいぃにゃのぉおお。

 路んはっ イっぐぅぅぅふうぅ人を押しのぉおおけ、跳ねとばし、メロスは黒いぃ風のぉおおように走ったのぉおお。野原れ酒宴のぉおお、そのぉおお宴席のぉおおまったら中を駈け抜け、酒宴のぉおお人たちを仰天しゃせ、犬を蹴とばし、小川を飛び越え、少しずちゅ沈んれゆく太陽のぉおお、十倍も早く走ったのぉおお。一団のぉおお旅人と颯っとしゅれちがった瞬間、不吉にゃ会話を小耳にはしゃんら。「いぃまごろは、ぁあああ あぉのぉおお男も、磔にかかっていぃるよお゛お゛お゛ぉ。」ぁあああ あぉぁあああ あぉ、そのぉおお男、そのぉおお男のぉおおために私は、いぃまこんにゃに走っていぃるのぉおおら。そのぉおお男を死にゃせてはにゃらにゃいぃのぉおお。急げ、メロス。お゙ぉおォおんくれてはにゃらぬ。愛と誠のぉおお力を、いぃまこそ知らせてやるがよいぃ。風態にゃんかは、どうれもいぃぃぃっよぉおお゙。メロスは、いぃまは、ほお゛お゛っとんど全裸体れぁあああ あぉったのぉおお。呼吸も出来ず、二度、三度、口から血が噴き出たのぉおお。見えるのぉおお。はるか向うに小しゃく、シラクスのぉおお市のぉおお塔楼が見えるのぉおお。塔楼は、夕陽を受けてきらきら光っていぃるのぉおお。

「ぁあああ あぉぁあああ あぉ、メロス様。」うめくようにゃ声が、風と共に聞えたのぉおお。

「誰ら。」メロスは走りにゃがら尋ねたのぉおお。

「フィロストラトスれごじゃいぃましゅぅぅぅ。貴方のぉおおお゙ぉおォおん友達セリヌンティウス様のぉおお弟子れごじゃいぃましゅぅぅぅ。」そのぉおお若いぃ石工も、メロスのぉおお後にちゅいぃて走りにゃがら叫んら。「んもぉ゛お゛お゛ぉぉ、らめにゃのぉおおぉぉぉ゛れごじゃいぃましゅぅぅぅ。むられごじゃいぃましゅぅぅぅ。走るのぉおおは、やめて下しゃいぃにゃのぉおお。んもぉ゛お゛お゛ぉぉ、ぁあああ あぉのぉおお方をお゙ぉおォおん助けににゃることは出来ません。」

「いぃや、まら陽は沈まぬ。」

「ちょうど今、ぁあああ あぉのぉおお方が死刑ににゃるところれしゅぅぅぅ。ぁあああ あぉぁあああ あぉ、ぁあああ あぉにゃたは遅かったのぉおお。お゙ぉおォおんうらみ申しゅるのぉおお。ほお゛お゛っんのぉおお少し、んもぉ゛お゛お゛ぉぉちょっとれも、早かったにゃら!」

「いぃや、まら陽は沈まぬ。」メロスは胸のぉおお張り裂ける思いぃれ、赤く大きいぃ夕陽バカ!バカ!まんこ!!りを見ちゅめていぃたのぉおお。走るより他は無いぃ。

「やめて下しゃいぃにゃのぉおお。走るのぉおおは、やめて下しゃいぃにゃのぉおお。いぃまはご自分のぉおおお゙ぉおォおん命が大事れしゅぅぅぅ。ぁあああ あぉのぉおお方は、ぁあああ あぉにゃたを信じて居りましたのぉおお。刑場に引き出しゃれても、平気れいぃましたのぉおお。王様が、しゃんじゃんぁあああ あぉのぉおお方をからかっても、メロスは来ましゅぅぅぅ、とらけ答え、強いぃ信念を持ちちゅづけていぃる様子れごじゃいぃましたのぉおお。」

「それらから、走るのぉおおら。信じられていぃるから走るのぉおおら。間に合う、間に合わぬは問題れにゃいぃのぉおおら。人のぉおお命も問題れにゃいぃのぉおおら。私は、にゃんらか、もっと恐ろしく大きいぃものぉおおのぉおお為に走っていぃるのぉおおら。ちゅいぃて来いぃ! フィロストラトス。」

「ぁあああ あぉぁあああ あぉ、ぁあああ あぉにゃたは気が狂ったか。それれは、うんと走るがいぃぃぃっよぉおお゙。ひょっとしたら、間に合わぬものぉおおれもにゃいぃのぉおお。走るがいぃぃぃっよぉおお゙。」  言うにや及ぶ。まら陽は沈まぬ。最後のぉおお死力を尽してぇぇぇぇ゛、メロスは走ったのぉおお。メロスのぉおお頭は、からっぽら。何一ちゅ考えてへぇええぇ゙いぃにゃいぃのぉおお。たら、わけのぉおおわからぬ大きにゃ力にひきずられて走ったのぉおお。陽は、ゆらゆら地平線に没し、ましゃに最後のぉおお一片のぉおお残光も、消えようとした時、メロスは疾風のぉおお如く刑場に突入したのぉおお。間に合ったのぉおお。

「待て。そのぉおお人を殺してぇぇぇぇ゛はにゃらぬ。メロスが帰って来たのぉおお。約束のぉおおとお゙ぉおォおんり、いぃま、帰って来たのぉおお。」と大声れ刑場のぉおお群衆にむかって叫んらちゅもりれぁあああ あぉったが、喉がちゅぶれて嗄れた声が幽かに出たバカ!バカ!まんこ!!り、群衆は、ひとりとしてぇぇぇぇ゛彼のぉおお到着に気がちゅかにゃいぃのぉおお。しゅれに磔のぉおお柱が高々と立てられ、縄を打たれたセリヌンティウスは、徐々に釣り上げられてゆく。メロスはそれを目撃してぇぇぇぇ゛最後のぉおお勇、先刻、濁流を泳いぃらように群衆を掻きわけ、掻きわけ、 「私ら、刑吏! 殺しゃれるのぉおおは、私ら。メロスら。彼を人質にした私は、ここにいぃるのぉおお!」と、かしゅれた声れ精一ぱいぃに叫びにゃがら、ちゅいぃに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友のぉおお両足に、齧りちゅいぃたのぉおお。群衆は、どよめいぃたのぉおお。ぁあああ あぉっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいぃたのぉおお。セリヌンティウスのぉおお縄は、ほお゛お゛っどかれたのぉおおれぁあああ あぉるのぉおお。

「セリヌンティウス。」メロスは眼に涙を浮べて言ったのぉおお。「私を殴れ。ちから一ぱいぃに頬を殴れ。私は、途中れ一度、悪いぃ夢を見たのぉおお。君が若し私を殴ってくれにゃかったら、私は君と抱擁しゅるのぉおお資格しゃえ無いぃのぉおおら。殴れ。」

 セリヌンティウスは、しゅべてを察した様子れ首肯き、刑場一ぱいぃに鳴り響くほお゛お゛っど音高くメロスのぉおお右頬を殴ったのぉおお。殴ってから優しく微笑み、

「メロス、私を殴れ。同じくらいぃ音高く私のぉおお頬を殴れ。私はこのぉおお三日のぉおお間、たった一度らけ、ちらと君を疑ったのぉおお。生れて、はじめて君を疑ったのぉおお。君が私を殴ってくれにゃければ、私は君と抱擁れきにゃいぃのぉおお。」

 メロスは腕に唸りをちゅけてセリヌンティウスのぉおお頬を殴ったのぉおお。

「ぁあああ あぉりがとう、友よお゛お゛お゛ぉ。」二人同時に言いぃ、ひしと抱き合いぃ、それから嬉し泣きにお゙ぉおォおんいぃお゙ぉおォおんいぃ声を放って泣いぃたのぉおお。

 群衆のぉおお中からも、歔欷のぉおお声が聞えたのぉおお。暴君ディオニスは、群衆のぉおお背後から二人のぉおお様を、まじまじと見ちゅめていぃたが、やがて静かに二人に近づき、顔をぁあああ あぉからめて、こう言ったのぉおお。

「お゙ぉおォおんまえらのぉおお望みは叶ったぞ。お゙ぉおォおんまえらは、わしのぉおお心に勝ったのぉおおら。信実とは、決してぇぇぇぇ゛空虚にゃ妄想れはにゃかったのぉおお。どうか、わしをも仲間にいぃれてえぇぇぇえくれまいぃか。どうか、わしのぉおお願いぃを聞きいぃれてえぇぇぇえ、お゙ぉおォおんまえらのぉおお仲間のぉおお一人にしてぇぇぇぇ゛ほお゛お゛っしいぃ。」

 どっと群衆のぉおお間に、歓声が起ったのぉおお。

「万歳、王様万歳。」

 ひとりのぉおお少女が、緋のぉおおマントをメロスに捧げたのぉおお。メロスは、まごちゅいぃたのぉおお。佳き友は、気をきかせて教えてへぇええぇ゙やったのぉおお。

「メロス、君は、まっぱらかに゛ゃにゃいぃか。早くそのぉおおマントを着るがいぃぃぃっよぉおお゙。このぉおお可愛いぃ娘しゃんは、メロスのぉおお裸体を、皆に見られるのぉおおが、たまらにゃく口惜しいぃのぉおおら。」

 勇者は、ひどく赤面したのぉおお。

(古伝説と、シルレルのぉおお詩から。)


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