第四十八話〜真実!?
秘密のヴェールに触れた手は果たして・・・
「これじゃな・・・おお、確かに彼奴に相異ない。」「ソニアをこんな風にしたのは、奴の仕業だったという事か。」
いいえ、ソニアを恋する乙女にしたのは貴方、キース様です。
と、場違いな事を考えているソニア。もちろん、今はそういう話をしているのではない。 ウォンの正体探しをしているのだ。箱船高校事務室、ソニアの仕事場でもあるわけだが運良くここも破壊されずに済んでいた。 玄信を連れて栞が帰ってくるのを待ち、保健室から移動した彼らは資料を探していた。 ソニアを送ってきた大学関係者を当たっていたのだ。
ソニアが口走った眼鏡魔人、もとい、“あなたも”と言う言葉がキースの直感をプッシュした。 ソニアが帯電体質となってしまった原因である大学の事故、 それに関わった一人の書類が見付かった。名は“皇飛晃”とあるが、 写真の欄にあるその姿、目の細さは紛れも無く“W”。
「!! ・・・ライア・・・むぐっ!?」
「それは秘密です。絶対口外してはなりません!」
書類を覗き込んだバーンが叫びかけるのを栞が小声で制した。 ソニアがウェンディーの姉、クリスである事は箱船高校のトップシークレットの一つである。 ちなみにバーンは縛めを解かれているが、エミリオは縛られっぱなし、 縄の端はせつなが握っている。
「奴はラーメン屋だけでなく、大学教授までやっていたのか!!」
「君の存在が初めて役に立ったな。」
折角自分らしく決めたと思ったのに、エミリオの言葉に返す言葉が無い。 しかも、それは事実だった。嘘の付けない彼はいつのまにか部屋の隅で体育座りをしている。不幸なマイト。
「・・・くそっ、ガデスはこんな時に何をしているのだ!」
憎々しげにキースが舌打ちするが、それは君らがダベリ過ぎたから。
ガデスがいればサクサク謎は解けたのかもしれない。が、 エミリオが全く役に立たないのでせつなしか情報を知る者は居ない。 実は今し方せつなをたたき起こして、バーンとキースが何とか話を引き出していた。 が、その過程は恐ろしく長くなるので省略。 外は夕日もすっかり落ちて街灯がほんのりと空を照らしている。
「『魔法の国』と言うのも、眉唾かもしれませぬの。」
「爺さんの眉に唾塗ってたら、日が暮れそうだね。」
玄信がむちゃくちゃ恐い顔でエミリオを睨む。 エミリオは全く意に介さないが、せつなが涙目になってしまっている。
「意外と、せつなも物体転送装置のミスで犬と混ざったとかな。」
そのネタはカルロが既にやっている事をバーンが知る由も無い。 が、キースは何か思い付いたらしい。腕を組んで考え込んでしまった。
「物質転換・・・時空・・・異次元・・・」
「おいおい、なんかカルロみたいな事言って大丈夫か?」
再度確認するが、カルロみたいな事を言ったのはバーンである。 キースは暫く考えた後、真剣な顔で栞に向かった。 その瞬間ソニアの表情が険しくなる。まさかっ!キース様、私はもう飽きたとおっしゃるのですか!? 私はもうおばあちゃんで、若い方がいいとおっしゃるのですか!? 言うまでもないが、“若すぎる”と言う概念は彼女にはない。
「ベルフロンド兄妹がここに赴任したのは、いつだったかな?」
「カルロさんが二年前、レジーナさんは今年度。お二人とも大学を出て直ぐです。」
「ソニアは? それより前だと記憶するが。」
「ええっと、三年程前です。ブラドさんと同じです。」
「ソニアって、俺達が一戦やらかす前には居たよな?」
「はい・・・あのその・・・」
その頃からキース様をお慕い申し上げておりました。 と彼女は言おうとしたが途中で言葉が切れてしまう。 二人の仲は周知の事実だと思い込んでしまっているから恐い。 もちろん、そんな事は聞いてはいないのだが。
「まさか、二年前のあの事故に奴は関わってまいな?」
くるりと今度は、バーンの方へ向くキース。 二年前の事故。箱船高校謎の爆発、バーンが重傷を負ったあの事故である。
「・・・」
そうなのね、私よりバーンの方が良いのね・・・
次はバーンに嫉妬を始めたソニア。直ぐに以前の事を忘れてしまうのは 彼女にとってやはり良い事なのかもしれない。 ただ、ここにいる全員が唯でさえ影の薄いマイトが 自閉症モードに移行している事には気が付きもしなかった。