第四話〜登校する羽根付きエミリオ!
辻斬りストーカー、マイトの魔手を逃げ切れるか?!〜
「どうせみんな死んじゃうんだ・・・」凄まじくイッちゃってる目で登校中のエミリオ=ミハイロフ、16歳。全ては今朝確認した羽根にある。半透明とは言え両手広げたよりもやや大きな翼はさすがに目立つ。物理的肉体的に羽が生えたのならば(と言う事も無いだろうが)適当に布でも付けて(かなり目立つが)隠す事も出来ただろうが、エミリオのサイキックエネルギーが可視化したものであるので幽霊の如く物を突き抜けてしまう。
で、一悶着の挙げ句、結局の所そのままで行く事にした。ブチ切れての決断、要するに開き直りである。せつなを連れて行く事をどうしようか、そんな事など羽根の問題を考えれば無視出来る事であった。そこに気が付かなかったのも、謎の中国人“W”の毒気があまりに酷かったからである。
「くくくくく・・・・はーっはっはっはっは!」
通りで笑いを振り撒くエミリオ君。切れ過ぎて、どうやらドーパミンとかエンドルフィンとか、そこら辺がバシバシ出てるらしく、却って清々しさを感じているようだ。端から見るとアブナイヒト以外の何者でもない・・・と言うか、アブナイ。
「はっはっは、くずがぁ!」
脈絡無く問題発言をするせつな、狂気じみたエミリオの眼光が彼を射抜くが意に介さない。先程からちょこまかしてたのだが、ハイになってたエミリオ君には気が付かなかったようだ。
「このかしこいおれさまにはおまえのかんがえなどおみとおしだ!がっこうにいきたくないのだなっ。」
舌足らずなんで台詞に時間が掛るが、びししっ、とかなり大袈裟なポーズを取る。その自信に溢れた笑顔は無茶苦茶機嫌の悪いエミリオの前では非常に危険だというのに。しかしそれでも、せつなは自信たっぷりである。
「くっくっく、このおれさまがなんとかしてやろう!」
言うが速いかせつなが両腕を前で交差させる、そこには強力な“力場”が現われる!
「こいつをうちこめば、がっこうのひとつやふたつぅ!」
濃縮する“力場”が放たれる前に彼の脳天に垂直に、エミリオの拳が叩き込まれる。
「むぎゅ」
くしゃ♪と言う感じで潰れるせつな、と言うか、まだ学校見えてないけどさ・・・良いんだけどね。
その時、通りの角から一人の少年が飛び出す!「エミリオ!この前の勝負、まだついちゃいないぞ!!」
木刀が一閃する、反射的にエミリオはせつなの首筋を掴んでその軌跡に差し出す。
ごちっ!
「ぺた、きゅ〜〜(@@)」
頭に大きなこぶ(何故か十字に絆創膏が貼られている)が出来てふらつくせつな。エミリオはすっ・・・と、臨戦態勢に入る。その見やる先には赤毛の、やたらとゴテゴテした衣装の優男が立っている。
「不良生徒は全て斬る!」
大見得を切る青年、彼こそは私立箱船高等学校一年生筆頭、もとい、生徒会書記にして不良殲滅委員委員長、マイト君である。諸般の事情で、彼の名字は箱船高校七不思議の一つに数え上げられている。ちなみに趣味は不良狩り、エミリオは未だに狩れてないターゲットの1人である。
マイトはせつなを無視したままエミリオにガンを飛ばす。エミリオは無表情なまま睨み付ける。せつなはまだ殴られたショックでふらふらしている。
「僕は今凄く機嫌が悪い、怪我をしないうちに失せな。」
「何を!今日こそは貴様を狩る!」
ばさっ・・・エミリオの怒りが羽根に現われた、大きくはためく。
「なんだその羽根はーっ!!」
“がびーん!”と言う表現が全く持って合うリアクション!翼の存在に初めて気がついたマイトは今更のように驚いた、そりゃ驚くわな。
羽根のことを指摘され、エミリオの感情は更に昂ぶる。ばさっ、ばさっ、音はしないが大きく、そして速く羽ばたく。マイトに少しずつ詰め寄るエミリオ、マイトは後ずさる。ばさっ、ばさっ、ばさばさばさっ!!「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
とうとう逃げ出すマイトをエミリオは追う、いや、学校がそっちの方向だもんだから必然的に追う形になっただけだが。しかし、狂乱状態で逃げるマイト、意識を取り戻してとりあえずポーズを決めるせつな。
エミリオに芽生えた嗜虐心は、彼が段々早足に、そして微笑んでいくのを隠せなかった。ポーズを決めて置いていかれたせつな、慌てて2人を追い越して、再びポーズを取った。