100. “一般読者”からの質問と回答U

4. アメリカでは州によって法律が違うため、その学校で解雇されても、また別の学校(州)で
 雇われることは可能か


   不可能ではありません。まず、州が採用することはありません。免許状の交付や更新などの権限はありますが、
   
教員の採用は各教委で、です。小さいところがまとまって統合教委(unifid school district)で採用などの人事
   をやっているところもありますが。

   学校で解雇、ということも正確にはその教委での解雇です。事実上、採用などの人事を校長に委譲している
   場合もありましょうが、その場合でもあくまで最終の権限は教委にあります。採用も解雇も人事です。

   先に解雇された者が、他の教委で採用されることも不可能ではありません。 後の教委の採用基準に合っておれ
   ば、のことです。 しかし本人の申告記載や面接その他で実際には難しいでしょう。

5. アメリカでは教員の勤務評定制度はどうなっているか

   州によって多少異なるが、ほぼタイプは同じです。 その例として杉田の問いに対して州知事(その指示を受けた
   人)から幾つか回答があったが、杉田のホームページに『27.
アメリカにみる教員の勤務評定』として載せてあるの
   で、それを見てください。 その一部を
下記します。

  1. Colorado州の場合
  州教委はガイドラインをつくり、それらは各地方教委によって利用される必要がある地方教委の勤務評
    定制度は、この州のガイドラインに拠ること。
また州教委は、その承認を与えること。( shall approve )
  ○ 地方教委が、教員、校長、行政管理職の勤務評定規定を作成する義務がある。そのために、彼ら及び勤務評
    定会議と協議すべきである。

  ○ 評定者も評定される。
  ○ 評定の期間と回数は、十分な資料が集められるに必要なものであるべきである。最小限、正式採用教員につい
    ては、毎年 1回、 文書による評定書は3年に 1回。

   [不満足]とされた者は、63条により解雇の手続きがとられる。
  ○ 教委は 標準要件 ( standards ) と基準 ( criteria )を定める。
   その標準要件の一つは、直接の授業観察であり、その他に生徒の学習状況をはかる複数の方法がある。 
   また、これらの標準要件と基準は文書で、すべての教員に知らせなければならない。

  ○ 評定者は直接、授業観察した結果および評定制度にもとづいて集められたデーターを用いること。
  ○ 電子的な方法( electroic devices )は利用できない。
  ○ 評定者の上司 ( supervisor ) は評定結果を点検し署名すること。
  ○ これらの条項の他に、同僚教員 ( peer )、親、生徒の分を追加することができる
  ○ 校長、行政管理職も評定を受ける。
   [不満足](Unsatisfactory )となれば、欠点を通知すること。またそれを[直す]ためのプラン ( Remediation 
    plan )、その期間、役に立つ材料、援助も示してやること。

  ○ それでも満足できる状態にならなければ、追加的に[ 直し ]を勧告するか、解雇の手続きがとられる。 63章

  2. South Carolina州の場合
  ○ すべての教員は、評定以前に、文書と口頭で評定の手順と結果を、どのように用いるかについて説明
    を受ける。

  ○ 評定者は、授業観察 <予告なしに行うものを含むこと>、授業以外の、その教員の活動や専門的責任、
   教室・校舎の管理、学校の改善計画、地方教委の方針に適っているかどうかについて、また職業的成
   長について評定すること。
秋と春の学期ごとに実施すること。
  ○ 少なくとも 1年間に一つの領域でパスしなければならない。 最長評定猶予期間は 3年。
  ○ 評定者は州が実施するトレーニングを修了しなければならない。
  ○ 予備的な評定会議は、12月の休暇以前に、最終評定会議は、4月 15日までに行うこと。そのいずれも、関係
    教員の件については関係評定者は証拠をもって出席しなければならない。

  ○ 地方教委は雇用契約更新の有無について、その結果報告をすること。
  ○ なお、教員本人が到達目標を決め、校長の承認を得て評定を薦める方法を採用することができる。

  教員の勤務評定には次の二つの方法があります
  @ チームによって評定する方法 ( 註 これは前述の州ガイドラインのTEAMによる意味であろう。)3名のメンバーは
    校長が決めます。 すなわち、校長または校長が指名した者、
同じ学年または同じ教科の教員( 多分、他の学校の
    教員 ), 行政管理職
そして、この3名は、それぞれ3回、評定し合議で結論を出します。また、この評定者は州規
    程によるトレーニングを受けていなければなりません。

  A 他の方法は教員本人に到達目標をきめさせ、同僚教員によって評定される方法です。
    この方法は事前に、その学校の校長の承認を受けていなければなりません。また 6年以上の経験のある者に
    限ります。

    ・ 本人が三つの目標を設定します。   ・ 校長の承認を得ます。   ・ 目標が達成された証拠を提出しそれを
     校長とともに点検( review )します。これも事前に、証拠とともにその同僚教員に示し、その提案を得てから最
     終的に校長へ提出することが求められます。

  参考事項
   勤務評定で最も重要な授業観察については次ぎのとおりです。
  @ 公表された合理的な基準によること。
  A その基準は教員にとっても容認できると信じこませること。
  B 常に観察し、定期的に評価し、その都度、それを教員自身に知らせること。
  C 校長は、その改善プランを進めるさいに、彼 ( 彼女 ) の同僚教員の協力を求めること。それは実際の改善にも
    役立つし、また解雇となった場合の資料ともなる。

  D 文書を確実に準備すること。

 2003. 9. 23記        無断転載禁止