第四十四話〜ブチ切れ!?
赤エミの爆弾発言が危険な導火線となって・・・〜


「痛っ・・・あんな青いのに負けるとは・・・」

「青くて悪かったな、赤いの。」

 目覚めて一言目の台詞でキースに喧嘩を売るエミリオ、平然と返すキース。 それでも目は笑っていない。そんなキースを真正面に認め、縛られ吊るされていると言うのにエミリオはこれまた平然としている。 紅の瞳が、キースをじろじろと観察を始めた。沈黙するキースを余所に再び、口を開く。

「・・・クリームソーダに似てるよな。」

「失敬だぞ、このクリスマスカラー!」

 場を察したマイトが語気が荒くなったキースを椅子ごと引き離した。 せつなも椅子に引きずられている。エミリオは蓑虫よろしく、呑気にぶらぶら揺れている。

「エミリオさんの破壊の相が顕在しているのです。 抑圧された心の奥底で眠っていた悪魔、それが今の彼です。」

「・・・そうか、普段エミリオは僕をそんな風に思っているのか。」

 栞が注をいれるが、キースは静かに怒ってる。が、 他の連中は赤エミの表現が言い得て妙だと感心していることを知らない。 ただ、エミリオの下で芋虫にされているバーンだけが、 キースがいつ切れるか心配になり始めていた。 キースが切れるとロクな事にならないのを知るのは彼だけだ。

「彼は心の一部に過ぎません。それも本体と分離していますから今の彼は彼として独立して発言しています。」

「じゃあ何だ、もう一人の・・・本体の方とは別物ってわけか?」

「物呼ばわりするなよ、筋肉ダルマ。」

「楽しませてくれるなぁ!」

 エミリオの突っ込みに、ぶんぶん腕を振りはじめたガデス。 口ではそうは言うものの、その態度でかなりむかついている事が分かる。

「命は繋がっていると思われますわ。」

「と言うことは、万一の場合は・・・」

「そっ、それは行けません!殺生は禁じられています。」

 ガデスが育ての親であるにも関わらず危ない事を言うのを栞が押し止める。

「良い所あるじゃねーか、胸はないのに。」

「でも、万一の際は仕方ありませんね。」

 転じてうすた京介系の瞳の発光を起こす栞。彼女にも触れられてはならない事がある。 それに対して、うへへ、そんな感じでへらへらしているエミリオ。 悪ブラドとはまた違ったアブなさ加減を散々発している。 マイトは気圧されて、黙り込んでいた。彼が何か喋ったら、 それこそ立ち直れないほどの罵詈雑言を浴びせられていただろう。

 誰もが彼に注目していたその隙に、 バーンはせつなに目配せをし、縄を解いて貰おうとしていた。 しかし、例によってせつなの小さな頭ではその意図を把握するのは難しい。 とりあえず、しっぽを振りながら駆け寄ってみる。

「お前、いやエミリオ。もう1人のお前の居場所、分かるか?」

 せつなのバレバレな動きを気にしながら、ガデスが問い掛けてみる。

「せっかく外に出られたんだ。奴のことなんか知らないね。 喩え知ってても、野郎には教えないさ。あははははははっ!」

「貴方が協力してくれないと、この世界が・・・」

「どうせみんな死んじゃうんだ、あははははははははははははははっ!」

 栞が続けるが、ああ言えばこう言うエミリオには分が悪い様だ。

「第一、貴様みたいなガキは女として認めないぜ。」

「やっぱり、殺っちゃいましょう。」

 栞の台詞にキースが後ろで肯いている。ガデスは、女だったら言うことを聞くのか? と、本気で考え始めていた。親代わりとして、子供が色気付いた事に対して複雑な心情なのかもしれない。 と、思い出したように、ベッドで寝ているソニアが叫び声をあげた。

「あアあああッんっ!! キィス様ァぁんンっ!!!」

 寝言で嬌声を上げるソニア。どんな夢を見ている事やら。 真っ赤になるマイトだったが、他の人物たちはそれ所ではない。 そういえば、コイツが居たな、ぐらいしかガデスも考えていない。 多分起こしても話がややこしくなるだけだろう。 キースも平然としている。何故か余裕の表情だ。 当のエミリオはちょっと引き気味だ。

「ふぅ、危なかったぜ。」

 そうこうやっているうちに、バーンの猿轡はせつなによって外されてしまった。 ちょっと息が苦しかったのは秘密だ。 彼の口を覆っていた猿轡は何時の間にかせつなに絡み付いて居る。 苦しそうなせつな。

「なにかモゾモゾしてると思ったら。コウテイペンギンじゃないか。」

「何だこの野郎!!!!」

 バーンのモゾモゾ度がアップする。と言うか、ウェンディーに何かあったときぐらい ブチ切れた状態だ。キースだけが今の彼の怖さを知っている。 今彼が自由だったら、多分猛火の如く怒り狂い、エミリオはサンドバックよろしく ラッシュの嵐に巻き込まれて居ただろう。 が、縛られている悲しさか。バーンは能力を使うことすら出来ない。 まぁ彼の場合、頭に血が上って能力なんぞ忘れている可能性が高いが。

「煩い!おねえちゃんは僕のものだ!! 貴様なんかに渡さん!!」

 エミリオがマジ切れして大声を張り上げた。その刹那、 モゾモゾしているのが、絡まったせつなだけになっていた。 そしてガデスは、「やっぱり」と言う顔で頷く。そしてこれから修羅場が 展開されそうな予感に、ふうと、溜息を吐くのであった。


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