86. アメリカの教育改革法:No Child Left Behind Act    その後3

     成績が向上した州... North Carolina州とFlorida州   追記:『学習券』についての取り組み


杉田 荘治


T North Carolina州の向上

   North Carolina州ではテストの得点が飛躍的に伸びているし、また白人生徒と少数派のそれとの
  ギャップも非常に小さくなってきている。

 1 得点の上昇
  ○ 例えばCharlotte郡からHoke郡にかけて、今年の春に行なわれた3年生から8年生の数学と
    リーディングの得点が飛躍的にあがったし、それは今までのうちの最大の上昇率であった。 
    Durham地区やJohnson地区でも同様で過去6年のうちで最大である。

    Charlotte教委は州で最大の教委であるが、3年生の数学の州のテストの合格率は昨年の76%
   から88%に上昇した。 Triangle地方にあるDurham教委でも同様で、3年生の数学が70.4% から
   83.5%になったし、Johnson郡教委でも昨年の80%から今年は92%に伸びた。 Chapel Hill も同様
   で86%から95%へと上昇した。

  ○ 州全体の状況は、この秋にならないと判明しないが、しかし予備的調査によれば著しい進歩
    であるといわれる。新教育改革法の実施によって生徒の学力を押し上げ、人種や民族、貧し
    い生徒などのギャップを少なくするように教育関係のリーダーたちが相関関係により注意するよ
    うになった。また「適当な年次の向上」:Adequate Yearly Progressによって毎年の進歩がなけ
    れば、「改善を必要とする学校」とのラベルが貼られるからである。

 2 白人生徒とのギャップの縮小
  ○ テストの合格率が大きく伸びただけではなく、白人生徒と少数派生徒との得点の差も小さくなっ
    た。
    例えばJohnson郡では黒人生徒の数学の得点は、昨年は17点であったが今年は11.8点と、
    その差は縮まった。メキシコ系アメリカ人については10.5点差が4.5点差に縮小した。 ある校
    長は「それは親たちが成績が悪くて苦しんでいる子供を助け、個人教育を受けさせるなど努力
    した成果である。新教育改革法が主因である」と語っている。

  ○ Chapel Hill-Carrboro教委の黒人3年生は数学で昨年から24点も上がり、リーディングでも11
    点伸びたが、これは教委管内の平均上昇率の2倍である。 またCharolotle-Mechlenburg教委
    でも数学で白人生徒との差が昨年の33点から今年は17点差に縮まった。 学習指導担当副部
    長Agusoさんは「これは多くの ことを一緒になってやったためである」、「しかし、もっと予算が
    欲しい。クラスサイズも小さく、またトップ級の教員に魅力あるものとするために奨励金も欲しい」
    と言っている。
    このことについてはBoston大学のテキストの専門家であるMarguerite Clerkeさんも「それはテス
    トの得点以上の問題で生徒の学習意欲を高めるために是非とも必要である」と述べている。
    【資料】News & Observer (Raleigh NC)(6/16/2003)

  コメント
    テスト問題の難易度を同じように保ちながら、このように得点も上がり、白人生徒とのギャップも
   小さくなっていくのであれば好ましいことである。また教員に対する奨励金も必要であろう。

U Florida州の例

  1 得点の上昇
   ○ 例えばMiami-Dade郡では、Aランクの学校が昨年は103校であったが今年は110校に増えた
     し失敗校(F)は5校少なくなり、またLillie C.Evans小学校などいくつかの失敗校がBランクに飛
     躍した。

   ○ この郡の成績は州全体の傾向を象徴しているが、州全体でトップレベルの学校が894校から
     1,230校と増えたが、これは州全体の約2分の一になる。 失敗校は45%も減っている。

  2 改善の方法
   ○ Jeb Bush州知事が提唱した「教育のためのA+Plan」も影響している。 このプランは六つの
     方式によって査定されるがトップ級の得点を得た学校にはボーナスが与えられし、一方、失敗
     校には改善のための資金が供給される。例えば失敗校の高校で3年間勤務することに同意し
     たリーディングの優れた教員に9000ドルのボーナスが支給されるし、さらに多数の生徒の成績
     が伸びれば一年に1,000ドル加算される。もっとも四つの高校では伸びたが失敗校も出ている。

  3 失敗校
    今年もF(失敗校)になった学校は州全体で9校ある。その生徒数は13,770名であるが彼らは今
   年の秋には学習券をもらって私立学校へ転校するか、それとも他の良い公立学校へ転校するか
   を選べるようになる。
    またそのなかにはTampaBayにある2校のチャータースクールが含まれているが教育長を交代
   させることになろう。なぜならばチャータースクールは公立学校であり、しかも独立した委員会で運
   営することを認可したものであるからである。

  4 評定の再評価
    前述の成績について全米的に研究しているHaneyさんは「49%の学校か゛優秀とされ、1%の学校
   だけが失敗校とされるものが本当に正しいか」と疑問視している。 しかし今日、発表された報告
   を見て州の担当官Jim Horneさんは「全米教育向上評価: National Assessment of Education
    Progressに照らしてみて良い知らせである」と語っている。 この「全米教育向上評価」は各州の
   評定を二重にチェックするために使われるが、その結果は良好であったようである。
    
    もう一つのチェックはこの七月末に実施される。それは新教育改革法によるものであるが主とし
   て、どの学校が失敗校になるか、である。それにはTampaの3校を含めていくつかの学校がリスト
   に挙がろう。州はその改善のために1億4,000万ドルを既に準備している。【資料】Miami Herald
    (6/19/2003)

  5 補足 失敗校も詳細に公表する例
       
    アメリカでは学校や教委ごとの成績が詳しく公表されるのが普通である。例えばMiami-Dade
   County Public Schoolsの公式ページにもFlorida州の学力テスト(Florida's Comprehenseve
   Assessment Test)の結果が詳細に載せられている。例えば本文で述べた学校分については次
   ぎのとおりである。

   ○ Lillie C. Evans小学校   学校番号 1681   District 52
     1999 Grade ..F 2000 Grade ..D 2001 Grade ..D   2002 Grade . F 2003 Grade ..B
     テストの受検率 100%     少数派生徒...99.6%   学校給食の無料または減免率..91.5%

   ○ Floral Heights小学校
     1999 F   2000 D   2001 D   2002 F   2003 F
     テスト受検 99%      Minority 100%     Free and Reduced Lunch 89.9%

   ○ North County チャーター・スクール
     2002年から、 2002 未判定    2003 F    Minority 100%    Lunch 805%

  コメント
    チェックが厳しくなされての成績の向上であれば、この州独特の「A+Plan」の効果も含めて
   成功例といえよう。

 2003. 6. 27記                無断転載禁止

 

   追記(2003. 7. 1)  『学習券』について各州の取り組み

   既報の通り、『学習券』の憲法問題としては、連邦最高裁は、2002年 6月27日、5 : 4の多数決
  に
よって合憲であると判決した。 すなわち、
Ohio州のSimmon-Harris v. Zelman 事件について判決理由
    ○ 真の親の学校選択の一つである。
    ○ 既にこの学習券プログラムを受けている生徒の96%は、宗教系の私立学校へ通学している。
    
○ このプログラムは明らかに失敗しつづける公立学校に通っている貧しい家庭を援助しようという、
  宗教・教会に関係のない世俗的目的(secular purpose) から捉えるべきである。

   最近、各州のその後の取り組みについてThe Plain Dealer(Cleveland)(6/30/2003)が報じているが、
  それによれば意外と各州の取り組みが遅い。到底、全米的に突風が吹くという状態ではない。 その理由は、
    ○ 差し迫った多くの州の財政的事情
    ○ 
やはり州法で宗教系の私立学校へ補助金を出すことを制限しているため。

   現在、Ohio, Colorado, Wisconsin, Floridaの各州がその州法を制定している。Ohio州ではその
  適用を九年生と十年生にまで広げられた。Texas州は特別議会に提案しよう。 しかしLousianaと
  Utah州では議会を通過しなかった。 またPennsylvania州では2002年に州知事になったEd Rendell
  は拒否権を行使するであろう。

   今後については楽観主義者は「十年以内にはこのような学校選択は爆発的にひろまるであろう」、
  「そのためには共和党が優先課題として取り上げること」、「都会のなかの問題校だけではなく普通
  の学校にまでこの方法が利用されること」と語っている。