第十六話〜不幸?鈴木正人(仮)!
“すずき まさとかっこかりかっことじ”の秘密!?〜


「ふっ、私の身を守るために下敷きになるとはなかなか見上げた奴。しかし、この私の全てはバーンの物。今更君に振り向く訳には行かない。さらばだっ。」

 気絶した鈴木正人(仮)に訳の分からない講釈をたれ、いそいそとその場から立ち去るキース・エヴァンス。独り取り残された彼はそのまま暫く、微動だに出来なかった。普段なら体育教師の玄真や事務のお姉さんソニア辺りが通りかかっても良いのだがなんせ駐在さんゲイツの事情徴収のため職員室に集められていた。

 剣道顧問、鈴木正人(仮)、すずきまさとかっこかりかっことじ、と読む。父親が名前を決める際、正式の書類に名前の候補を書いたり消したりしていたのが第一の間違いである。とりあえず“正人”で仮決定し、(仮)と書いていたのだが、耄碌したお婆さんがそれを役所へ届けてしまったのだ。カッコが漢字として用いられるかと言う議論まで発展し、結局認められてしまった。不幸中の不幸である。

 彼は変った名前を持つ者の常としていじめの対象に挙げられる事になる。閉じこもりがちな心を、剣道に打ち込む事で精神を鍛えたのだった。が、いかんせんどれだけ強くなろうと“(仮)”は重く圧し掛かって来るのであった。ちなみに彼は、余程変な名前なら裁判所に申し出て変更できる事をまだ知らない。

「あ、僕の可愛いお花さんたちを・・・」

 ようやくゲイツの尋問に解放されたブラドが花壇の整備にやってきた。鈴木正人(仮)が気絶しているんのは事もあろうかブラドの大事なお花畑である。

「……………クックックック、そんな悪い子にはお仕置きが必要だな?」

 説明しよう(するまでも無いか)、二重人格者ブラドはひょんな拍子で温和な性格から快楽殺人者へと変身するのだ。ブラドは鈴木正人(仮)に往復ビンタを張る。無理矢理目を覚まさせようとしているのだ。何故か、気絶した相手では張り合いが無いからだ。気が付いた鈴木正人(仮)は自分の置かれている状況をブラドの血走った瞳で気が付いた。

「人の血を吸うとよぉ、花の色が格段に良くなるんだぜ〜ぇ。」

 人間の身体には植物の養分となる窒素も燐もカリウムも全部揃っている。これ以上の肥料はないわけだが、我が身を学校の花壇に捧げようと言う酔狂な者はまず居ない。鈴木正人(仮)氏も若い命をここで捨て、肥やしになる気は毛頭ない。

「待て!ブラド!!」

「あ、ゲイツさん、カルロさんもお揃いでどうしました?」

 急に声をかけられて、素に戻るブラド。カルロがゲイツをつれてやってきた。鈴木正人(仮)、九死に一生を得たと思った。

「コイツです。コイツが火薬の量を間違えたのです。」

「ターゲット補足、直ちに連行する。」

 カルロから指差される鈴木正人(仮)、有無を言わさず腕を引っ張るゲイツ。どうも先程の爆発の容疑者に仕立て上げられたらしい!散々抵抗するが、ゲイツの力に敵うはずが無い。

「また、何かの容疑が掛かったのですか?どうしてあんなに疑われるのでしょうね?」

「さぁ、何故でしょうね。」

 人を疑う事の知らないブラドは、人を陥れる事に長けたカルロにまんまと騙されてしまった。その日の剣道部は顧問が現われないので、マイトとパティの痴話喧嘩で時間が潰れたそうだ。


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