第三十三話〜激戦!
カルロの隠し玉に驚愕する三人、そしてまた一人の漢が・・・〜


 エミリオは色々考えながら、とはいってもカルロをシバき上げる方法であるが、 ウェンディーと一緒に登校していた。彼女はといえば、彼がまさかバーンと 似たり寄ったりな事を考えているとは思わないものだから、 深刻な表情で言葉少ないエミリオが、いつも以上に頼もしく見えた。

 自分が庇ってきた少年の成長に、彼女は少しだけ戸惑いを感じていた。 ついこの間まで子供子供していたのに、いつのまにか凛々しさが、精悍さが増して 男らしい横顔を見せていた。そう意識しはじめると、彼女は少し、目のやり場に困った。

 が、それも長くは続かない。 学校に近づくにつれ、朝だというのに妙に騒がしいことに二人は気が付く。
 生徒達のささやき声、悲鳴、どたどたと逃げ戸惑う足音。 バーンの怒声が響き、そして爆発音まで聞こえてくる! エミリオは滅多に無い事だが、校門まで駆け出した。

「・・・カルロ!!!」

 エミリオの目に飛び込んできたのは、以前せつなが破壊したのと ほぼ同じながらもゾンビのように不気味な灰色の機体のアルファだった。 そしてその後ろで不敵にカルロが控えている。

「はっはっはっは!お待ちしてましたよ!!」

 息を切らせつつ、必死でアルファと戦っているのは、 一足先に学校に来ていたバーンであった。泥塗れになった彼の服が、 戦闘の激しさを物語っていた。

「バーン!!」

 エミリオよりも遅れて事態を把握したウェンディーが、思わず駆け寄ろうとする。

「来るな、ウェンディー!!」

 バーンの一瞬の隙を、無慈悲に放たれるパンチが突く。 が、彼が間髪で避けると、行き場をなくした鋼鉄の腕が砂埃を上げた。

「ちッ!」

 舌打ちするカルロ、バーンは本気の顔になる。

「マジで行かなきゃヤバいぜ・・・」

 バーンはアルファに向かってダッシュする。それを迎墜しようと アルファは身構えるが、とっさの所でバーンは身を反らす。 どれだけの火力を誇っても所詮鉄の塊、身軽なバーンのスピードに付いていけない。

 と、バーンの力が凝縮し、巨大な火の玉となって放たれた! バーンの能力は炎、さすがに連発できるほど自分の能力に慣れてはないが、 喧嘩の数では負けてはいない。

 しかし、反応の速さは機械の方が上だ。 アルファの動きは重鈍であるが、確実に火炎の軌跡から外れようとする。 まぁ、真っ直ぐ飛んでるだけだもんな、とエミリオは冷静に判断していた。 と、その瞬間!

「風よ、力を!!」

 後方からウェンディーの叫び声があがった! ごうと言う音と共に台風を思わせる疾風が校庭を舐めていく。 アルファはよろめいた弾みに風に煽られた看板に当たり、 バーンの放った火炎が避けられなかった。直撃した火炎は彼の身体を包み、 オイルを焦がしながら燃え上がる。

「うっ・・・ウェンディー・・・」

「あー!!!バーンごめん!!!」

 バーンの頭にはカボチャが命中していた。 後ろから飛んできたので避けきれなかったのだ、頭を抱えるバーン。 エミリオは当然のように全部避けた。

「おや、貴女も能力を・・・やはり、彼では役不足でしたね。」

 が、炎の中崩れ落ちるアルファを見ても、カルロはぜんぜん堪えてない。 灰色アルファが破壊される事は計算の内とでも言いたそうだ。 自分の能力に自信があるのだろうか?
 パチン、カルロが指を鳴らした。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ!突如プールの方で大きな機械音が響く。 コンクリートがずれていき、水が引く音がする。プールの奥底から何かが競り上がる。
 巨大なアルファがそこ出現した。

「・・・真・アルファです!!!」

 恍惚とした表情で天に向かって叫ぶカルロ、それは自らが神に成ったという実感、 新たな命の創造者になった者の表情であった。もちろん、まっどさいえんてぃすとの 危ない表情に他ならない。バーンもウェンディーもエミリオも言葉を失った。

「・・・何処から機材手に入れたんだ?」

 ぼそりと、エミリオが突っ込む。

 が、その瞬間轟音を挙げて飛んできた巨大アルファの拳が 茫然自失していたバーンをひょいと掴み上げ、そして悠々と元の場所に収まった。

「しまった!」

「私はまどろっこしい事は嫌いですからね・・・バーン君の身柄は拘束させて頂ますよ。」

 エミリオが身構えるが、にやにやと笑うカルロ。 人質を取られた以上、下手な真似は出来ない。ウェンディーの瞳に ぼろぼろと涙が溜まっていった。

「フリーズ!そこまでだ!!」

 ざざざざざざっ!騒ぎを聞きつけたのだろう。ゲイツが自転車で駆けつけた。 が、自分の写し身に見下ろされて、さすがの彼も肝を冷やす。鉄の塊は無慈悲にも狙いを定めた。  ズズズズズズズズン!

 真・アルファから巨大な鉄の弾丸が校庭を穿った。ゲイツは命中は免れたもののその勢いに吹き飛ばされた。 当たってしまえば肉の破片と成るに相違無い。エミリオも足が竦んでしまう、その破壊力。

「小賢しい・・・人間ふぜいに何が出来ます?」

 カルロは更に、自分の創った力に酔いしれていた。




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