X Yuba川チャーター・スクール: Yuba River Charter School
Yuba郡に隣接するNavada市にある、このチャーター・スクールは生徒数、約220名のこじんまりした
スクールであるが、幼稚園児から8年生( 中2)までの生徒に対して美術などの英才教育を行って
いる。
1 特色
 ○ 美術、ドラマ、絵画、音楽、彫刻などを、すべての教科の中に取り入れている。
 ○ 数学と理科も重視する。 理科は実験重視。
 ○ クラス担任は、1年生から8年生(中2)まで、持ち上がりで、しかもすべての教科を教える。
 ○ 教科書は使わない。 教員が、すべて手作りする。 芸術的でイラストやレコーディングも
   取り入れたもの。

 ○ 1年生から、スペイン語とドイツ語のニつの外国語を教える。
 ○ 教養教科
   2年生と3年生に神話と伝説、また旧約聖書は3年生に。
   4年生には、古代スカンジナビア神話とインド・エジプトの古代文化
   5年生には、ペルシャ・ギリシャ文明を。
   8年生の終わり頃までに、ギリシャ・ローマの歴史、中世、ルネッサンス、文芸復興、探検時代、
    現代に至るまで、次第に教えていく。

 ○ 毎朝、2時間つづけて、主なる教科を学ぶ。 その後、外国語、音楽、実技などの教科に移る。
 ○ 実技の重視
   1年生には編物、2年生には、かぎ針編み、そしてカラフルなケース、鉛筆箱、ポット、人形づ
    くり、などへと進んでいく。 さらに家を作ること、庭造り、靴づくりもする。
 ○ リズムと心
   体を動かすこと、話すことなどで、詩の意味や音感、リズムを会得する。
   低学年には、レコードを聞くことからはじめて、次第に合唱やオーケストラへと導いていく。
2 入学の要件
   幼稚園児 ..... 満5歳       1年生..... 満6才
 ○ 入学のさい、親が誓約すべきこと。
   ・ テレビやビデオゲームなどは、極力見せない。
   ・ 制服を着せる。
   ・ 家庭の環境を、子供が学習しやすいように整える。


 ○ 生徒はNevada市のTwin Ridges 小学校教育区の者が多いが、しかし通学できる者であれ
   ば誰でもよい。
 [註] 学校のパーキングに子供を降ろしたり、また乗せたりする時間が、次のように決められて
    いる。それが可能であれば、よい。
    [例] 幼稚園児.... 降ろす時刻 朝 8:00 - 8:15     乗せる時刻 11:45 - 12:00
        2年生ー8年生.... 降ろす時刻 8:00 - 8:15                 
             乗せる時刻 (木) 1:00 - 1:15   (月、火、水、金) 3:00 - 3:20
                   
3 スクールの管轄と自治
 Twin Ridges小学校教委の管轄下にある。 しかし、一旦このスクールを認可した以上は、できる
 だけ日常的なコントロールや教委の方針を押し付けるようなことはしない。スクール委員会の責任
 に委ねる。教員の配置などについても協議していく。
  委員 Twin Ridges小学校の教員 2名      親の代表 2名
      教委が選んだ者    1名
4 クラス担任補佐: Class Assistants
 どのクラスでも最低一人、親からクラス担任補佐を選ぶ。交代も可。
 その役割、
  ・ 電話連絡網によって、すべての親にメッセッジを伝える。
  ・ クラスの行事を助け、食物などを用意する。
  ・ 遠足プラン
  ・ “親の夕べ”や資金集めなどの世話役


【コメント】 1997年に現在の規模になった新しいスクールで、ある種のエリート校である。
    クラス担任の“持ち上がり”も特色の一つ。 わが国でも、この方式を採用しようとするとこ
    ろがあるが、無学年制と併用することは余程、慎重でなければならないと考える。というの
    は、クラス担任のしっかりした自己研修や生徒との“相性”の問題が残るからである。
    スクールの管轄と自治については参考になる。 『契約学校』としての強い意志についても
    注目したい。
X-2 補足1 Nevada City School of the Arts
このスクールも訪問したが、幼稚園児から8年生までの生徒に美術教育を実施している。 毎月
親に5時間の学校への協力を求めて成果を挙げている。

補足 2 マーグネット・スクール :Magnet School
 訪問最後の夜のパーティで立ち話しをしたYuba郡教委・教材部長Michael Rossi博士から、帰国
後、E-mail が届いて、「今後、できればマーグネット・スクールにも注目してほしい」 とのことで
あった。
 このMagnet Schools はチャーター・スクールとよく似ているが、しかし少し違っているよう
でもある。とにかく教材にコンピューター、ビデオ、レーザ・ディスク、TVなど多様なものを用い、また僻
地教育向け、インターネットの利用などを活用することに重点をおくスクールのように思われる。
時にはエリート校したり、予算を取り過ぎるとの批判もあるらしい。

次のサイトを見てください。
http://www.ccsd.net/schools/special/magnet/magnet.html
http://www.beavton.k12.or.us/ce_mason/home.html
http://www.learnanytime.com/magnet/

   【追記】マグネット・スクールについて後述143編で述べたが、ここで再掲しておこう。
                   マグネット・スクールとは
   VOA News.com-EDUCATION REPORT(2004年8月号)によれば、マグネット・スクール
   Magnet Schools とは磁石がものを引きつけるように生徒を都市や地域全域から“引きつける”
   から、そう呼ばれている。
   このようにスクールは特別な才能を持っている生徒のために、特別な学習プランを提供している。
   例えば16才の少年は理科と技術に並みはづれた才能を持っているが、それに応えてくれる教科
   に重点を置くスクールで学んでいるし、11才の少年は全く聞こえない聾者である。 しかし彼は
   それに適したマグネットスクールに通っている。

   テキサス州HoustonにあるPorforming and Visual Arts スクールは1970年代で初めての本格
   的なマグネット・スクールといえようが、その後人種統合の政策が進められるにつれてデトロイト
   その他の地域に広まってきた。 今では全米的にコミュニケーション、国際関係、芸術、数学、理
   科などの教科に特別に重点を置くスクールとしてその評価を高めている。

            例 Bronx High School of Science
   このニューヨーク市にあるBronx理科高校は最も有名なマグネット・スクールであるが、1938年
   に300名の生徒で発足した。 今やニューヨーク市内全域から集まってきているがその生徒数は
   3,000名。 彼らは数学、リーディング、書き取りの厳しい入学試験に合格し、ここで理科の全科
   目と英語、世界史、アメリカ史、外国語を履修しなければならない。
   多くの卒業生は科学者、医者、法律家、ライターとして成功している。

Y 2001年 教育サミット(Yuba郡)
2001年 5月25日、Yuba郡One-Stepセンターで、Teagarden教育長が主宰して郡の教育サミット
が開かれ杉田も出席した。
1 出席者

 午前 Tim Johnson.... Yuba-Sutler 経済促進協会事務局長
     Rober Carr........ 事業主
     Charlie peterson... 北中央部国際借款団スタッフ
     John "Jack"Padley,Jr.... California州雇用局スタッフ
     Nelson Chan...... California技術・貿易、商業庁スタッフ
     Nick Hansen....... LIve Oak高校生

     Dr.Marc Liebman.... Marysville 連合教育区教育長
     Dr.Terry McAteer..... Nevada郡教育長
     Rober Marez............ US上院議員Barbara Boxcer秘書
     Carmel Gabriel....... Marysville 高校生
ランチタイム   Lunch Speakerとして杉田が紹介された。
     杉田.... 名古屋市から。二人の子供あり(男女), 二人の孫(男女)あり。 元愛知県立高校の
          教員、校長、その後、豊田市の私立高校長。県教委のスタッフでもあった。退職
          して七年という内容であった。  Wさんについても紹介あがあった。
午後 Dr.Willie Wong........ Yuba市教育長
    Bill Simmons........... Yuba郡指導主事
    Kim Davis................. 州上院議員K.Maurice Johannessen秘書
    Leela Rai.................. Yuba-Sutter商工会議所地区委員
    Nathan Harling........ Marysvile高校生
2 議題と論議     教育が経済にインパクトを与えるためには、どうすべきか

   ○ 品性があり、しかも特色のある教育をすべきである。
   ○ 共通のビジョンがあり、起こってくるであろうギャップを埋めるために、強いリーダーシップ
     が求められる。
   ○ 基礎科目に重点を置きすぎないで、もっと職業教育に力を入れるべきである。
   ○ 自己評価、自分自身の達成感を強くもてるような教育が必要である。
   ○ 小さな地域社会に貢献する行為を、もっと重視すべきである。
3 杉田のスピーチと質疑・応答
   わが国の初等中等教育は全体としては優れていると思う。しかし、今後、もっと才能をもつ生徒
  を伸ばす必要があるし、一方、13万人も登校拒否児がいるといわれることからわかるように、苦
  しんでいる生徒への対策も必要である。
  今回、貴地のチャーター・スクールを訪問・視察したのも、そのためのヒントを得たいためであった
  が、それなりのものを得たことを喜んでいる。


 ○ 質疑
 ・ 日本の学校の年間授業日は?..... 2002年度から週5日制になるから、多分200日ぐらいであ
                        ろう。行事の精選とともに、学力低下も懸念されている。地
                        方教委によっては補助教科書づくりの動きなどもある。                            日本の生徒の自習時間は?....... 3時間を超える者もあるが、
                        0 - 30分の者も相当いる。
 ・ 教員の給料は?............................Wさんが答えたが、それに対して驚きの声がでた。
  その他、「20年ほど前に日本を訪れたさい、青少年の振る舞いに感心したが、最近、行った時
  には、やや失望した」との発言もあった。             
【コメント】 ご覧のとおり、教育関係者、事業主、政治家、さらには高校生までも平等に発言し、
      激しい議論も、時には冗談もいいあいながら進行された。早口の英語には苦労したが、
      要旨を書いたパンフレットもあって何とか全体を理解することができた。

      多様な教育、自己責任、適切なリーダー・シップが強調されていたことに注目したい。
  
      
なお、この会議の模様を、翌26日、地方紙APPEAL-DEMOCRAT:COMMUNITY
     (Sacramento市および San Francisco市の一部もカバーしているとか)が報じたが、帰
     路、サクラメント空港で閲読した。杉田の発言なども書かれていた。
あとがき
 訪問するまでは、やや禁欲的、道徳的な雰囲気の地域ではないかと思っていたが、そうで
はなくて、友人間や夫婦間でも、「あなたの今の行為は、キァラクタ( Character ) に照てして
どうなの?」、と冗談を言い合いながら和気藹々のうちに、常識ある人として、住民として、親、
教員、生徒として普通の行為をしようとしていることが、よくわかり、健全なアメリカの地域社
会を見る思いがした。
 しかし、このYuba郡でも貧困な地域や失業の問題もあり、そのような部落も通過したりしたが、
ホンダ食品が地域に根づき、雇用や地域の文化の発展に貢献されていた。( 現場責任重役、
松浦さん。松浦さんは先日の教育サミットでスピーチもされた)

 また、郡教育長のTeagardenさんは、地元Maryville高校の卒業生で、地元ロータリ・クラブ
の責任者、州の地区担当コーディネイタや北中央部の国際借款団、学校と企業との連携リー
ダーなどとしても活躍されている。 ロータリ・クラブの朝の会合( 7:00-8:00)にも同席したが、
どこでも"Ric,Ric,.."と親しまれ、また郡の連合運動会ても閉会式で、各勝者にトロフィを手
渡すとともに、最後までテントの撤収や机の後片付けを職員と一緒になってやっておられた。

 
今回、今まで一度も会ったことのない杉田を、その志のようなものを評価して、4晩も自宅に
泊め、また自らチャーター・スクールなどへ案内していただき、多くの示唆を受けたことを心から
感謝している。
  2001年6月10日記