LM外伝Part3:クリスタルパレス☆ている




 「よっしゃ!アルブル偉い!!」

 アルブルの回し蹴りが巨大なコアに直撃したとき、クリスタルパレスに 灯っていた明かりは全て弱まった。それと同時にクリスタルパレス側の シールドスペースが解除される。破壊の大帝は間髪を入れず ガッツポーズをすると、自分のシールドスペースを解除する。 こちらの召喚したモンスター達はシールドスペースと同じ次元に居るので 問答無用で収納される。
 動かなくなったシフトディフェンサーを 乗り越えながら破壊の大帝はクリスタルコアに向かって真っ直ぐ歩きはじめた。

 「でーい、このゲンプのおおばがやろー!」

 「あの…蹴らない方が…(^^;」

 ゲンブの頭の上に来て、今までの憂さ晴らしをするかの如く (憂さ晴らしなのだろう)憎々しげにスタンピングを行う。 ハッキリ言って今回は彼にやられっぱなしだった。それは 私も感じていたが、ふと見上げた彼の目がマジだったので 軽い突っ込みに留めておいた。
 ひとしきり蹴りおわると満足した様子でクリスタルコアの 元にやってくる。コアの大きさは尋常ではなく私たちは その制御パネルらしき物の前まで歩み寄った。

 「さ〜ぁぁぁて、こぉ〜れがクリスタルコアちゃんね〜☆」

 何処かの盗賊の真似をしつつ、何故か手慣れた様子で 破壊の大帝は幾つかのパネルとボタンを操作する。あちらこちら弄くりながら 何かしらプリントアウトしたり、記憶媒体であるオーブに何か入力 させたりしていた。その横顔はいつものチンタラした物ではなく ぎらぎらとした瞳、荒い吐息、何かに取憑かれたような異様な雰囲気が 漂いはじめた。

 「あの…破壊の大帝さん?」

 「気が散る、黙れ。」

 怒気を含んだ彼の声が響いた。彼がここまで苛立っている所を 見た事がなく、身が竦んでしまった。彼は一心不乱にパネルと 格闘していたが、急に溜め息を吐くとやや落ち着きを取り戻した様だった。

 「あぅ、ごめん、ちょっと急いでたんでね…ほら、早くしないと コアの修復装置が発動しちゃうんだ。」

 「修復装置…ですか?」

 「そう、修復装置。他のダンジョンは古代魔法による物だけど ここだけは“装置”なんだ。分子レベルに凝縮した情報を ある刺激によって展開させるようにしておく。そうする事で登録しておいた物体が 以前の状態で復活出来る。1度登録しておけばそれは永遠に復活を繰り返す。 喩えクリスタルパレス自体が破壊されたとしてもコアとシフトディフェンサーは 復活する訳だ…まぁ、コア自体がクリスタルパレスみたいなもんだけどね。」

 装置を弄りながら私に話し掛ける彼の目は、それでも私の方を見ずに コアのパネルを凝視していた。専門的な話を流暢に説明されて(と言っても 私にはよく分からなかったが)度肝を抜かれて押し黙ってしまったので 会話が途切れてしまった。暫く沈黙が続いたので思い切って話し掛けてみる。

 「あの…クリスタルパレスって…結局何なのですか?」

 「ん?人造系のモンスター開発所…だった所かな? 特に機械系のモンスターは大体ここで造られたらしいね。 まぁ、シフトディフェンサー達を見て頂ければ大体分かるよね。 彼らの設計図はもちろん、精神エネルギーの転換法から さっき言った修復装置、それだけじゃない、この世界についての 研究や各地の資料など、この地に関わった者達の 全ての英知がここには結集している訳だ。 ここの神秘を解き明かせばこの世界を統一する事も夢じゃないかもしれない。」

 「…という事は…破壊の大帝さんが今やられている事は…」

 急に怖い考えになって、言葉が継げなかった。彼はその名の通り “破壊の大帝”となるために今このクリスタルパレスの英知を吸い取ろうと しているのではないだろうか…。彼は一瞬どきりとした感じで、それで 初めてパネルから目を上げて私の方を見て…にやりと笑った。

 「ふっふっふ…見たいか?見たいか??私が求めていたものを…」

 彼が素早くパネルを操作するとコアの中心部から光がこぼれた。 3Dプロジェクターだ!私がそう思ったと同時に像が結ばれ、それと同時に 音声装置も発動したらしい、空気が揺れる感じがした。

 「あっ…あっ…はぁ〜んっ」……!?

 「伝説の裏モノ、“奥さん外来系はお好きですか?”だ…」

 …なにっ?

 「クリーニング屋を装ったショゴスとフライングポリープが グラムのお宅であーゆう事やこーゆう事をしているうちに彼女を尋ねてきた エルフとミルプエンジェルもその毒牙にかかり、たまたま通りかかった サイアンゲーブもその乱交に加わるという非常にマニアックな設定のだな… いや、1度発禁くらったらしいけどここだったら残ってるだろうと…あ? どうした?」

 「いえ……そんな…そんなものを探して…」

 「何を言うか、女体の神秘に勝るもの等ないっ事を知らぬな?」

 「何が女体の神秘ですか。歪んでますよぉ〜絶対(^^;」

 「だって、おいら男の子だし…あう、若人の君には刺激が強すぎたかな?」

 いや…そういう訳では…それ以前に私の性別は……彼は困惑した私の表情を 見ると“やれやれ”という表情でパネルを操作し直す。

 「まぁ…いやなら良いよ。物はオーブにダウンロードしたから。…お。」

 突然、プロジェクターに裸体の女性が表示された。私は声を上げた… 以前に夢に見た少女がシリンダーの中に…が、 すぐにプロジェクターの光は消えた。彼が装置の電源を切ったようだ。

 「ふっ、絡み無しで私を欲情させようなど甘いわっ!」

 また訳の解らない事を…そう思って白目の視線を投げかける 私に気づいてるのか居ないのか彼はいそいそと幾つかのオーブ (マニアックなビデオは一つではなかったらしい)と プリントアウトした資料(いかがわしい事が書いているらしく見せてくれない) を懐に収めるとクリスタルパレスを逃げるように飛び出した。
 しかし…どうしても疑問が残る…どうして彼は クリスタルパレスのコアを操作出来たのか…簡単に操作出来るものならば クリスタルパレスの知識は世に出ているはず…

 「ん?いや、それこそ秘密さ〜☆」

 彼はいつものようにはぐらかした。


破壊の大帝ぐれねーどへ