カルロとレジーナ・性の倒錯
「出来たぞ!完成だ!!」湯気が立ち上る試験管を手に、まるで錬金術の秘薬でも突き止めたが如くカルロは叫んだ。 新生ノア本部の奥まった場所に位置するカルロの研究室。 最新のコンピュータと怪しげな魔法陣とフラスコやビーカーが同居している。 古今の叡智を知り尽くし、そしてサイキッカーとして覚醒したカルロの頭脳に不可能はなかった。
カルロは己が創造したばかりの、その青くどろりとした液体をコップに移し、いそいそと妹の、レジーナの部屋へと赴く。
レジーナは柔らかなベッドの上でファッション誌を眺めながらクッキーをかじっていた。
そこに大きな音を立てて、カルロが扉を開ける。「喜んでくれレジーナ!君が男で僕が女になれるんだ。」
クッキーがぽろりと口からこぼれた。
兄の思考が偶に常軌を逸する事は彼女も重々承知だ。彼の溢れるインテリジェンスがあらぬ事を口走らせる。 ただ、今回ほど飛びぬけた事を言ったのは始めてだった。レジーナの目は点になったままだ。「良いかいレジーナ、完全に僕らが分かり合うにはやはり全てを知らなければ成らないと思うんだ。」
兄妹で有りながら、二人は愛し合っていた。身体を重ねた事も数度ではない。 それと言うのも、実験体として幽閉されていた研究所でのトラウマであるかもしれない。 寄り添い助け合いながら地獄の苦しみに耐えた二人に、兄妹愛以上の物が芽生えたとしても咎められるものではないだろう。
「その為には、異性の感覚も知っておくべきだ、それが僕の結論だ。」
かなりの飛躍が有るが、カルロの高速回転する頭脳は自分達の愛をよりよくする為の法を熟考したらしい。
「でも、そんな事が可能なの?」
さすがのレジーナも半信半疑で兄を見つめる。
この前もワニとカバを合体させようとして失敗したばかりだ。「何を言っているんだ、レジーナ。僕らの力は既に既存の物理学の範疇を越えているじゃないか。 それが今更、既存の生物学や発生学を越えた所で何を驚く事があるんだい?」
自信を感じさせる光が眼鏡の奥で瞬いた。彼にとって超能力と古の秘薬は等価のようだ。
レジーナは、それで居て兄の言う事には従順だったから彼の言う事を信じる事にした。 それに、男の感覚と言うものにも興味があったからだ。兄も、それで喜んでくれるなら。「これを飲むんだね。」
先ずレジーナが一口、カルロが残りを飲み干す。たいした量ではないが、妙に質量を感じる。 喉を抜けるまで時間が掛った。
どきん、心臓が大きく脈打った。それを合図に、どんどん、どんどんと心拍が昂ぶる。 自分の身体が変化する不安、異常さ。自分自身の砦がこんなに脆く崩れていくとは思わなかった。 カルロ自身もこれほど精神を危うくするものとは思ってなかっただろう。 体内の細胞がこれほどまでに興奮し、そしてあわただしく活動していくのを感じた。
レジーナも、自分の身体の異変に気が狂いそうになっていた。 乳房がまるで、溶け込んでいくように筋肉に替っていく。女らしさを形作る脂肪が、筋肉に替っていく。 ボキボキと、骨が疼き、男の体に替っていく。 血液が逆流し、股間に凝結していく感じ。秘所の柔肌がつっぱって、そのまま伸びていった。
これが・・・ペニスの感じ。
レジーナはそれを素直に受け止めた。脈打ち、焼けた鉄のように熱い。 脈打ちながらそれは獲物を狙う蛇の如く大きく怒張する。
カルロもまた、自分の身体が女になっていくのを感じる。 筋肉の一部が溶け出し、体が柔らかくなっていく様な感触。 そして陰部が切れ込んでいく、深く、長く、吸い込んでいくように。
服が窮屈になってきた。二人とも身体にフィットした服を好んでいる為、 体形が代った今は妙に違和感を感じる。服は、脱いでしまう事にした。 いや、それ以上に体が火照っているのが理由である。身体の組織がごっそり替ってしまった為、熱が残っているのだ。
二人は身体を見比べた。レジーナの、悩殺的な女の体はかなりすっきりしてしまい まるで少年を思わせるしなやかで瑞々しいくも逞しいものになっていた。 そしてカルロの方も、痩せ型では有るが筋肉質だった肉体が丸みを帯びて、全く女の体になってしまっている。
カルロはレジーナに生じた、先程までは自分にも存在した肉の塊を指で撫ぜ上げた。
「あはッ!」
レジーナは身を震わせる。刺すような、激しい感覚が背骨を駆け上がる。 カルロは優しく、それに頬擦りする。
「兄さん、そんな事、私やった事無い。」
「これからやってくれればいいよ、レジーナ。」
一瞬ためらいを見せたが、カルロはそれを口に含んだ。 ぬるり、口内の粘膜と舌が、亀頭を這う。そして、自分自身が今まで知り得ている経験で持って、 カルロはレジーナを刺激する。口全体で包み込み、反しに舌を這わせる。
「うくぅっ・・・凄い・・・」
思わず吐息をもらす、シンプルであるが故の強く貫かれるような感覚。
普段自分が遣っている事が、相手にどれだけの快感を与えているのかレジーナは実感した。
そしてカルロも、こうして慈しんでくれるレジーナの愛がどれだけのものか自ら悟る。「兄さん、今度は私がするね。」
レジーナはカルロを起すと、その乳房に指と舌を這わせた。 カルロは思わず息を呑む。男にも胸はある。それなりの快感も生じる。 しかし柔らかで豊かな乳房が正に性感帯と言うに相応しい、快の受信器官であることを思い知った。
「レジーナ・・・こんな気持ちなんだな・・・」
指でその柔らかさを確認し、舌で乳首を転がすレジーナ。自分の胸とは違う感触。 それが兄のものである事が男の身と化した自分を奮い立たせる。
そして、自分の胎内で何かが変りつつある事をカルロは感じていた。より感じやすく、より繊細になって行く。 次第に愛されるための準備がなされていく。それはまさに女体の神秘であった。「兄さんの、奇麗。」
レジーナはカルロの、出来たばかりの花弁に触れる。じわりと露を孕んでいく。 打ち震えるようで、それで居てくすぐったい。複雑で居て可憐に揺れて行く。 カルロは得も言われぬ陶酔の中に引き込まれようとしていた。
レジーナはそれを口でも、指でも弄んだ。やはり自分のとは違うが何処をどうすれば感じるのかよく分かっていた。 カルロはその絶妙の愛撫にただ陶然となるばかりであった。そうしつつも、二人はお互いを貪っていく。 あたかも自分自身を極めるかのごとく、そしてこれから相手をどう慈しめば良いのか、身を以って体験していく。
「兄さん、入れるよ。」
レジーナは、男の欲望を持て余していた。自分自身で抑え切れない野獣の様な衝動。 兄の目が、段々光を増して行く理由を悟った気がした。堪え切れず、ずぶりと、押し挿れていく。
「レジーナ!こっ、これをお前は感じていたんだねっ。」
「ああんっ、兄さん!深いっ、深いよぉ!!」
カルロはなるべく、正気を保とうとした。しかし、レジーナ自身から発せられているような、刺激のうねりが理性を溶かす。無我の境地、それが女の性。
レジーナは、直ぐにでも達してしまいそうな自分を戒めるのに精いっぱいであった。 それは苦痛ではあったが、兄に対する自己犠牲でもあった。顔をしかめながら、レジーナは耐える。 腰を使い、揉みしだき、そして愛撫と呼べないほど激しく二人は重なり合う。「ああっ、いいっ。れっれじぃなぁああ!」
「兄さんん!!」
急激な圧力が解放される。その瞬間、まるで棍棒ででも殴られたような破裂感がレジーナを襲う。 そして、数度にわたって命の棒が爆発する。 カルロと言えば、溢れる生命の奔流に巻き込まれるが如く、高みへと陥ちていく。 四肢が、頭が無限に広がっていくかのような感覚に翻弄されていた。
終った・・・レジーナは溜め息を吐きながら急激に醒めていく自分を感じた。 男の人って、こんな感じなんだ・・・いち早く解けた呪縛、気になって兄を見つめる。 息も絶え絶えに、カルロはまだ目を閉じたままだった。
いとしい。兄さん、素敵だよ、可愛いよ。
そのまま、急に疲労が襲ってきて眠りの縁に陥ちていった。
「戻った・・・のか。」気が付くと、薬の効果が切れたのだろう、二人は元の性に戻っていた。 ほんの数時間の事だったが、今の自分の身体を懐かしく感じた。
「やっぱり私、女の方がいいよ。兄さんに甘えていたいから。」
レジーナは妹らしく、カルロにしなだれかかる。
「僕も、男の方が良いな。お前の顔をよく見ていたいから。」
彼女の髪に手を通し、いつくしむ。見詰め合う二人は今日初めてのキスをした。