MV-7号機 打ち上げ見学&ツーリング

今回の打ち上げで最後となるというロケット−MV、こりゃぁ見に行かなくてはならないとあわてふためき行く気になる。
最初で最後の実物MV。期待は胸からあふれかえっている。が、それを押さえて下準備下準備。

まずは「どうやって行くか?」
向こうでの足はどうやっても確保しなければならない。なにせ夜中の2時に移動らしい。レンタカーの台数は限られている。
となると自前の車が必要だね。 待てよ? 足? 俺にはバイクが有るじゃないか!
良し! 向こうでの足はバイクに決定。



そうか・・・ バイクで行くのか・・・・ なにも打ち上げ見学だけに済ます必要はないよな。
どっちみち打ち上げ延期になった時に備えて長目の休みを取らなきゃならないなら、
  「いっちょ行ったるかーーー!」

有給一週間取得決定!

予定通りに打ち上がればそのままロングツーリング、延びたら延びたで野宿して過ごせばいい!
テントも有る、シェラフも有る、その他サバイバルツールはたっぷり!
  20年ぶりの放浪ツーリング、いくかーーー!

行動の基礎は決まった! あとは向こうへ行くだけ!
行きの自走は自滅行為なのでフェリー利用に決まり! 向こうへ行くには・・・・ 大阪から出港か。。。 お!! ぴったりのが有るじゃないか! 大阪南港発−志布志行き。 こりゃ俺のために有るようなもんだ。25年ぶりのバイクフェリー利用も決まり!

早速フェリーの予約。バイクで2等船室。何も問題なく取得完了。

ここでハタと気が付く。俺のバイク、長距離走れるポジションじゃない・・・・。がんばろうかどうしようか悩んでいたときにふと思い出す。「前にオークション買ったおまけでアップハンキットを持っていたじゃん!」。
すぐに改造に掛かってついでにエンジンガードも取り付けて、終わりかけていたタイヤも新品に交換。出発準備完了。


いくぞー! 見るぞー! 走るぞー!

2006/9/21
大阪南港へ向けて出発。4時間有れば付くはずだけど、余裕を持ってフェリー受付の6時間前に出発。
予定通り2時間前にフェリー乗り場へ到着。むこうのスタンド事情が解らないのでガソリンも満タンに。
               このスタイルで

やること無いんでぼーっと、うろうろーっとしていたら、マイミクのひげちきさんからメール着信。
『港につきましたよー』
会って話して写真を撮って、彼に見送られて乗船。バイク置き場は乗ってすぐのとこ。ギアをローに入れてロープで固定してもらって客室へ。

「うわーーーー! 部屋は大きいけど布団の幅、狭ーーーー」 昔の映画”ルーツ”を思い出しました。
               寝相は良くないといけません

とりあえず一番奥の方へ行って奥から2番目のところに陣どったら、一番奥に居た方から声をかけられる!
「ザクさんですか?」
mixiで打ち上げ見学を表明していた”ますパー”さんだった。。。。。 世の中1平米も無いと実感。。。

2006/9/22
狭い船内で一夜を過ごし、遂にたどり着いた鹿児島県志布志湾。
バイクを降ろし、すぐに走りに掛かる。 とりあえずの目的地 「内之浦 宇宙研」。

道は一本、一時間も掛からずにたどり着いた。
途中に有った「ようこそ内之浦へ」モニュメントでの記念撮影もちゃんとね。
               こんな「ようこそ」看板ていいね!

宇宙研はM−Vロケット射点の有る”M台地”以外はいつもと同じように公開してる。警備員も入口に居るだけ。オープンというか呑気と言うか、これも伝統なのかな?

宇宙研の敷地は広いので車じゃなけりゃ回れない ってんで自分のバイクの入場許可証を発行してもらって乗り入れる。ずーっと坂道。とりあえず一番高いところへ向かう。 と、その途中、右側崖下に有るロケット発射場が目に入る。バイクを隅っこに停めて見学見学! ここからの眺めはサイトでよく見る角度。 今は出てきている時間じゃないから整備塔しか見えないけどそれだけでワクワク。 
そしてまた登ってゆくと建物がならんで居るところに。 また隅っこにバイクを停めて見学見学。
ここに有るのは打ち上げ管制の中心施設=コントロールセンターと状態監視中心施設=テレメーターセンターらしい。どちらもドアの前まで行けてしまう。情報公開の最先端をいっているみたい。

そのコントロールセンターと頭胴部整備棟の間の坂道を下るともっと間近に射点が見える。どきどきしてきたぞ。
               
建物の外観を見終わって追尾アンテナの有る”アンテナ台地”へ向かおうとバイクへ戻る途中、前から歩いてきたあのお二人は
的川先生と森田先生! 何か言おうと思ったが言葉が浮かばず、頭だけ下げて失礼しました。
あ゛ーー、Vサインでも出しておけば良かった。。。

アンテナを見て、管制棟を見て、プレスセンターを見て、おおすみ記念碑で写真を撮り、宇宙研を後にする。

時間はまだ10時40分。大隅半島をぐるっと回って桜島へむかおう。

とにかく南下南下。道は一本道だから走ってりゃ着くさー。
おっと、その前というか途中で明朝の見学場所を下見下見。 左手にプレス向け見学所を見て700m程進むと右側に見学場が見える。バイクを停めて階段を登ってゆくと木製のベンチが並んでいて、そこに既におひとり座っている。はやーーー。
話してみると種子島のH2A打ち上げを見てそのままここらを放浪しているそう。 羨ましいぞーー。

見学場の全体やトイレを確認し南下続行。時間があやふやだったので最南端へは行かず桜島目指して北上に切り替える。
そうしてたどり着いた桜島。 で・でかい!
いや、もっと小さな島と山を想像していたの。だけどそこは港まで有る大きな島で、火山も大きい。

山の手前の見学センターでヒト観察し、その先の道の駅まで行って腹ごしらえ。そこで仕入れた道路情報を元に坂を上った先に有る見学場へ向かう。 ん? 道になにか粉っぽいものが? 以前の噴火の名残? こりゃー帰りのダウンヒルがこわいぞーと注意して登った先の土産物屋で現地の人の話を聞いたら「一昨日南岳が噴火した」とのこと。。。。 活火山を実感!

15時近くになったので、オフ会会場へ進路をとる。
どうせ一本道、と高をくくっていたらそれがとんでもない事だった。道はどんどん分岐するわ、行く先案内の地名は解らないわ、で、あちこちで地図とにらめっこの行程となった。
なんとか約束の時間前に第一集合場所の見学場へたどり着くとオフ会のメンツが2人。こんども向こうから見つけてもらって声をかけてもらった。表明していた『背中にドクロの革ジャン』の効果絶大!

車に便乗させてもらい、今夜の”打ち上げ祈念オフ会”場所=”網元”へ向かう。
いやー!すっげぇ旨い刺身と料理と伊勢エビ!だったー。 身を喰った後の海老殻出汁で作ったみそ汁ぶっかけご飯の旨かったことー! 3時間喰って騒いで話をしてここは解散。分かれる前に写真撮ってからね。
               

戻った見学場、既に人が大勢いる。まだ22時前だよ。

とりあえず場所取りし、カメラを用意し事前準備をする。その間にもどんどん車が増える。
最初は警備員もいないので第1駐車場にみんな入れていたんだが、増えるに従って収集着かなくなったのか第2駐車場への移動お願いが出る。その第2も2時間ほどで埋まり、ちょいと離れた第3駐車場への誘導が始まった。

が、それも一時しのぎ。1時過ぎにはそこも満車となりとうとう路上駐車へと誘導が切り替わる。
そしてその路上の列が3.5Km!まで延びたところで『もう停められませーん、引き返してくださーい』のアナウンス。
  (事前情報では4時頃から混み有う、ってことだったけど、1時過ぎには一杯で3時過ぎには停める場所が完全に無くなった)

いったい何人集まっているんだ? そう、見学場の有る丘の上は立錐の余地なし。隣とは肩ふれあってるし、三脚の足は絡まって’原生林’と化している。階段下のトイレへ行くのにも大騒動。
このとき一番前に”三脚を立ち位置にセット”している方が居たのでちょいとお願いに行く。「こんばんわー。あのーすいません、一番前で立たれると後ろもみんな立たなきゃならなくなるので、少し下げてくださいませんか」と。人の多さをみて納得して貰えたらしい。せっかくみんな遠いところから来て居るんだから譲り合わなきゃね。子供もいっぱいいるし。

地元の方がカップ麺とジュース販売の屋台を出したがあっという間に売り切れ。4000人くらいいるのかな?
正式情報は無いけれど、あちこち合わせると全部で10,000人以上いたらしい!

深夜になったころ、結構強い北風が吹いてきていた。ちょっと心配。

2006/9/23
午前3時、いよいよM−Vが整備棟から姿を現した。
大きな扉が開かれ、だんだんと姿を見せるM−V7号機(このとき俺の頭の中ではサンダーバードのテーマが流れていた)。
完全に姿を現し、仰角が付けられて行くのを見てかんどーーーー! 射点が見える所までたどり着けてほんとうに良かったと実感!。 
その仰角、風速が変わってゆくのにともない”78度、80度、82度、83度、82度”と変化してゆく。’その瞬間’には何度になっているのだろう?



と、4時ごろ、ぽつりと顔に冷たいものが!。 げー! 雨ーー! M−V、雨に弱いって聞いてるけど大丈夫かー?
ロケットも心配だが、自分のカメラもヤバイのでビニールをかぶせて雨宿り。

6時を回り、雨も風もやみ、あとは打ち上げを迎えるだけ。
俺の観測スタイルはこのときまでは目視+三脚に乗せたカメラでの適当な手動追尾だったんだけど、人の多さと「カメラに気を取られてはいけない!」ってんで『額カメラ』に変更。そう、おでこにカメラを密着させ、視線と連動させようっていう魂胆。何度も練習し、視野と写野をなんとか合わせることに成功。よし!これで行くぞ!

6時35分
いよいよ打ち上げ直前!
が、深夜にはいろいろアナウンスが流れていたスピーカーは沈黙。。。。 本当はカウントダウンが流れているはずだったが、この大詰めでトラブったらしい・・・・!

が!救いは700m向こうからやってきた! 報道陣用見学場からかすかに流れてくるアナウンス==2秒遅れ。
みんな静まりかえってその音に聞き耳を立てている。

そうして迎えた6:36
いきなり赤い炎が吹き出し、天空へ登ってゆく長い炎! 10秒ほど遅れて届く轟音にエクスタシー!

瞬間!  15秒後


低い雲が有るので第一段分離は見ることはできなかったが、40秒ほど見えていたらしい。 感覚では15秒も無い感じ。固体ロケットの早さを実感。 

今回の打ち上げは衛星を「極軌道」に乗せるので”南”へ発射した。だから頭のすぐ上をロケットは飛んでいった。
雲の上へ延びてゆく’光’と、雲の上から降ってくる’音’。
そうだ!この光と音のために俺はここにいるんだ!


朝日に負けない光! ”ごー”でも”どー”でも無い音! バリバリバリ!と天空を切り裂く音! 最先端技術の光と音のはずなのに、俺の原始のところに響いてくるそれ! ロックだ!!!!


これは確かにスゴイ! 確かにはまる!
ずーと登ってゆく光を見てみたい、闇夜を切り裂く光を見てみたい!やばいなーーー。

打ち上がってちょっとたつと帰り渋滞が始まったけど、時間に余裕が有る人たちで集まって感想を言い合って記念撮影。
北海道から地元九州まで、日本全国から集まった志をひとつにした人たち。
楽しい時間を過ごさせていただきました。みんな、ありがとう!

遠くの発射台を背景に

これで本目的は達成。
が、これで終わりにする俺達ではなかった。
「資料館いってみない? まだ開いてないだろうけど(このとき時間は8時すぎ)」で決まり。

あれ? 資料館もう開いている。早速見学。 はい、ペンシルから隼までみてまいりました。

そして外へ出てみると「おやぁ? 射点へゆく道のゲートが開いてるよ?」 早速聞いてみた 行けますよ の答え。
ゆくっきゃないよね!

坂をバイクでずーと降りてたどり着いた「射点」!
すごい! 今付いたばかりのすす! 吹き飛ばされたフェンス! 熱気まで残っていそうだ! はい、写真をとりまくりました。
(この”フェンス”は南向き=極軌道で打ち出すと必ず壊れるそうです。ごついフェンス作るより毎回直した方が安いらしい)
フェンス内側にいた方ともいろいろな話しできたし、ここまで一般国民に見せてくれる元「ISAS」ってすごいなー。
最後の最後に行ってよかったー!!!
    爆風! 確かにそこにいたんだ!



                              ツーリング記へ続く