240. アメリカでも教員はPTA会費を負担しない?


杉田荘治


はじめに
    最近、ある高校長から[教員がPTA会費を負担しなくてもよいか。ついてはアメリカでは
   どうなっているか?]と尋ねられた。そこで実情を調べて回答したが、ここではそれを補足
   して要点を述べることにする。


   回答  そのとおりである。 アメリカ(U.S.A.)でも教員はPTA会費を負担しない。
        例外的にPTA組織と離れて、草の根運動として親と共同して運動を展開して
        いるような場合は別である。


               いくつかの具体例

   1 Saddle Rock 小学校(New York市)   2009-2010  PTA DUES(会費)
     ○ 毎年、Saddle RockPTAは生徒の家庭(世帯)から会費を集めます。
     ○
 これらの会費は私たちが資金調達したお金とともに、本や授業に役立つ備品を購
       入したり、体育に役立つスポーツ用具、懇談、先生たちへの補助的支給などに使
       います。
     ○ またPTAは一年を通じて国際デイや文化的な行事にスポンサーとして役割も果た
       します。

     もし、あなたがクラスの代表を決めるオープンハウスの夜に出席されていなかったな
     らば、下記の用紙に記入して、現金か換金できる小切手をクラス担任にお渡しださい。
      会費は1世帯につき20ドルです

        こどもの名前 ................................
        先生の名前  ...............................
        − 私は20ドルを現金で゛同封しました。
        − 私は20ドルの小切手を同封しました。



    2, Longfellow 小学校(アイオワ州)  Longfellow PTA Budget Description of Items List
      PTAの会員になってください。 そしてわたくしたちのPTAを支援してください。
      ○ 会費は10ドルです。 それで全米PTA, 州PTA, 地方PTAの会員にもなれます。
      ○ 下記するボランティア活動にも参加してください。 参加できる方は[]にレ・を入れ
        てください。 
        [] ICe Cream Social (8月)        [] Longfellow Family Picnic (9月)
        [] Room Parent Tea (9月)       [] Fall Family Dinner (9月)
        [] 幼稚園〜2年生 PJ Party (冬)   [] 3-4年生 Grand Movie Night (冬)
        [] 5-6年生 Grade Lock-In (春)    [] Spring Carnival
        [] Field Trips               [] Book Fairs (年に3回) 

         [] Picture Days (秋と春)        [] Hearing Test Days
         その他、24の行事が列記され、参加できそうなものを予め登録させる方法が   
         とられている。 わが国でも参考になろう。



    3. Russell Knight 小学校  A Russell Knight School PTA PTA Dues (会費)
      PTA会費は年間、一世帯(per family) 10ドルです
      ○ その他PTAは資金調達を行いますが、それには、Barnes & Noble Family Fun Night
         やFamily Game Night, Winter Carnnival などがあります。
       [註: このようにアメリカのPTAは会費のほかに、募金、イベントによる資金調達
         (Fundraising)が盛んで、親たちはFundraiserとして資金集めの役割も果たしている。 
         このためPTA会費は意外と安い。この点、わが国と異なる。]



    4. Horizon Japan International School (横浜市) 
        Parent-Teacher Association (PTA) Guideline
      ○ PTAはすべての親と教員で構成されます。
      ○ すべての親は会費を払わなければなりません。
          年間 5,000円  但し二番目の子供からは一人につき2,500円です


   5. Gray's Wood 小学校など(フロリダ州)
      PTO Today, Should You Charge Membership Dues ? の調査によれば、Gray's Wood
     小学校の場合は会費は2ドルであるが<、Brandon Academy の場合は25ドルであ。いずれ
     も親の一世帯あたりである。    なおこれらの学校は全米PTAに加入しなくて独自性の
     強いPTOであるが、活動自体はほぼPTAと同じである。


   6. Montgomery 郡PTA (メリーランド州)  杉田の質問に答えて
      この郡の学校のPTAは親、教員からも会費は取っていないとのことであった。 それは
     PTAが学校で実施するイベントで地域などがスポンサーになってくれているので利益が得
     られるとのことである。
       PTA is voluntary,...... no parent or teacher is required to pay annual due. .....


   参考 スコットランドPTA会議からの回答 杉田の質問に答えて。感謝している。
     ○ 親はPTAの会員になれますが、すべての親が会員になっいるわけではありません。
       同様に一部の教員もPTA会員になっています。
     ○ PTA会費は徴収していません。というのはいろいろなイベントによって資金を調達して
       いるからです。
      以上のことはスコットランド全土に通じて一般的なことです。


             会費のことはPTAの趣旨からも理解されよう

    全米PTAはその使命などについて次のように述べている。 Mission, Vision & Values
     関係箇所
     ○ 資金調達について   親にとってはPTAの資金調達は大切なことです。しかし同時に
                      それ以上の価値あることもしなければなりません。
     ○ PTAは家庭と学校とをつなぐブリッジのようなものです。
     ○ PTAはこども教育について学校と提携する親たちを激励し支えるものです。
     ○ このような使命は設立以来、昔も今も変わっていません。

     このように、教員を会員としながらも親たち自身の自主性、財政的な役割、学校とのブリッ
    ジのような働きなどを通じて、こどもの利益になることを繰り返し強調しています。 このこと
    から教員に会費を負担させることは、却って親たちの自主性を損なうことにもなろう・


    (参考 1)   全米PTAへの負担金(平均)
           ・ 単位PTAの会員一名につき、全米PTAへ年額 1ドル75セント
           ・      同じく          州PTAへ年額 2 〜 4ドル
           ・      同じく          郡PTAへ年額 25セント
         [資料: PTO TODAY, PTO v PTA :Difference at a Glance ]

    (参考 2)   Wilkipedia, the free encyclopediaによれば、
        ・ アメリカ(U.S.A)にはPTAまたはPTSA(生徒も参加)がある。
        ・ 公立・私立の幼稚園から8年生までの学校のほとんどはPTAか、これと同じような
          PTOをもっている。
        ・ 高校や早期幼児教育についても、そんなに多くはないが、ある。
        ・ PTAは全米PTAの単位(part)であり、1897年に設立された。 シカゴに本部のある
          非営利団体である。
        ・ PTAは学校を支援し、親たちの参加を奨励し、教員を支え、家庭のイベントを組織
          化することである。
        ・ PTOはPTAと同じようなことをやっているが、州や全米レベルのものはない。

    (参考 3)   PTA-Wikepediaによれば、
        ・ 全米で2万3,000以上のPTAがある。しかし全米で90%以上の学校がなんらかの保
          護者と教師によるグループを持っているにもかかわらず、PTAに加盟しているの
          は、その25%である。残りの75%はPTO,HSA, PCCなどと呼ばれ、PTOの割合が高
          い。
           それはPTAの方針や運営方法に賛同しないもののほか、私立学校には宗教学
          校が多く、全米PTAよりも母体の宗教団体のガイドラインに沿った活動をするため
          である。 なお、PTOについては、PTO社は[PTO Today]雑誌を創刊して、会費を
          払えば、全米PTAと同じようなサービスを受けることもできる。


               わが国の高校PTA

     アメリカでは全米PTAなど全米的な組織に加入せず、高校単独でPTOとかPTSOなどの組
    織をもっていることが多いが、わが国では義務教育諸学校と同じくPTAをもち、しかも都道
    府県別、全国PTAをもっている。 しかし最近、豊橋市の河合四郎氏なども指摘されている
    ように、授業料無償化の法制にともない、会費の問題にからめて、学校安全会、高体連、高
    文連などの加盟費負担が問題視されることも起こってきている。 しかし例え部活動をして
    いない生徒にとっても、その学校の各部が競技大会などで活躍し、学校の“名”を挙げれば、
    それは学校を元気づけ、ひいてはすべての生徒(親)の教育的利益になるのである。 
     PTAの規則、内規、申し合わせ事項などで、加盟費負担のことを定めておけば問題はな
    かろう。

               PTA活動について(参考意見)

     [PTA活動は形骸化している。]、[一部役員の過重になっている。]、[参加したくても仕事や
    家庭の都合で無理だ。]などの批判や意見があることは周知のところである。 現に杉並区
    和田中学のPTA離脱の動きもあった。  
     そのさい本文で記載したアイオワ州Longfellow 小学校PTAのように、年度の初めに年間
    の行事一覧をその時期なども含めて具体的に示し、予め参加できそうなものについて登録
    させる方法が参考になろう。 そのさい委員会活動というよりは、もう少し自由なPTA内のグ
    ループ活動にウェイトをおくようなものにすれば、参加意欲や喜びも強まるように思われる。
 
    勿論、PTAの行動としての制約もあろう。

おわりに
    ご覧のとおり、アメリカでも特別な場合を除いて教員はPTA会費を負担していない。 その
   理由や具体的な事例、会費の年額、親たちの資金調達のこと、またわが国の高校PTAに
   ついての問題点やその考え方、さらにはPTA活動についての参考意見などを述べた。 そ
   れなりに役立つだろうと考えている。

 2010年6月15日記             無断転載禁止