第三十四話〜機械の力?
絶体絶命のゲイツに奇跡が!?〜


 生徒達が踏み固めたグランドが、こんなにやすやすと抉れる物だろうか。 毎朝毎晩の登下校、体育の時間の運動、クラブの活動等によって 何万ともいう人間が踏みしめてきた大地。まさか揺るぐ事など思っても無かったもの。 それが全く簡単に、無残な傷痕を見せていた。

 高らかに笑うカルロを凝視しながら、エミリオもウェンディーも、言葉を失っていた。 クレーターの直ぐ側にゲイツが血まみれで倒れていた。 人間、血を見ると現実の物とは思えない気になってしまう。 人間の身体など非常にもろい、普段ならそんな事は考えないのだ。

 しかし、その結果が目の前にある。残酷な現実。 原因を作ったカルロは全く意に介してないようだ。 人の心を忘れてしまった彼は、今起こった結果のみを喜んでいる。 その破壊力を、その力の大きだを。

 ゲイツは、体中に走る痛みより、自分の体が動かない事に焦りを感じていた。 血が流れ出している事を自ら感じつつも、意識が薄れつつある感じをなんとなく受け入れていた。

「オレは・・・負けたのか?」

 彼の頭の中で、初めて拳銃を触ったときの事を思い出していた。 ずっしりと、金属としての重みだけでなく、 武器としての重みを感じた。あの時はコルトガバメントだったが、 初めて安全装置を外したときの興奮、そして的をしっかりと狙ったにもかかわらず 意外なほど強い反動で撃ち抜けなかった感触は、今でもしっかりと思い出せた。

「ティーナ・・・シェリル・・・」

 妻と、娘の名を呟いた。 喉を震わせることなく、声にならない息が吐き出されただけである事すら 今の彼にはわからなくなっていた。思い出だけが去来する、軽い痺れ。

 これが死か?ゲイツは薄っすらと、今から自分に起きる事を感じ取った。 しかし、一人の少年の声をゲイツははっきりと聞き取った。

「カルロ!!!!!!!」

 憤りの叫びを上げるエミリオ。握りこぶしを大きく振り上げた。
軽くあしらうような表情のカルロは、一瞬のあと驚愕に変わった。
 ・・・エミリオから発せられた閃光が辺りを包んだのだ!!

 ぎゅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!

 光に触れたゾンビアルファの焼け焦げた破片が、 金属の光沢を取り戻して倒れたゲイツの方へと飛んでいく。 光の中心となったゲイツの体はゆっくりと立ち上がった。

 そこには、アルファの装甲をまとったゲイツが存在していた。 腕部と足部は鉛色の、そして胸部には茶色のボディが光る。 そしてサングラスから不敵な光がこぼれている。
 せつなが居ればさぞや喜んだだろうシーンだ。

「なっ・・・貴様も?!」

「ターゲット確認・・・消去する。」

 焦るカルロに低く呟くゲイツ。

 ずががががががが!

 間髪おかず、再びアルファから弾丸が飛び出してきた。 しかしゲイツはそれをあっさりと避けてかわしていく。 速い、、全く持って速い。今までのカルロお手製のメカとは比べ物にならない。

 ゲイツの腕部の装甲が、ロケットパンチさながら飛び出した。 アルファの技ではあるが、破壊力が違う。それは巨大アルファの腕を難なく打ち砕いた。 破壊したのはバーンが握られていた腕である。落ちて行く軽トラック程もある腕を、ゲイツはやすやすと受け止めた。

「いてててて・・・」

「バーン!!」

 駆け寄るウェンディー、バーンは握られた拳から開放された。

「・・・なんでいきなり、自分の力を操れるんだよ?」

「ワタシは機械ではない、人間だ。」

 エミリオの突っ込みに、訳の分からないセリフで返すゲイツ。
 彼も、能力が発現している事をエミリオは悟った。 ゲイツは彼らにかまわず、膨大な電撃をアルファに浴びせ掛けた。 轟音を立てながら、あっさりと巨大メカは崩れ落ちて行く。

「ターゲット、デリーテッド」

 キャシャーン、ポーズを取るゲイツ、するとまとっていた装甲は光とともに消えていった。 そして力を使い果たしたゲイツも、バタリとその場に倒れてしまった。

「チッ、ここはひとまず引きます。さようなら。」

 バーン達が睨み付けているのでカルロはかき消すように逃げ去った。
エミリオはゆっくりとゲイツの方に歩み寄る。

「・・・脈はあるから・・・多分おっさん大丈夫だろうな。」

 傭兵ガデスに仕込まれて、脈の取り方ぐらいはエミリオは熟知している。
とりあえず、カルロを追うしかないな。バーンの介抱をしているウェンディーを 横目で見ながら、エミリオは次の事を考えていた。




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