211. ニューヨーク市の新しい学校評価


杉田荘治


はじめに
    ニューヨーク市の新しい学校評価は生徒の成績だけで評価するのではなく、それに1年間
   で、どの程度、進歩・向上したかを大きく査定して最終的にA〜Fに評定するのである。 
   これが従来の方式と異なる点であるが、このことについて市教育庁の公式説明DOE:
   Department of Educationを原典資料として、これにニューヨークタイムズのコメントも加えな
   がら要約することにしたい


                 新しい評価方式とは

T 学校評価の方法
 ○ 学校環境は15点満点で評価される。 それには生徒の出席率や親、生徒、教員からの調査
   結果が含まれている。
 ○ 生徒の成績には30点が与えられている。 後述するが州標準テストの結果である。 高校に
   ついては卒業率も含まれる。
 ○ どの程度、進歩・向上したかには55点が与えられる。 従って上位校でも成績が下がれば、
   評定は厳しいことになる。 また英語に不自由な生徒や特殊教育を必要する生徒、年度の初め
   に成績の悪かった生徒の向上ぶりに大きく配点される。

 ○ 以上の査定には生徒数や人口構成、歴史的にみて同じような条件で、他校との比較が重視
   される。


U 結果
 ○ 前述のようにして評定A〜Fに分けられが、評定A校には報奨金が与えられる。 それは他校の
   模範になるからであるが、しかし評定A校といえども絶対的な成績が悪いところは除かれる。
 ○ 評定D, F校は「改善」を開始しなければならない。 もし一定期間に進歩・向上がなければ、指
   導者の更迭や学校の再編成が行なわれることになる。 場合によっては閉校となる。
 ○ 評定C校についても、それが3年間続けば前述と同じような措置がとられる。

 ○ これらの結果は詳細に公表される。 例えば次ぎのWebsiteでも見ることができる。
    2006-07 Progress Report Results (updated 12/4/07)

   
   このように小学校のみ、幼稚園〜8年生の学校、中等学校、高校別に分類されているし、人口
  構成上でもSpEdとかELLの%, TitleTの学校給食費免除別なども考慮され、さらに黒人、ヒスパ
  ニックなど別にもなっている。 さらにポーナスの査定にも利用することについては後述する二ュヨー
  クタイムズのコメントを見てください。 また資料についても親は関係学校分のコピーを求めること
  もできるようになっている。

V 学校評価の基となる州標準テスト
     ○ 英語  3年生〜8年生  冬に実施される。

     ○ 数学  3年生〜8年生  冬おそく又は春に実施する。
     ○ 社会  5年生  秋に実施する。     8年生  春に実施する。
     ○ 理科  4年生と8年生  春に実施する。

    ○ 高校生については卒業するために5科目(英語、数学、理科、世界史、アメリカ史)の
      テストに合格しなければならない。
     【参考】 なお別件であるが高校生について、大学受験生徒のためにPSAT/NWSQTという
          講座を開設したが、これは10年生と11年生が受講することができる。 また語句や
          数学について「良」を取れるように必要な生徒についての講座も始めた。(8年生と
          9年生)  さらに市独自のAccelerated Assesmentsもつくり、8年生で世界史、
          グローバル教科や美術、音楽でより才能を伸ばし、高校での単位を認めたり上級ク
          ラスにすぐ進めることができるようにした。

             New York Times のコメント(2007年11月6日)


   1. ニューヨーク市の新しい学校評価は生徒の1年間で、どの程度、進歩・向上したかを大きく
    査定して評定するのであるが、これが新しい方式である。
 Michael R. Blooberg市長は「50校
    がFと評価され、その2万9000名の生徒を他校へ転校できるようにする」と言明している。 また
    例えば279校の高校のうち99校が評定Dであったが、そのうち数校について今年中に閉校にす
    るか校長を更迭させると市長は話している。


   2. このように厳しいものであるが驚いたことには、従来とびきり上位の学校であっても評価C, D
    とされるものや、いやFとされる学校さえ出ることになる。 というのは今まで行なわれていた方
    法とは異なり、州標準テストで生徒がその年度にどの程度、進歩・向上したかを大きく問われる
    からである。 それは同じような生徒数や人口構成上によって他校と比較される。

   3. 市当局はこの方式を賞賛し、これは学校の資質を量り、その長所や弱点を自覚させるに有効
    な手段であり、全米の模範になるだろうといっている。 また今年は校長のボーナス査定にも
    利用するし、いずれ教員のボーナスについても学校単位で反映させると説明している。

   4. そしていくつかの例を示しているが、しかし連邦のNCLB法による評価とは異なる点も多いの
    で混乱も大きいだろうとの批判が出てきている。


              遂に数校が閉校となる

    昨日、次ぎの6校が閉校になると発表された。 すなわち、
     ・Tito Puente中等学校    ・EBC/ENY高校    ・Business School中等学校
     ・Public School 79小学校  ・P.S.10(幼稚園〜8年生)  
     ・Academy of Environment Science(6年生〜12年生)


   ○  いずれも評価DまたはFの学校で、向上再建計画が極めて不充分と判定されたものである。
     小学校はただちに校名も変更して校長と教員は更迭させられる。 中等学校と高校は来年
     度から生徒を募集せず、年ごとに段階的に廃校になっていく。 したがって在校生は、その
     まま留まることになる。  これらのことは昨日、生徒の家庭に文書で通知された。
   ○  なお、評価Fは50校以上あり、Dは約100校あるが、今後閉校について新たな動きがある
     かもしれない。 【この項: New York Times 2007年12月5日号】


  【参考】     ニューヨーク市教員組合のボーナスの合意

     New York Times 2007年10月18日号は次のように報じているが、これは貧しい生徒の多い
     一部の学校に適用されるようであるが、前述本文との関係もいずれは出てくるものと思われる。
    ○ 市長とニューヨーク市教員組合は昨日、主として貧しい生徒の多い学校について、生徒の
      テストの得点に大きく基礎をおくボーナス計画に合意した。


    ○ このプランは数年前に市長が提唱したものであるが、数ヶ月の交渉の結果である。
      良い成績を挙げた教員にボーナスが与えられるが、教員個々に直接支給されるのではなく、
      良い成績の学校へ支給されることになる。 
    ○ その学校は教員2名、校長、校長の指名した教員によって委員会をつくり、教員への配分
      は、その委員会に委ねられる。
 そこでは組合員であろうと非組合員であろうと差別されな
      いし、また年功序列によらないことが求められている。
    ○ この『委員会』方式は全米的に広まってきている優良教員に対する優遇措置についての
      突破口となることが期待される。

    ○ 今年度は前述のように、貧しい生徒の多い200校の高校に適用されるが、来年度には
      400校になるであろう。


おわりに
    ご覧のとおりニューヨーク市の新しい学校評価は、1年間でその学校が州標準テストでどの程度、
   進歩・向上したかを大きく査定して評定される。 しかも他校と比較しながら結果は詳細に公表され
   ているので、極めて厳しいものといえよう。
 現に数校がすでに閉校となった
   わが国では過日の全国統一学力テストの結果は学校別はおろか地方教委別にも公表されていな
   いので、これはアメリカの一資料として利用するものといえよう。
 ただ「その学校が1年間にどの
   ように向上したか」に着眼し大きく査定する点は参考になる


    また優良教員への優遇策についても、直接その教員へ支給するのではなく『その学校の特別委
   員会』に委ねる方式も示唆に富んだものがあるように思われる。

 2007年12月10日記            無断転載禁止