第十三話〜早朝決戦!
キースのポエム放送に大揺れの箱船高校!〜
「あいつが帰ってきたって!」「げっ、じゃ、やるのかなアレ」
「やるだろ?なんてったってあいつなんだから!」
翌日の箱船高校では三年生を中心に大騒ぎであった。あいつ・・・彼の名はキース、先日バーンと痴話喧嘩をしていた、彼である。前日に生徒会の幹部連中全員に連絡を回し、裏の実力者として返り咲いたらしい。廊下には既に彼のポスターが貼られて、その幾枚かはすでにファン(一部男性)によって剥ぎ取られていた。
上級生達が騒ぎ立つ中、二年生以下は訳が分からず、とりあえず飛んでもない人が復帰したと言う事だけは分かっていた。前日期せず遭遇してしまったエミリオはもう二度と逢いたく無いと思っていたのだが。
ホームルームの始まる五分前、突如放送のチャイムが鳴り響く。
「おはよう、諸君。生徒会総帥のキース・エヴァンスだ。」
各教室がシーンと静まり返った。噂の総帥だ。
「二年生、一年生の諸君は御存知無いかもしれないが、この時間帯は生徒会主催で送る特別番組の時間帯なのだ。私が居ない間途絶えていたようだが、今日からまた復帰する事になった。よろしく御静聴願いたい。」
一年、二年はざわめき始めていた。生徒会が何の放送だろう?以前の恐慌政治の噂を聞いている者達は不安がっていた。しかし、三年の教室では笑いをかみ殺す声が聞こえる。
「では始めよう、『朝のポエム』の時間だ。」
三年を中心に箱船高校が爆笑の渦に包まれた。さすがのエミリオもこの時ばかりは頭を抱えていた。既に隣りの席を作ってもらっているせつなだけが大人しく放送に耳を傾けている。キースはまさか笑われているとは思わず、「スイミー」を朗読しはじめた。その読みっぷりは森本レオをも陵駕するものが有ったが、その真剣さが笑いを誘っていた。
しかし、スイミーが寂しかったり苦しかったりしている段になると、突然扉を開ける音がスピーカーから響いた。
「待て!訳の分からん奴は全て斬る!」
「何だ君は、私と生徒諸君との甘く切ない時間を邪魔するとは!」
一緒にするな、と生徒諸君は思った。新たに入ってきた声の主はマイトである。至福の時に中断を余儀なくされたキースはさすがに怒っている。
「生徒会書記にして不良殲滅委員委員長! マイトだ!」
「不良殲滅委員?生徒会書記だと?君など私は知らぬが・・・?」
「当然だ!!オレが作ったんだからな!」
「生徒会を語るとは・・・許さん!」
どうやらマイトは“自称”生徒会書記だったらしい。そう言えば一年で書記になれる訳が無い。放送室からは乱闘の音が繰り広げられ、それが逐一スピーカーに流れている。が、
「今から、『パティーの歌』の時間を放送します☆」
どうやらもう1人乱入者が現われたようだ。キースとマイトの声も一瞬鎮まる。
「一曲目、奥村チヨで「恋の奴隷」」
「ちょっと待て、朝からそんな不謹慎な曲を!」
慌てるキースを余所に、パティは自分で歌い出す。当然マイトも慌て始める。それが全部、放送されているから堪らない。バーンもウェンディーも頭を抱える一方であった。
ちなみに、エミリオ&せつなは就眠中。カルロが叩き起こす事になるのだが、それまた、次回のお話し。