210. アメリカの中・高校に薬物が広がっている


杉田荘治


はじめに
    今年(2007年)10月に発表された『全米十代・親の薬物濫用調査』によれば、アメリカ
   の高校・中等学校で薬物濫用が増加しているということである。
   このことについて、その『薬物濫用調査』を原典資料として、これに関係解説資料を少し
   加えて、この問題を見ていくことにしよう。


『全米十代・親の薬物濫用調査』: National Survey of American Attittude on Substance
                     Abuse X11: Teens and Parents


   1. アメリカの高校生の80%、中等学校(Middle Schools)の44%の者が薬物に汚染された
    学校へ毎日、通っている状態である。 それは友達の誰かが違法な薬物を使ったり、ま
    たは取り扱ったり、所持していたり、飲んで高揚状態になっているのを目撃したことがあ
    る生徒の割合であるが、その割合が上記の率なのである。
    このことは全米で1,100万人の高校生と500万人の中等学校の生徒が何らかの形で
    目撃したことになる。 【註】実際に使用・所持・売買した率は後述の表を見てください。

   2. この秋の新学年には1,600万人の生徒たちが学校に戻ってくることになるが、そこは十
    代の若者にとっては数学や英語と同じように、薬物を扱ったり、所持したり、使ったり、ま
    たはアルコールや薬物で高揚状態になっている場であり、マリファナや経口避妊薬の宮
    殿のような処であり、廊下や教室は開放されたバザーとなってきている。 親たちはこの
    現実を直視なければならない。

   3. これを2002年度と比較してみても、高校では39%も増えているし、中等学校では63%も
    増えている。 昨年の2006年度と較べても高校では20%, 中等学校では35%の増加であ
    る。
   4. このように今やアメリカの若者たちはアルコールや薬物は普通のものとなり文化となって
    いる。 ずぶぬれの状態、高揚状態で、むしろそれらは、かっこよいと考えられている。

   5. しかし『薬物を使わない(使わせない)学校』: Drug-Free Schools では非常に少ない
    ○ 他の学校と比較すると、マリファナや違法に処方された薬物を使用する率は1/16に
      すぎない。  それを濫用する程度は1/15である。
    ○ 少なくとも月に一回は飲んだとする割合は1/6であり、マリファナを数割合は1/5である。
      また薬物を用いることを得意がっている生徒の割合は1/5.5である。
    ○ なおタバコわ数生徒は1/4である。

             親の態度
    前述のように薬物が広まっている多くの学校では、親たちは「薬物を使わせない学校」に
   することは非常に困難だと考えている。 すなわち59%の親たちがそうであり、41%の親は
   今でもそれを目標にすべきだと考えている。
    また将来、子供たちは成人して薬物濫用に陥るだろうと予想している。

    薬物を使用・所持・売買している学校へ通学している生徒の率

 
 年度/   高校生 %   中等学校生 %
 2002     44      19
 2003     52      21
 2004     50      24
 2005     62      28
 2006     51      23
 2007     61      31
 左の表の数字(%)には
 目撃した生徒の率は含
 まれていない。 これを
 入れると本文記載のとお
 り、80%と44%である

  また9.11同時多発テロ
 の影響で緊張し、一時的
 に率が下がった現象も
 見られる。

調査方法
    2007年7月13日から5月13日にかけて電話や面接によって調査され、生徒1,063名、
    親550名から回答が得られた。 実施機関: CASA, Columbia University's National
    Center on Addiction and Substance Abuse.
 なおCASAは12年間にわたり調査
    している。

           薬物を使わない(使わせない)学校: Drug-Free Schools
     
    そのような学校になれば、連邦資金その他の補助金が得られるのであるから有利
   になるはずであるが、それが意外と少ない。 それはその要件が厳しいためであろうか。
   その要件を記載しよう。 資料: Complying with the Drug-Free Schools and Campuses 
                      Act EDGAR (34 CFR Part 86)
    要件
   1. アルコールや薬物についての文書による規則をつくること。
   2. その規則を生徒や職員に徹底させること。
   3. 2年に1回、実施計画の効果について報告すること。 またその報告書はファイルして、
     いつでも連邦教育省に提出できるようにしておくこと。
   4. 会計監査を受けること。

    もう少し詳述すると
   1. 校内や学校行事のさいに不法な薬物やアルコールを使用しないなどの規定を明記すること。
   2. 違反者に対する制裁を明記すること。 生徒については停学、退学、職員については停職、
     退職など、またときには刑事訴追されることも明記すること。
   3. 健康への危険性についても明記すること。 カウンセリング、リハビリ計画についても同様。
   4. 追加して最近の判例なども紹介すること。

補足1 MSNBC.com, 2007年8月16日号から
     高校生の薬物問題は悪化している。 親も「麻薬を使わない学校」にはなれないだろうと
    考えている。 この調査のヘロイン、コカインその他の薬物統計も実際よりは低めのもので
    あろう。 というのは答えたがらない傾向があるからである。
     なお、CASAColumbia.org も「インターネット上でも容易に手に入るようになった」ことも
    影響していると記している。

補足2 Revolution Health, 2007.8.16号も同じようなレポートを載せている。 すなわち、
    2007年度について1,063名の十代の若者から回答があったが、高校生61%(2002年度は
    44%), 中等学校生は31%(2002年度は19%)と増加している。 しかもこれに目撃した者を
    加えると高校生では80%になっている。 しかも親もdrug-free schoolsなんて非現実的
    だと考えている。

補足3.  第173編『アメリカで十代の若者にオーラルセックスの増加』も参照してください。
       『全米十代妊娠予防運動』の報告書(2005年9月17日)から
       15才〜19才の若者の半数以上がオーラルセックスをしている。このようにオーラル
       セックスは今や普通のことになってきている。
とくに中流、上流所得層にあってはオー
       ラルセックスは以前、考えられたようなものではなく、友達関係、社会の普通の行為
       であり、子供たちの生活の一部
になっている。
        なお、『週刊新潮』 平成19年11月15日号の58ページにアメリカの十代のオーラル
        セックス」について杉田の
コメントが載っています。 参考にしてください。


おわりに
    アメリカで校内で友達が薬物を所持・使用・売買などを見ただけの生徒を含めての率
   ではあるが、それにしても80%の高校生がそうであるとは驚きである。 わが国では、そ
   のような現状ではないと思うが、今後とも関心をもち、その都度、対策していく必要があ
   ろう。

 2007年11月13日         無断転載禁止