204 教員免許状更新に教育諸活動の単位(時間)の
   認定を


杉田荘治


はじめに
    この6月に改正された新教育職員免許法では有効期間を10年とし、規則で更新のために講習
   を30時間以上履修することとされている。 勿論、今後その講座や講師、会場、時間などについ
   て配慮がなされるであろうが、しかしすでに「受けても余り効果は期待できない」、「本人も学校も
   やりくりが大変だろう」などの声が聞かれる。
 折角の更新制度のためにも標記のような教育諸
   活動を重視し、単位または相当時間の認定をするような規則が創られることを期待したい。

           教育諸活動の評価と単位(時間)の認定例

  1. 校内や地区などでの研究発表
    本人の学校でも全教職員を対象にした1時間以上の研究発表を評価し、更新のための単位ま
   たは時間を与える。 地区、県、国レベルのそれらについても同様である。
 単位は0.5単位など
   も時にはあろうし、時間の場合は例えば30分相当とみなす、などである。


  2. 自己研究
    例えば英語検定、カウセリング認定、IT関係講習、健康・福祉関係講習、体験、理科実験、商業
   実践・各種講習、教育論文発表などであるが
事前に計画の申告・承認があればよい。 なお認
   定権者は法的には都道府県教委であろうが、アメリカの例にもあるように委任された者(校長、地
   方教委その他)も相当数いること。
 膨大、煩雑な事務量などからして、多くの認定権者を設けら
   れることは賢明であろうし、またそれは教員本人とその人たちとの自己研修について、やり取りが
   あろうから教育の振興にも役立つ。
 換算される単位数または時間については、前述と同じである。 
   場合によっては都道府県教委で最終的に決定されればよい。

  3. 課外授業・部活動等
    課外授業、部活動で対外試合への引率、指導についても一括して、例えば20%まで認めるな
   どの方法もあろう。 また後述するイリノイ州の例のように、同僚教員をコーチした実績等も認定
   できれば、より良いであろう。

 
    また、その認定も年度末などに集中せず、その都度と早くしたほうが、本人や学校のその後の
   計画・立案に役立とう。  なお、他の県などで免許状を得ていた者についても、現在本人が勤
   務している県などで更新できるようにしたほうがよいように思われる。

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        参考例1  アメリカ・テキサス州の場合

    テキサス州では教員等の免許更新は5年毎であるが、その規則はCPE, Continuing
   Professional Educationと呼ばれる。 そのなかにクラスルームティーチャ‐については「150時
   間、授業すること」が義務づけられている。 しかしそれに相当するものとして下記のものが例示
   されている。

      基準委員会によって認められる諸活動
   ・ 登録を受けている者によって認められる研究集会、会議、内部の職能成長に役立つもの。
   ・ 大學学部、大学院での講習(一学期講習は15時間と算定する)。
   ・ 対話形式の遠隔レッスン、 ビデオ会議、 オンーライン活動、自己研究は20%まで、認める。
   ・ CEPトレーニング、 カリキュラム向上活動は10%まで認める。
   ・ 調査員としての業務は30%まで認める。
   ・ 校長評価について評価の仕事をしたときは10%まで認める。

       認定権者(誰が時間の認定をするか)
   ・ テキサス州地方教委   ・ 地域教育サービスセンター  ・ 承認された高等教育研究所
   ・ 5年以上、テキサス州の教育向上に貢献し、税の免除を受けている教育協会
   ・ とくに州基準委員会から承認された私的会社
   ・ テキサス州教育庁から認められた私立学校
   ・ TEA(テキサス教育協会) と SBEC(州教員免許基準委員会)


       参考例2 アメリカ・イリノイ州の場合

     イリノイ州でも更新は5年であるが、その規則はContinuing Education Unit と呼ばれ、8学
    期(毎週1時間)相当の講習、または20単位の継続教育講習(20CEUs)が必要とされる。 しか
    し次ぎのような諸活動はそれらと同等とみさなれ、更新のためには前者の講習との組み合わせ
    でよい、されている。 A combination of CEUs, coursework and /or other equivalent
    activities that meet the above criteria ...........と規定されている。 なお第185編も参照して
    ください。
           同等と認められる諸活動
     ・実験や各種連携   ・同僚をコーチしたこと、又は同僚教員の結果を検証した実績
     ・教育実習生を指導したこと、又は採用合格者を指導したこと。
     ・公認された教育相談やカウンセリングの実績
     ・教育現場に基礎をおく管理、決定チームその他これに関連する委員会、ワーキング・
      グループなどでの実績
     ・学校での調整共同活動、地区、地方での父母との連携活動
     ・教育と連携した事業、地域社会における活動など

     ・更新に関係のある会議、ワークショップ、セミナー、研究所、シンポジュ-ムなどでの発表。
   
     ・調査プロジェクトへの参加経験   ・更新に関する事業で学校で教えた経験
     ・教育に関する旅行、また旅行の30日前に承認を受けていた旅行
     ・NBPTSといわれる教員免許のコースを終了した者
     ・教育以外のスタディグループ、インターンシップ、学習プランに参加した実績
   
     ・学校、地区、地方でカリキュラムや向上計画での実績
     ・州、アメリカ全体レベルでの実績   ・チームなどでの実績
     ・州内外で検証チームでの実績    ・教育評論、論文、コラム、本などの執筆
     ・教育協会、組合での実績やリ-ダーシップ

    なお、前述NBPTSは全米的な教職講座であり、これに参加し、その認定を受けたことを高く
   評価し、更新のさいにも利用する動きが全米的に強くなってきているが、イリノイ州もそうである。
   NBPTSについては第197編を参照してください。 わが国でも将来、このような全国的な権威
   ある講座がつくられることが望まれる。

       その他 ケンタッキー州の場合
    この州では免許の更新やランクを変えるさいの規則は、Continuing Education Optionと呼ば
   れているが、文字どおり選択としてOn-lineも利用する仕組みが整っていて現職教員は年間を通じ
   て時間的にも便利なようである。  実際に参加するさいは全費用として1,950ドルである。 セミ
   ナー参加、個人指導が受けられるなど便利で効果的のようである。 また主題とは別のことである
   が、この州では1回目の5年後の更新と、2回目の更新、その後の更新について、それぞれ求めら
   れる要件が少し違っていることにも注目したい。 とくに2回目は修士号または大学院での32時間
   の履修を求めている。

おわりに
    教員免許の更新は法改正がすみ、実施細目が検討されているが、30時間の認定講習だけでは
   なく、今まで述べてきたように教育諸活動を重視し単位や時間の認定がなされることを期待したい。 
   イリノイ州に見られるように、その比率はきめず、認定講習との組み合わせとする方法ももあろう。 
    また委任を受けた認定権者や認定のスピードアップも実際問題としては重要課題となろう。

    このように教育実践や研究などの諸活動を重視することは、更新を期に自己の職能成長を図り
   学校の教育活動を活発にする更新制度の目的に合致すると考える。

 2007年7月9日記          無断転載禁止