109. 話題 : アメリカでは高校生の喫煙が大幅に減少


 杉田 荘治


はじめに
   最近(2003年11月)、アメリカの連邦政府が発表したデーターによれば、高校生でタバコを吸う者は大幅
   に減少している。 もっともそのデーターは全米遺産財団と病気抑制・防止センター(CDC)の調査に基づ
   くものであるが、ここではそれらの資料やWashington Postのニュースなどから、この問題を要約しよう。

T 調査した機関とその結果
   前述のようにAmerican Legacy FoundationとCenter for Disease Control and Preventionが、2002年春
   に246高校から26,119名の高校生から回答を得たデーターである。 この調査は2年ごとに実施
   される。 

   2年前と較べて5分の一、喫煙する高校生(9年から12年生)が減少した。 すなわち、2000年には
   28%であったが、2002年には22.9%になった。 もっともこの調査には高校へいっていない者の分は含
   まれていない。 また男女の差は見られなかった。
   人種についていえば、白人生徒は黒人やヒスパニックよりも高く、アジア系が最低の率であった。
  【参考】HealthLink 2000年度調査によれば、1991年度では、白人生徒の喫煙率は黒人の2.5倍、 ヒスパ
   ニックの1.2倍である。 もっとも1999年度には黒人の2.0倍、 ヒスパニックの1.2倍であった。
   なお、上述の%であるが、Washington Post(11/14/2003)号によれば、それぞれ34.5%、から 28.4%と記
   載されているがミスプリントのように思われる。 というのは前述財団とCDCの発表やAssociated Press
   (11/13/2003)号では、ここで述べたように、それぞれ28% から22.9%と記載されているからである。

U その理由
  ○ タバコ防止プログラムが有効であった。 ○ タバコ税が増加した。 ○ タバコ抑制策が効果的
  【参考】アメリカでは州によってタバコ税が大きく異なるといわれる。 1パック 3ドルから8ドルとか。

V これまでの経過
   アメリカでは、1996年ー97年までは、青少年の喫煙率は上昇していたが、1998年にタバコ会社と
   49州が和解し「今後25年間にわたり、2,460億ドル支払う」ことを協定した。 それによって前述のよ
   うな財団も設立され、また各州がそれぞれ、この基金を使って禁煙対策や広く健康問題についての具体策
   を進めているのである。 1998 tabacco legal settlement 
  【参考】 この和解協定:Settlement は連邦の方針にそって各州がそれぞれ、訴訟していたタバコ関連会社
      と金額、期間などについて和解契約を結んでいる。 http://bankrupt.com/CAR_Public/011121.mbx/

W 今後の問題
  ○ さらに6年生から8年生について禁煙の教育をする必要がある。これらの生徒には、殆ど減少がみられな
    い。映画などで喫煙する者の姿が“かっこよく”映るのではないかともいわれ、また自分たち自身で購入し
    ていないので値上がりに影響されないのではないかとも考えられている。
  ○ タバコにちょっと触れる者は、2000年には15%、 2002年には13%いるといわれる。 それらに対する国家
    的戦略が必要であろう。 毎日、4,400名の青少年が始めてタバコを吸ってみようとし、そのうち約2,000名の
    者が現に吸い始めるともいわれる。 今、吸っている青少年の3分の1は将来、タバコに関する病気で死ぬ
    であろう。

  ○ 今年になって各州は禁煙のための予算を大幅に減らした。例えばFlorida州では昨年の3,800万ドルから
    来年は100万ドルに減少する。なかにはゼロのところもある。 一方、タバコ税に期待する傾向もあり問題
    である。

X 資料
  1. 学校で喫煙が禁止されることが殆どであるが、次ぎはKentucky州の場合である。
   Kentucky州  2002年 297校の公立学校の調査結果(校長からの回答)
    問   どの場所で禁止ですか。
    答え  ・校舎のなかで..... 97%  ・学校のグランドで..... 99%  ・スクールバスのなかで...... 100%
         ・学校以外でも学校行事で...... 92%
   【註】職員についても校内やスクールバスなどで喫煙を禁止するところが95%と高いが、グランドや学校行事
       のさいは49%と低くなっている。

  2. 世界各国の喫煙状況 2001年10月現在 Education World com.
    国民一人当たりのタバコの本数(年間)
     1. ポーランド 3,620    2. ギリシャ 3,590    3. ハンガリー 3,260   4. 日本 3,240     5. 韓国 3,010    
     6. スイス 2,910      7. アイスランド 2,860     8. オランダ 2,820     9. ユーゴスラビィア 2,800    
    10. オーストレリァ 2,710   以下 アメリカ2,670   スペイン、カナダ、ニュージーランド、アイスランド、ドイツ等

コメント ご覧のとおりであるが、2年間で高校生の喫煙を5分の一、減らしたことは良い傾向である。 また
     白人生徒が黒人などより喫煙率が高いことも事実として参考になる。 しかし男女差がないことは
     意外である。

 2003. 11. 17記          無断転載禁止