ツンデレ





「どっ、どうせ今日も暇なんでしょう! こんなに可愛い私が呼んで上げるんだから感謝しなさいっ!」

 角田麗子はボクの幼馴染。昔は公園で泥だらけになるまで遊んでいた仲だけど、小学校の中ごろで引っ越してしまった。暫く疎遠だったのだけれど、今度はコチラが引っ越す番になって向こうの学校で再会したのだ。が、まさかこんなキャラになっているとは思っても見なかった。

 箸が転がっても笑ってしまう年頃ってのはあるけれど、自分を可愛いといってしまう痛い年頃だ。しかも僕に話しかけるときは必ず最初にどもりが入る。そんなことが積み重なって「お前は裸の大将かっつーの」と突っ込んだのだけど、

 「わっ、私の裸を妄想するなんて! そんな嬉しい、じゃない! 恥ずかしいじゃない! ってか本人の承諾なしで勝手にそんな妄想していいと思ってるの! 著作権料払いなさいよ! 著作権料はあなたの体よ!!」

 それは著作権じゃなくて肖像権じゃないかと、そんな突込みが先にたってしまって細かいところを指摘し忘れてしまった。それが昨日の話。言い忘れてしまったけれど、今はその著作権料なるもので、彼女の家に呼ばれようとしているところなのだ。

「んー、でも、年頃の女の子が男の子を家に招くのは危険だよ。古い歌にもあるじゃないか
 ♪男は狼なのよー 気をつけなさい〜 って」

「あっ、あんたなんか男のうちに入らないわよ! メスよ、雌豚よ! ブヒブヒ言ってコロコロ豚を産んでればいいのよ! ああでも、豚を家に招くなんてコチラからお断りよ! やっ、そんなの嫌っ! 嫌だからふたなりよふたなり! でもそれも嫌だから貴方はお尻で感じる女装美少年よ!」

 脈絡の無さというか支離滅裂さというか、腹が立つよりも彼女の頭が可愛そうに思えてきた。が、頭の可愛そうな人に逆うと後が怖いので素直に招かれる事にする。まぁ、貞子みたいな人外ならまだしも、相手は一応生身の体だ。化けて出たわけではない。万一『ミザリー』みたいなサイコなことになったとしても、それはもう、頭だけでなく彼女の人生が可愛そうなことになるだけだ。それぐらいの覚悟が無いと僕もやっていけません。

「こっ、こっ、こっ、ここよ。(ああ、「お前は鶏か」って突っ込みてぇ)
 くつろいで居てくれてもいいけど、でも勘違いしないでね、ここはあたしの家なんだからね。(お前の親の家だろ、所有権主張するなよ)」

 彼女の家はありがちな一軒家だ。ありがちな二階のありがちな彼女の部屋に通される。調度品も非常にありがちだ。が、彼女のキャラだけが少々特異である。何気なく窓の強度を確認する。万一の際は脱出経路にしなきゃだなぁ。

「ちょっ、ちょっと待ってなさいっ。今、飲み物用意するんだから!
 でも、私の可愛い下着に手を出したらただじゃおかないからね!」

 そんな変態行為を行えるほど僕は人生極めて居ませんよ。彼女の思考パタンが読めてきたので、軽く頷くだけにする。彼女の居なくなったところで、進むべきか退くべきか思いを募らせる。まず、彼女が好きか? 嫌いじゃないな。外面的に言っても。

 まぁ、自分で可愛いと言うだけの器量が有るから、子供のときと同じようにツインテールも似合うんだよな。お約束のように金髪に染めている。これでマジで不細工だったら、二度と鏡が見れないようにしてやる所だ。気の強さは眉と瞳に現れているんだけど、他の何かがひん曲がった感じだもんな。これでキ印じゃなったら、僕の方から手を出しているところなんだけど。

 しかし、ご期待に沿うの一興だよな、彼女、どんな顔をするだろう。澄ました顔もいいけれど、彼女を思い切り笑わせてみたい欲求が頭をもたげる。ただ、ドン引きされるかもしれない諸刃の剣。やぁ、あのキャラだと引くよなぁ…絶対。かのように人生の岐路に立たされた僕だけど、悩んでいるうちに彼女は来てしまった。

「待たせたわね! ほら、これでもお食べ!」

 Cake That you're a Food!っすか? うわ、僕も超マイナーなネタ知ってるな。彼女が昨日のうちに作っておいたという巨大なチョコレートケーキを前に僕はそんな感想を持った。

「べっ、べつに貴方のために作ったわけじゃないだからね! 余らせて腐らせるのが勿体無いだけだからね!」

 勢い余って6人前ぐらい有るんですけど。大食い属性も込みですか? でも、ここで素直に「健啖家なんだね」なんて言うと相手を怒らせるだけなので、ここは無難に褒めることにしよう。まだ怖いので飲み物には手を出せないんだけど、ケーキに毒を仕込むのは非常な技術が必要だ。特にチョコレートケーキだと仕込んだ跡が確認しやすい。それでも恐る恐る、僕はケーキを口に運ぶ。

「や、これ美味しいよ。マジで」

「ふんっ! お世辞なんか私には通用しないんだから!」

 目をそらしてながらも、まんざらではないようだ。しきりに人差し指で顎の辺りをなぞっている。恥ずかしい時の彼女の癖だ。こればかりは昔から変わってないようだ。思わず笑みが漏れる。

「でもさ、普通こういうのはキッチンじゃないか?」

「ばっ、ばか! 二人っきりで食べたいだなんてっ…きゃっ!」

 急に立ち上がった麗子はふらついた。細い体がコチラに揺らいでくる。

「わあっ、危ないっ!」

 思わず体を支えてやる。思ったより軽く、軟らかな彼女を抱きとめるのは悪くなかった。でも、唇を尖らせてるのはワザと? 麗子はすぐに身を離したが………あ、今いいこと思いついたって顔したな。

「わっ…………」

 二度目は避けなかった。
 彼女をしっかりと受け止めた。唇ごと。でも、柔らかな感触は一瞬のうちに遠のいた。今にも泣き出しそうな顔で麗子は飛びのいて、悲鳴じみた声を上げる。

「なんで避けないのよ!」

 食いつかんばかりの勢いだ。一瞬だけどなんと答えるべきか考えた。「据え膳食わぬは男の恥」、…ストレートすぎる。憎さ百倍界王拳だ。「コッチの方が迷惑」…や、それはマジで『ミザリー』コースだ。僕はまだ纏足&肉奴隷コースなんか歩みたくありません。仕方がない、無難に行くか。

「嫌いじゃないから」

 かあああああっ。音を立てて表情が変わるのを僕ははじめて見た。

 その隙を見て優しく抱きしめる。ふわりと少女の匂いがする。だけど、彼女は震えている。急に実現した現実を前に、恐怖を感じているのだろう。

 しかしどうしてエロゲーの主人公は、普段は頭の悪い語り草なのに濡れ場になると饒舌になるのだろうか。普段ヘラヘラしている癖に、いざ絡みとなると洒落た睦言を囁いたり出来るだろうか。違和感を覚えませんか? 萎えませんか? そんな僕はもっぱら三人称の触手物が好みですよ。

 そんなことを考えながら、彼女をベットに腰掛けさせた。そしてその肢体に指をはわせる。

「やん、もう、エッチ!」

「転校した後の君の事、よく判らないんだ。折角だから全部知りたいな」

 耳元でそう囁く。囁きながら、唇で耳朶に軽く触れる。息に甘さが混じり始めていた。スイッチは良い感じにONになってくれたようだ。たとえ向こうが誘ってきたにしろ、だからといって準備万端とは限らない。ボリュームを大きくしていくように、少しずつ大事な陣地に侵攻していく。

「もう、この、オッパイ星人!」

「男はみんな、オッパイ好きなんだよ」

 服の上からなぞる彼女の胸はレースの凹凸がはっきり感じられる。勝負下着って奴だな、とワンピースを脱がせて確認した。

 彼女の足にも手を伸ばす。しなやかに、素直に伸びた脚にはたゆみの一つもない。パンストを履くまでもない若い肢にほお擦りする。

「バカ バカ バカ! そんなことしたら感じちゃうじゃない!」

 や、感じてもらうと思ってやってるわけだし。相手に隙を与えずにブラのホックを外した。小ぶりだけど形の良い美乳が姿を現す。ぷるん、というより、ぷるっ、って感じ。柔らかさよりも弾力ありきなとても素敵な丸い宝玉。

 先端までは思いっきりじらす。谷間や下乳を満遍なく攻め上げると、より大きく膨らんでいく。でも、一番大きく膨らむのは先端のピンク色の乳首だ。ビックリするほど貪欲な彼女の一端を垣間見た気がした。

 指先で、ふとした瞬間、という感じでそっと触れる。麗子はそのたびに目を瞑る。じっくりと時間をかけて、指になじむように慣らしていく。いつの間にかくんくん、と鼻を鳴らしながら彼女の健康的な腰は上下に揺らいでいた。

「気持ち良い?」

「きっ、気持ちいいわけ……あん! …ああっ、もうっ!」

 そうは言っても、体は正直。そっと肩を撫ぜただけで、気持ちの良い反応が返ってくる。月並みな言い方だけど、全身性感帯ってやつだ。すべすべした肌に、時折鳥肌が立つのが可愛い。

 彼女の靴下を脱がすと、小さな足がまろびでた。手入れを欠かしていない、隙のない足首だ。それに、やけに用意に準備が掛かったわけだ、下でシャワー浴びてたな。通りで良い匂いがするわけだ。そんなわけで躊躇なく左の足の指を咥えてやる。

「あっ! 恥ずかしいのにっ! やっ、汚いのにっ!!」

 つるつるとした足の爪を引っ掛けるように、指の隙間に舌を潜り込ませる。唇で緩急をつけながら味わうようにねぶっていく。

 ひくっ、ひくっと舌の動き通りに彼女は反応する。五本の指をつっと舐め上げる。さぁ、次は右の足だ。左足は手の指を絡ませながら、ゆっくりと丹念に吸い上げる。

 腰が抜けたように力が入らない脚を愛でながら、彼女の中核に迫っていく。じわりと篭った匂いは少女ではなく人間の雌の発する物だった。

「あっ…見ちゃダメっ」

 じゃぁ、最初は見ないで置こう。下着からでも開き具合の判る花弁に、ふうっ、軽く息を吹きかける。

「ああああぅっ!」

 電撃が走ったように麗子は体を奮わせた。まだパンティも脱がせてないのに、その初心さが愛しくなってしまう。そのまま、唇で咥えてやる。硬い女核が舌先に触れる。

「!!!!!!!」

 声にならない声を上げる彼女。ふと見上げると何が起きたか判らないような、呆然とした表情があった。うわ、やべ、ちょっとマジになっちゃうよ。ゆっくりとパンティを脱がしていく。むっちりと小高い丘の合間に、赤い可憐な花びらが戸惑っている。これが彼女の本性なのだろう。

 直接愛撫したら…いや、それだと彼女の体力が持つまい。折角だから体を重ねたい。さすがに僕もここまできたら、彼女を存分に味わいたかった。結局自分を突っ込みたくなるのよね。

「じゃ、そろそろ分かり合いますか。僕は君を感じるから、君は僕を感じてね」

 僕も服を脱いでいく。個人的には着衣が好みなのだけど、初めての相手にはあわせてあげるのが僕の流儀だ。麗子のドキドキが伝わってくる。男の肉体を間近で見たことがないのが直ぐわかる反応だ。それならそれなりの持てなしをしてあげないとね。

「こうすると、痛くないんだよ」

 僕は彼女の下に体を潜り込ませた。一瞬僕のしたことがわからなかった彼女は、この体位の名前すら知らないかもしれない。

 え? ゴム? なんですかそれは。僕は生殖を伴わないセックスはしない主義ですよ。麗子もそこまで頭が回っていないようなので、僕は勝手にリードする。

「よく見て入れてね」

 彼女の腰に回し、次第に力を抜いていくと、自然と彼女と僕は近づいていく。麗子は結合部分から目を離せない。動揺しながらも、期待に満ちた瞳は妖しく輝いている。

 ♪えーすおおぇっす えーすおおえーっす ほらほらよーんでいるわー
  ♪きょーおーもーまただれかー おとめのピンチー

 先ごろ亡くなった作詞家を偲びながら、僕は非常に良いアングルを堪能する。括れた腰と適度に鍛えられた腹部。深く刻まれた臍はそのまま彼女の大事な部分まで一直線だ。薄めの林からは、彼女の大事な部分から彼女のエキスが流れ出している。

 その滴り漏れる熱い液が僕の分身を濡らしている。別のことを考えてないと、僕だって余裕がありませんです。やがて、ぴちゃり、と彼女の粘膜が僕に触れる。亀頭の周りが熱く熔けた雌肉に覆われた。

「はあぁっ、ダメっ、痛っ!」

 亀頭の先に薄い存在を感じる。彼女の入れ方だとそのまま裂けてしまうだろう。痛がらせるのは嫌いだし、痛みで僕を覚えられても嫌なのでさっさと邪魔者には消えてもらうことにしよう。

「じゃ、手伝ってあげる」

 僕は体を起こして、彼女に口付ける。膜を破るのはコツが合って、進入角度を工夫すれば一瞬で裂ける。でも、力まれると失敗するので気を逸らさせるのが肝心だ。素直な彼女はそこですっと力を抜いた。

「ッ!?」

「ほら、入ったよ」

 潤滑油は十分だったので胸を触りながらそのまま貫いた。まだ何者も迎え入れたことのない彼女の胎内に一番乗りだ。彼女がしてくれているように、ぎゅっと抱きしめる。そして体を入れ換える。彼女をベットの上に寝かし、僕が上になる。寝転がった彼女の胸はプリンのようにやわらかに僕を迎え入れてくれた。破瓜の昂ぶりだけを残し、痛みだけが治まるのを待つ。さぁ、これからが本番だ。

 初めて触れる場所が感じないのは当然だけど、挿入れた以上は僕の色に染め上げられる。焦らず、丹念に、彼女の神経回路をイメージする。乳房やクリトリスは当然だ、耳や背中、脚の指先にすら性感が生まれることを知った彼女だ。新たに生まれた快感を、ペニスを使って内奥の器官に組み込んでいく。

 ゆっくりとこねる。まだ堅い彼女の中は不安と緊張で痛いばかり。顰める顔にキスをする、指先で首筋をなぞり、乳首にソフトタッチしてあげる。その一つ一つをペニスの動きと連動させる。要はパブロフの犬。条件付けで気持ちよさをつなぎ合わせる。

「………ああっ、なんか………変な感じっ………」

 よし、回路は繋がった。次は増幅装置。彼女の内襞の一つ一つが、同じように感じれるように、気持ちの良い場所を掘り起こす。脳が痺れていくような膣奥の感覚は体の外の性感とは本来違った物だから、最初の気持ちよさを増やしていくことで眠っていた女自身を呼び覚ましてあげるのだ。根気の要る作業だけれど、これ以上やりがいの有る仕事はない。

 喉の奥から息を搾り出す。あまりの快感に呼吸することすら忘れそうになってくれる。子宮口を緩やかに、それで居て情熱的に突く。呼び覚まされた感覚は彼女の全身に鐘の音のように鳴り響いているに違いなかった。

「やあんっ! ごっ、ごめんなさっ、ごめんなさぁいっ!!」

 艶の有る声で謝られても僕のほうが困ってしまう。だけど、僕は作業を続行する。彼女が良い音色で鳴いてくれるように。乱れた髪がシーツを彩っている。汗ばんだ肌が光に満ちている。僕を求めて差し出される腕が、中空にさまよっている。

 そういえば、ツンデレって言うのは気持ちをキチンと表現できず、相手がいろいろ世話を焼いてくれることを期待している自意識過剰なオタク少年の精神を投影した物だって婆っちゃんが言ってた。

 そして彼女の心にあるのは、今まで創り上げた自分が別の物に取って代わる不安。心にストッパーが掛かっていれば女の子はイクことが出来ない。彼女太ももが僕の足の上で体温を伝えながら不安げに震えていた。

「こっ、怖いっ、怖いよぉ………」

「それは仕方ないよ。君は僕の物になるんだから………だから素直になってほしいな」

 マジな目で彼女を見つめる。自分が違う物になってしまうのだ、怖いに決まっている。恐怖感と僕への服従心への二者択一。彼女が選ぶのはどちらか、こればかりは掛けるしかない。

「あ………ああ………あああ………」

 声を震わせながら、顔から表情が無くなった。彼女の自我が本能に席を譲った瞬間だ。彼女の理性が否定し続けていた僕への想いが勝ったのだろう。だから、彼女が今一番聴きたい言葉を囁いてあげる。

「僕もイクよ 君が好きだから、僕もイクよ」

 少し唸った後、麗子は涙をこぼし始めた。心の堰が破綻したのだ。躊躇いはすべて消えた。彼女は全てを受け渡した。こうなったら遠慮はいらない。一番気持ちいいところに当るように僕は腰を打ちつける。彼女は狂おしい程、僕を抱き締める。

「あっ、あっ、あっぅっ! ダメッっ すっ、好きぃっ! 貴方のこと好きぃい」

 絶頂に達した彼女はあれほど嫌がっていた僕をぐいぐいと僕を飲み込もうとする。自分の一部にしたがるように。だが彼女は僕のものだ。陥落したのは彼女の方だから。
 そのお返しに僕はしっかりと、白濁した烙印を注ぎ込んだ。


「はぁはぁ………」

 夢心地の彼女に、じっくりと後戯をしてあげた後、彼女の瞳を覗き込む。強気な彼女はもう居なかった。淑やかで慈愛に満ち足りた表情で、僕に微笑んでいた。

「私のこと、こんなにしちゃったのは、あなたのせいなんだからね!」

 それは否定しないことにした。さて、これで彼女の親が帰ってこない限りは窓から逃げ出す必要はなくなったけれど、思いを遂げた彼女の精神はいかなる変貌を遂げるだろうか。そちらの方が僕は心配である。



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