37-2 チャータースクール『教育改革センター』の要約


杉田荘治


はじめに
   チャータースクールの本拠である『教育改革センター』自身の公表文書からチャーター
   スクールについて要約しておこう。

  1 チャータースクールとは
    チャータースクールは、独立した公立学校であり、教育者、親、コミュニティの指導者、教
     育的企業家その他の人達によって計画され、運営される学校である。
   ○  彼らは地方の教育の質や誠実さを求め、地方教委等によって支持され、伝統的・官僚構
     造的な縛りから自由にしてやり、彼らにやらせてみたほうが良いとして認可された学校で
     ある。
     このようにチャータースクールは細々した管理から解放されて、優れた教育や地域の要望
     である、より子供たちに適した教育プログラムを計画し実行するスクールである。
   ○ 従って、チャータースクールは『 学校選択 』の一つであり、高度な責任と住民の要望を満
     たすレベルを保持していく。


  2 チャータースクールは従来の伝統的な公立学校と比べてどのように違っているか

   ○ 責任
     チャータースクールは地方や州の規則に十分に従うのではなく、どうしたら子供たちに安全
     で責任のとれる環境で教育するかを主眼とする。従って、どれだけ目指す実績を達成できた
     か、また、いかにして財政的自治や管理責任が自分たち自身の憲章に沿って果たされてい
     るかによって是非が判断される。

     また、チャータースクールは、公平な教育、優れた教育という高い目標をもって合法的に責
     任を明確にして運営されなければならない。 従って、これらに失敗すれば閉鎖される。

○ 選択
  より良い教育環境のなかで、より良い教育を子供たちに受けさせたいとする親であれ教員、
  地域のグループ、組織、あるいは個人であれ誰でもチャータースクールを設立することがで
  きる。また、そのような学校で刺激や優れた教育をすることに関心のある地方教委、州教委、
  大学その他コミュニティ機関は誰でも、それを支援することができる。

  また、生徒は誰でも、そのような学校を選ぶことができる。
○ 自治
  チャータースクールには、優れた教育を求めるという目的のために、つまらない事柄に気を
  とられたり、エルルギーを消耗させられたりするような規則や伝統的・官僚機構的なものから
  解放されて自治が認められる。 手続きという輪や書類を多く作るということよりは、そこでは
  良いより適した教育、高い水準へと専念することが主なる役割となる。


  3 チャータースクールの財源はどうなるか

     チャータースクールは公立学校である。 新設校の他に既存の公立学校からの転換校もあり、
     ごく僅かであるが、私立学校からの転換校もある。
     従って他の公立学校と同じように財源は生徒数によって額がきめられ、地方当局および州当局
     から支給される。 しかしながら実際には他の公立学校と同額でないことが多い。
     例えば、Minnesota州では、その75%. New Jersey州でも 100%ではないし、Arizona州でも 80%
     である。 その額は当局と交渉しなければならない現状である。

   ○ 施設・設備の財源についても同様である
     いくつかの転換校には設立資金は準備されているし、またある州では新設校について、使われて
     いない地区の空いた建物や施設などを利用できるように配慮されているが、未だ多くの新設校は
     自分たちで探さなければならない。
     また、幾つかの州の規則では、設立のさいの費用を予算化しているが、やはり問題は多く残され
     ている。


  4 チャータースクールは、どのように公立学校に刺激を与えたか

 チャータースクールは子供たちに、いろいろなサービスを提供して平等でより良い教育をす
  るという健康的な刺激を他の公立学校に与えている。
  例えば Arizona州の Mesa教育区では 20校のチャータースクールで 5.000名の生徒が学ん
  でいるが、ローカル新聞は、いつもそのPR版を載せ、チャータースクールの行事やサービス、
  生徒の学習成果をその掲示板に掲載している。 またバスにもPRできる費用を負担したり、翌
  年のことについても関心をもって激励しつづけている。 これらのことは既設の公立学校にも刺
  激を与えていると州教育長 Lisa Keeganさんも十分、認めている。

  また、Detroit市 教育長 David Sneedも 「確かに チャータースクールは他の公立学校に良い
  刺激を与えており、我々の誇りです」 といっている 。また、California州 サクラメント市連合教
  育区のBowling Green小学校は 1993年には最もひどい問題校であったが、その後 チャーター
  スクールへの転換校となり、独自の憲章に拠る勤勉な努力と弾力的な財政運営の結果、底辺
  校から這い上がり中位程度の学校に変わった。 このように Dennis Mah校長の努力も評価す
  べきであるが、これを受けて、サクラメント市 連合教育区では 1998年には全教育区を挙げて
  チャータースクールへ転換しようとするプランを立てるまでになっている。


【コメント】 このように長所のみが強調されているが、今後、その問題点や失敗例についても検証し
       ていく必要があろう。


       このことに関連して、代表 大沼安史 『教育改革リサーチ研究所』のサイトが 西村香介さんの
       『加茂暁星高校における教育改革に関する考察』のなかのチャータースクールに関する米ハドソ
       ン研究所の報告書の翻訳を紹介されている。 前の学校との学習意欲に関する比較(生徒によ
       る)、父母による前の学校との比較、教師によるチャーター・スクールの成功評価など。これが
       参考になろう。
2000. 12月 記       無断転載禁止

追記( 2002.12.31) The Charter for Education Reform Charter Schools 2002: Results
             from CER's Annual Survey of America's Charter Schools

               http://edreform.com/charter_schools/survey2002.pdf

    2002年の現状については標題の調査結果を直接参照されるとよい。アドレスも書いたので詳細は省略す
    るが、そこには、2001年9月現在で37州とDistrict of Columbiaで2,357校あること、そのうちの481校
    の調査結果であること、また冒頭に一般校(traditional public schools)と同じ標準テストを受けていること、
    認可要件に失敗すれば閉校となること、指導の困難な生徒(at-risk students) や少数派生徒(minority
    students),低所得層生徒(low-income students)を教育することから出発して、さらに能力のある生徒
   (Gifted and Talent
 students)などにも拡げていること、また一般校の平均生徒数は539名であるが、charter
    schoolsは242名であること、年間の授業日や1日の授業時間も多いことなどが述べられている。(一般校、180
   日、1日 6.5時間)

    また表では、受けている標準テストの一覧、生徒の人口、認可機関一覧( 地方教委、州教委、大学、他の
    認可機関など)、最後に学力などの成功例とチャレンジについて書かれている。
    なお、その表4にはcharter schoolsがとにく戦術としている分類が示されているが、最近ある研究する人か
    ら、それについての質問があった。表そのものの分類が簡潔すぎてよくわからないが次ぎのような意味で
    あると考えて回答したが参考までに付記する。
    ・Thematic Instruction..主題を明確にして指導することに重点を置く
    ・Core Knowledge  ・College Prep  ・Science/Math/Tech  ご覧とのとおり、それらに重点を置く。
    ・Direct Instruction 直接的な学習指導法に重点を
    ・Back to Basis   ・Arts    ・Bilingual/Foreign Language ご覧のとおり、それらに重点を置く。
    ・Out-come-based Education 結果重視の教育     ・Montessor モンテソ‐リ式教育法
    ・Expeditionary Learning いろいろと学習指導について実験することに重点を置く。
    ・International Baccalaureate, Constructivist , Virtual/Cyber/Online ご覧のとおり。
    その他

    


追記 (2005年10月19日)
    最近の上記『教育改革センター』の資料から、下記の事項を追加しておこう。
     全米で40州と首都ワシントンに、約3,400校のチァータースクールがある。 2005年4月現在
     その内訳は次ぎのとおりである。

   ○ チァータースクールの自治の程度が高い州............この『センター』が査定してA, Bのレベル
     Arizona; California; Colorado; Delaware; Florida; Indiana; Massachusetts; Michigan;
     Minnesota; Missouri; New Jersey; New Mexico; New York; North Carolina; Ohio;
     Oregon; Pennsylvania; Texas; Washington, DC; Wisconsin.
   ○ その自治の程度が低い州..........この『センター』の査定でC〜Fレベル
     Alaska; Arkansas; Connecticut; Georgia; Hawaii; Idaho; Illinois; Iowa; Kansas; Louisiana;
     Maryland; Mississippi; Nevada; New Hampshire; Oklahoma; Rhode Island; South Carolina;
     Tennessee; Utah; Virginia; Wyoming.

   ○ チァータースクールがない州........その州法そのものが制定されていない
     Alabama; Kentucky; Maine; Montana; Nebraska; North Dakota; South Dakota; Vermont;
     Washington; West Virginia.

   【参考】 Click here for the latest charter school numbers, state-by-state.

追記 (2016年4月23日)
    :U.S. Department of Education, National Center for Education Statistics. (2015).
     The Condition of Education 2015
(NCES 2015?144), によれば
    〇 
全米で42州と首都ワシントンで6.100校のチャータースクールがある。これは公立学校の
      6.2%を占めるほどになった。
 生徒数ではCaliforniqが最高で471,000である。 %ては首都
      ワシントン。 
  


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