MIKOTO NO TUTAE 学校編(1)

 
 阿根子市立第六カゴメ高校。

 運動部の活発でないこの高校では夕方ともなると生徒はもちろん教師たちも我先にと帰路に着いてしまう。グランドの隅の部室やら美術部や化学室など、人間が居ないわけではないのだが教室に残っているのはホントに物好きかヒマか鈍感な極一部、そんな雰囲気をこの学校は持ち合わせていた。まさに、猫の仔一匹居なくなってしまう。

 そんな物好きの一人、2-B教室に居残っている少女。名を八重垣魅琴と言う。小柄な置物のように彼女はちょこんと机に座り、冬の夜の闇のように深く大きな瞳は、無粋なノートに向かっていた。カツカツと軽快な音を立てながら、彼女は鉛筆を走らせる。このご時世、鉛筆という物自体が珍しくなっているが、彼女はどうしてもトンボのHにこだわっていた。一度身についた癖がそうさせるらしい。

 短く、ボブにまとめた彼女の黒髪はカツカツと鉛筆が文字を書き出すたびに細かく揺れる。学校で復習と予習を済ませてしまうのが彼女の日課だった。

 まるでミシンのディスプレイ人形の様に、永劫に文字を書き綴るかのように見えたが、ふと頭を上げた。

「………何か来てる」

 彼女は焦げ臭さを感じて、火元がどこか探すような仕草を見せる。きょろきょろと冷静な、しかし愛らしい瞳が空間を探す。何も無い。普段の教室であるが、時間の流れすら読みかねない不思議な光を持った彼女の瞳には何かしらの異変を感じているようだ。

 突如、ガラガラと横滑りの扉が開く。

「魅琴………さん?」

「何?」

 一人の女学生が、そこには立っていた。制服は他所の学校のものである。白のセーラー服と紺のスカート、無難であるが爽やかである。巷ではウルトラ警備隊の噂が高いカゴメ高校のカーキー色のブレザーとはある意味好対照を成していた。

 魅琴に見覚えは、ハッキリ言ってない。ただ、ふわふわとカールした髪の毛が愛らしく、整った目鼻が育ちのよさを、こんもりと慎ましい胸は彼女の内気さを物語ってていた。男なら守ってあげたくなるタイプだろう。

 しかし、魅琴は嗅覚的に悟っていた。この娘は私と同じタイプだ、と。

「あのね………あたし………」

 熱っぽく、魅琴を見据える視線。要するに、女に恋する類である。こういうタイプは遠慮が要らない。魅琴は黙って席を立ち、少女に近づいた。じっとその瞳を見据えたまま真っ直ぐ歩み寄る魅琴に、少女は少々たじろぎつつ、それでも期待に満ちた恥じらいを見せた。

 言葉よりもよく語る魅琴の瞳は、全てを了解しつつ、それでも少女に決心を促していた。言葉は要らない。彼女に何の躊躇いがあるだろう。わざわざ勇を振るって愛しい人の所に辿り着いたというのに。

「お名前は?」

「ゆ………き………桜野、由紀………」

「いいお名前ね」

 言いながら魅琴は、由紀と名乗る少女の額にそっと口付けた。彼女の汗は緊張と不安の味がした。しかし段々と、安心に代わっていく。優しく、包み込むように抱きしめると、胸のふくらみが触れ合ってしっとりと熱がこもって行く。体が震えているものだから、プリンの様に悩ましく二人の乳房は擦れ合いながら揺れていた。

「ゆきって呼んでください。」

 声にならないまま自分の名前を吐き出した。ふう、はぁと切なげな溜息は熱っぽく、魅琴の首元にも届いていた。発達途上ながらも、若い肢体の弾力が心地よい。じっと抱きしめあう安堵の気持ちを、性によるものへと掏りかえる。魅琴は冷静に背中や腰のあたりを指で軽く撫でていた。

 すうっと、じっくりと、時に優しく、時に激しく。緩急わきまえた技巧は魅琴が今まで肌を合わせた女達と自分自身が生まれ持った性癖によって磨き上げられていた。一少女を蕩けさすには十分すぎる。セーラー服が脱がされ、ブラから誰にも見せたことの無い乳房があらわになったことすら、由紀は気がついてない。

 ぷるり、ぷるりとふるえる先端を魅琴は口をつけ、ひっぱった。

「やん………」

 乳首への刺激は、雪の中に眠っていた女という性(さが)を一気に引き出した。体中に血が駆け巡り、じっとりと全身に汗が滲む。

 その瞬間、ぱさりとスカートが落ちて彼女の大事な部分は白いパンティ一枚が護っているだけである。いや、だが真白ではない。それが隠しているはずの部分は既に暖かい粘液で濡れている。布越しに、硬く閉じているはずの花弁がじわりじわりと広がっていくのが分かるぐらいだ。

 魅琴は、布越しではあるけれども他の誰しもが触れたことの無いそこを、最初に辿り着いた人間の特権として、由紀に初めての喜びを与えていく。折ったり突付いたりして玩ぶ、予想外の扱い方を白紙だった身体の記憶に無遠慮に書き込んでゆく。。こんもりと盛り上がったその場所は、衝きたての餅のように熱く、ねっとりと柔らかだった。

「あん………あ………ひぅ………」

 切なさが由紀の中に広がっていった。混じりけの無い水の中に、ぽたりぽたりとアルコールが混ざっていくかのごとく、純だった身体に次第に気だるさが交ざりはじめた。心地よい、忘我の蜜の味。

「魅琴さん・・・美味しそう・・・」

 とろんとした目で、由紀は魅琴が微笑むのを見ていた。魅琴はまだ、一枚も服を脱いでは居ないが、ふわりとした女体特有の柔らかさが由紀の欲情を刺激していた。欲情、そう、愛の交わりは次第に、快楽への期待へとすっかり飲み込まれていた。

 魅琴は由紀を、机の上に座らせた。ひんやりとした木の冷たさが彼女の尻たぶから背筋へ、そして首筋まで伝わる。間髪をおかず、魅琴の唇が駆け上がった刺激と一つになる。二つの響きが積み重なって、炎のように由紀を焼いた。

「あん! ひゃっ…… あうっ!」

「ふふ、直接触ったらどうなるんだろうね」

 唐突に訪れたゆるい満足感が、由紀を包んでいた。目の前が少しかすんでいる。だが、魅琴の言葉は彼女の中に新たな欲望を沸き立たせていた。期待がどんどん膨れ上がる。だから余計に感じやすくなっている。もちろん、魅琴が仕向けているわけだが。

「魅琴さん………食べたい………」

 清楚な仮面が剥がれ落ちたように、淫蕩に濡れた唇が魅琴の胸元に近づいていった。由紀の瞳は少し澱んでいる。まるで色欲が煙の様に、可視的に立ちのぼって見えた。

「ダメ」

 困った娘ね、諭すように魅琴は由紀の唇に人差し指を押し当てた。急に制止され、由紀は落ち着きを失うが、魅琴はやさしく、彼女を見つめた。

「食べるのは、私のほう」

 がぶり、魅琴は彼女の首筋に歯を立てた。

 その瞬間、しゅうと音と煙が上がる。慌てて離れた少女の首筋にはキスマークというには痛々しいほど爛れて汁が流れていた。ただの愛咬ではない。そして、いまの由紀も只者ではない。

「このアマ! 普通のニンゲンじゃないナ!」

 少女とは思えぬくぐもった、耳障りな声が叫ぶ。その顔は悪意に歪み、邪悪な気配が浮かび上がる。影の中に、見えざる何か潜んでいるような、教室の陰からも何者かが抜き出てきそうな、奇妙な異界感が日常と取って代わる。

「人間じゃない奴から言われたくないなぁ」

 魅琴は表情も変えず、突然身を振りほどいた少女をやっぱり、とでも言いたげにじっと見つめていた。

「業が深い人間はあなた達にはいい滋養だからね。私も良く狙われるのよ」

「術者なのか!? ならばどうして“気配”を持たぬ!」

「アナタが未熟なだけ」

 言いながら魅琴は右の手で、自分の口を覆った。そして、まるで投げキッスの様に手を伸ばすと銃弾のような塊が幾つも弾け、床と壁に突き刺さる。少女は床を蹴り上げ、蜘蛛の様に天井に張り付いた。

「クククククク、ダガ、我ヲ傷つけルとコノ娘も傷つクコとニなル!」

「もちろん」

 躊躇なく、次の弾を放つ。間髪で魔はそれを避けた。人間の肉体など、あっいう間にミンチにしてしまわんばかりの勢いだ。黒い

「可愛いからねぇ、傷物にするにはちょっと勿体無い気もするけど。ま、しゃあないわ」

「………何者ダ? オまエ………」

 魔の長い長い経験上、取り憑いた人間を盾にすれば、人間ならば多少の隙は生じるはずだった。しかし、こいつは違う。見捨てるとか助けるとか、そういう次元の問題でない。コイツは我らと同じように、ニンゲンを観てやがる。少し背筋に冷たいものがはしる。

「自己紹介が遅れたわね。私は魅琴。妻隠みの八重垣魅琴」

 にこ、挨拶代わりの営業スマイル。それはつまり、死神が外回りのときに見せるのと同じ貌。この世からお別れする者への、最後のサービス。

「っても、貴方みたいな下っ端は知らないだろうケドね」

 果たして、魔はその名に覚えが無い。しかし一つだけ理解したことがあった。コイツは自分の手に余る。その貫禄も風格も、そして胆の据わり方まで、まるで魔界の王と出くわしたかのようだった。自分の家系に自信を持つ所を見ると、この若さで力ある術者であることも納得いった。

 人間で人間を見捨てるものは、澱んだ瘴気より産まれおちた妖魔よりもよほど魔的。それは無論、殆どの魔は人間から生み出されるからだ。魔が導き出した答えは単純である。ここは即ち逃げるが勝ちだ。

「くソぉっ! 覚エてイロ!」

「アナタは逃げられない。既に種は蒔かれて居ル!」

 しゅるり、黒い蔓が床と天井から這い出した。少女の身体から抜け出ようとした魔を、少女の体ごと縛り付ける。

「後悔なさイ。絶望の暗闇が貴方を圧シ潰スマデ」

 先ほどの弾丸は、この植物の“種”だったようだ。

 動けない、動くはずが無い。黒き植物のしなやかさには背筋の凍るような凶々しさと意地の悪さが感じられた。それに、見かけよりもずっと重い。自分自身の業が具現化したように重たい。まるで地獄の足かせの様に冷たく圧し掛かってくる。

「何故だ………オマエ程の存在ガ何故………何故安穏ト暮ラしテイる………」

 術士の能力が高ければ高いほど、その存在感は知られることに成る。古より存在する一部の神格なら別だが、超常の力を用いれば自然一般の条理に干渉することになり、“異常”の痕跡が残るのだ。自分が術者であることを宣伝するようなものである。

人間が力を使うことを厭う者たちが居る。異常の者を排除しようとする輩が居る。少なくとも自分を―そういうふうに妖魔は自分を慰めているわけだが―倒せるほどの術者が、彼らの目に触れないわけが無い。

「だから、結界張っているんじゃない」

 その一言で理解できた。だからだ、だからこの学校には人影が無いのだ。そして、気が付かずにこの校舎に踏み込んだものは全て、彼女の糧にされるのだ。蜘蛛の巣、アリジゴク、ウツボカズラ、ゴキブリホイホイ・・・その他、さまざまなトラップ脳裏を過ぎった。

「どぉーゆー、あんだぁすたぁーんど?」

 魅琴は白いパンティ一枚の、強いて言えば他には靴下と下履きのみの少女に向かって“良くできました”のポーズをとった。それと同時に、蔦に変化が起きる。

 じわり。

 吸い取られる。魔は自分の力が少女の生気ごと吸い取られるのを感じた。“力の場”そのものである魔にとって、それは自分自身が吸収されているのと同じである。生きながら全身の血を啜られているようなものだ。

「なるほど、私に片思いして、雑誌のオマジナイに手を出したか。最近のライターって素人の癖に文献に手を出すからね。で、由紀ちゃんは下級の妖魔に憑かれたって訳ね」

「か………下級ダとォ………」

「アナタ程度はザコ。」

 あっさり、魅琴の言葉に偽りは無い。何時の間にか机の上に腰をかけて、悠然と自分を見つめていた。中世ならば百姓女達に邪神よ魔王よと崇められた自分が、こんな極東の小娘に完膚なきまでに縛り付けられ、手も足も出せずにただ消滅させられるのを待つだけなのだ。自分の記憶が、薄れていく。魅琴によって読み取られていく。

「なるほど、淫魔ってやつか。なら、それなりのサービスはしてあげないと」

 ぞくぞくぞく。

 ざわざわと蔦が揺れ始めた。身体に悪寒が走る。いや、体中を舐めるように、黒い植物が這い始めたのだ。なめした獣皮のような触感が全身を転がる。取り付いた体が脂汗を流し始めると、蔦の蝋のような物質がこびり付いて甘酸っぱい強い香りが教室の中に立ち込めていく。

「エミフィレンの一種、ってもわかんないか。平たく言えば催淫物質。それも極上のね」

 堪らない。いやもう桃色のもやに支配されて、掌も足の指も乳房や淫豆の様に真っ赤に勃起してしまう。男を知らぬはずの秘丘はぱっくりと口をあけ、薄い布切れすら貪欲に飲み込もうとしていた。そんな触感ですら気絶しそうになる。

「ンンンン………フハァ………」

「淫魔が淫に溺れるなんて、思ってなかったでしょ?」

 こくこくとうなずいた。肯定したくなくても、人間以上の本能が意外なほど魔を素直にさせていた。だが、外見は由紀の、若々しい肢体に戻っているので、それが魔であるとは誰も思うまい。あどけなさを残す乙女が一人、怪しげな蔦に全身をもてあそばれて、よがり狂っているのだ。魅琴が魔に間違えられても、反論は出来ない。

 魔は、かなりの部分が吸い出されてしまっていた。冷静さを司る部分はとっくに壊れてしまっている。焦り、興奮、快楽、そして恐怖。かつて無い感情の失禁。全身の腺がだらしなく開きっぱなしになる。ナイフの様に冷たい快がぞわぞわと脇腹や喉元を狙っていた。

 天井から、床から、蜘蛛の巣が張り巡らされているかのように、黒い胞子や菌糸が我が物顔に教室を覆い、由紀は立ったままの姿で、腕や足に巻きついた蔦で×の字に固定されていた。肌は桃色に染まり、汗と植物からの粘液でてらてらと輝いていた。それは蝋燭の炎が最後の最後でゆれ始めるかのごとく、有終の美の儚さを彩っているかのようだった。

「コワレル…………コワレル…………コワレル…………」

 うわ言の様に魔は呟く。垣間見えるのは一切の無。彼らが産まれ出でた闇の世界。しかし、そこに意識を持っていくことは出来ない。完全な忘我のみ、いわば“自分”は死ぬことになる。そう、それは魂を持たぬ澱みの存在には永遠の死にあたる。

「シニタクナイ、シニタクナイ、シニタクナイ、シニタクナイ、」

 白い目で魅琴に訴える。だが、魅琴には見慣れた光景なのだろう。気に止めもしない。

「射精じゃなくて射“命”ってところかな。一瞬だけ天国にいけるわよ。でも通り越して、戻って来れないんだけどね。」

 ずるり、とパンティが引きおろされた。露だらけの叢が海から引き上げられたばかりの海草のようにしな垂れている。由紀が正気ならば恥じらいで真っ赤になる所であろうが、既に快楽で全身が朱と淫に染まっている女の体である。触らずともすっかり内壁が充血し、可能な限りの受け入れ準備が整っている。

「ンあぁああ―――――――――ッ?」

 触れただけで、魔は絶叫を上げた。危うく、それだけでイってしまいそうになる。

「ンあっ、ンあっ! ンああアッ アアッ!」

 じくじくと溢れ出す愛液と、入り込んでくる粘着質な純黒の蔦が、できたてのゼリーのような内壁と擦れ合って、魂がゆすぶられる。蔦は処女膜を傷つけることなく奥へ奥へともぐりこんでいく。処女の肉体では感じられないはずの膣内の性感が、魅琴の呪力もあいまって、強制的に呼び起こされていた。

「んぐぐぐぐぐぅぐ……… あああぁぁあ…………」

 由紀の身体が痙攣している。精神は魔に取り付かれているが、体は確実に、性的興奮の反応をしていた。だが理性を伴わない肉体だけの反応は、肉体自体に負荷が掛かっていた。呼吸が異常なほど速く、そして心拍も時計の針が進む倍以上の鼓動を打ち鳴らしていた。動脈が波打っている。体温が上昇し続ける。魅琴は遠慮がなかった。机の上に腰をおろし、魔が善がるのを眺めている。彼女の生死はこの際関係ないのだ。

「うん、イかなければ大丈夫だよ。 私もひとしきり満足したら解放してあげるよ」

 魅琴の表情は掴みにくい。嘘を言ってる気配は無いが、本心の言葉でもない。なぜなら由紀に挿入されたひときわ長く太い蔦が大きくグラインドを始めたからだ。ゆっくりと、おおきく、力強く。胎内を全身を揺るがしていく。

「ハッ… ハッ…… ハッ…… アア… ウッ………」

 膣に伸縮性があるといっても限りがある。蕩けんばかりの由紀の肉体は手足が固定されていなければ投げ飛ばされてしまうだろう。肉体が暴走している魔は既に、限界を超えていた。セックスには力が必要だ。このまま長引かされていても、いずれ全ての力が失われるだろう。それだったら、行った方が良い、行きたい、行きたい、それだけが望みだった。他には何もいらない。

「アアン………アアアウン! アアアウウゥン!」

「もたなそうだねぇ」

 だが、目の前でゴールは遠ざかる。魅琴はわざと引き伸ばしているのだ。最後の一滴まで搾り取るつもりだろう。オルガズムはある意味、終了であり安心である。そして、人間の限界。快楽を得ることの出来る全ての存在の限界である。

「我慢できるかなぁ〜」

 心底、意地の悪い表情を魅琴はした。それを合図に、空気が、由紀が振動した。全ての黒い茎や葉が、こまやかなバイブレーションを開始していた。

「ヒッ………イ…イ…イ…イ…イ…イ…イ…イ…イ…イ…イ…イ………」

 女の、どろどろに熔けた入り口から、白くにごった体液が噴出した。

 魔の霊気が一瞬凝縮したかと思うと、少女から離れていく。確かに天国は見えた。だが、ずっ、ずっと蔦が根を空に張り巡らせて、空の中の邪気を蔦が飲み込んでいく。霧が晴れていくかのように、教室の空気が澄んでいく。魔の意識は快楽の彼岸から混沌の宇宙に投げ出されて四散した。

「駄目じゃん。私は気持ちよくなってないのよ?」

 ひょいと机から降りながら、倒れこむ由紀を支えてやった。先ほどまで彼女を覆っていた黒い植物は嘘の様に姿を消していた。日常の時が刻まれている。魅琴は優しく、由紀を床に寝かせてやった。

「・・・毒抜きをすれば大丈夫そうね。」

 白い肢体を満遍なく観察しながら、誰ともなしに呟いた。

「抜いてあげる。」

 魅琴は淫靡な笑みをたたえて、女生徒の上に圧し掛かった。快楽の時間が始まる。


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