ブリ・えみ第三話〜
お前もか! 禁断の愛が二人の間に?!〜
自分の机にどっかりと腰を下ろし、不機嫌そうなエミリオ=ミハエロフ 十六歳、そして今の性別、女。体格が変わってしまった為 今まで座りなれた椅子もどうも居心地が悪い。尻がでかいのだ。 机の位置もどうもしっくり来ない。背丈が少々低くなっているからだ。 更に言うなら胸が邪魔である。意外と下が見づらい、と言うか彼の場合は大き過ぎるのだ。居辛い理由はそれだけではない。回りから発せられる好奇の視線が非常に痛い。 それはもうシカトするしかないし、今までも他人の視線なんぞ気にしないようにしてきているのだが、やはり勝手が違う。
特に、舐めるような男の視線が疎ましかった。向こうは気がつかれてなど居ないと 想っているのかもしれないが、見られている側としては、にやけた口元や目の動きなどから 何を想像しているかまで手に取るように分かる。人間、相手を見るためには瞳を使わなければ成らない以上、 どうやっても目がこちらを向くし、向かせようとする。その一挙一動はどんなに 何気ない仕種を演じていても素人の演義である以上バレ無い方がおかしい。
エミリオはため息をついて廊下の方を見やった。が、今度は女の視線が彼を突き刺した。
「・・・私より胸が・・・」
パティだった。彼女の目の色が違う。怒りに、いや嫉妬の焔と言うべきだろう。 瞳から放射される呪詛。女の業の深さを知ったような気がした。 もちろん知りたくなかったのだが。そう思うと、ちらちらと、切れ切れに 教室からも同じような殺気が向けられているのに気がついた。 二年前の、自閉気味だった自分を思い出した。世の中少々信じられなくなってきた。
「わっはっはっは、きにするな!」
せつなが根拠の無い慰めの言葉を吐いてきたので、睨み付けてやった。 が、彼は意に介さない。エミリオの一瞥に揺るぐような せつなではないのだ。はっはっはっは。
「なんでもいいが、おきゃくさまだぞ!」
客?と尋ねるエミリオを尻目に、せつなはびししとドアを指差す。 そこに居たのはマイトだった。少々回りを気にしている、いつもの覇気が無い。 普段訳が分からないほど支離滅裂なので、大人しいマイトは 妙に弱々しく見えた。
「・・・ちょっと良いかな?」
おどおどしながらエミリオに声をかける。エミリオは彼が「〜は全て斬る!」と 叫ばずに話し掛けた事にとても驚いた。様子も普段と違う・・・。 エミリオは思わず、承諾してしまった。 ここでは何なので便所まで行ってやる。
と、ここまで来て、どちらに入るべきなのか迷った。が、 マイトは迷わず、助詞トイレに向かう。エミリオの方が焦ってしまった。 しかし、こういう事には小心者のエミリオ、せつなを見張りに立たせておく。
「あのね・・・私も・・・」
中は有り難い事に誰もいなかった。そろそろキースの朝のポエムの時間である。 朝礼が近いのでみんな自粛しているのだろう。と言うか、朝礼をないがしろにしている二人、である。
それはそうと、マイトはぽつりと呟いた後、 エミリオの手を取って自分の胸に押し当てた。突然だったので避ける暇も無い。
むにゅ、今朝初めて触った知った感触に近い触感だった。
・・・胸?・・・エミリオの頭は混乱した。男の胸ってこんなに柔らかかったか? いやいや、ちょっと待て、僕は最初に触るのはウェンディーのだって決めてたんだ、 いや違う、何を考えてるんだ自分は!? って待て、胸だと?何でマイトもっ?!
そんなエミリオを、マイトは熱っぽい瞳でじっと見詰めている。 分かりやすい日本語で言うと、“恋する乙女の瞳”である。
「・・・貴方が・・・好き・・・」
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クエッションマークがエミリオの頭の中を支配する。 マイトはエミリオの胸に顔を埋めてしっかと抱き着いた。 彼の(いや彼女の)甘い吐息がエミリオの鼻孔をくすぐり、 柔らかい肌が密着した。熱い、いや火照りと言うべきだろう。 何か妙なエネルギーが二人を捉えてしまっていた。