第五話〜先生カルロやけっぱち伝説
まっどさいえんちすとにマジカル☆せつなは!〜


 コッ、コッ、廊下に響く神経質そうな靴音。やや早足なそれは一人の好青年の立てるものであった。名はカルロ。カルロ・ベルフロント24歳。青のストライプが主なカジュアル系スーツに身を包んだ生真面目そうな横顔。眼鏡が爽やかに、きらりと光る。

 彼はエミリオのクラスの担任であり学級主任でありエミリオの天敵。二年目の彼が学級主任なのは単に彼の優秀さを証明している。ただ、彼の才知が余りにも秀でているが為他の先生方と折り合い悪いのは否めない。当然、彼自身歯牙にも掛けてないのであるが。
 ガラガラガラーっ、彼はいつものように教室の扉を開けた。

 「はっ、羽根ーっ!!」

 ガビーン!ガビーン!!ガビーン!!!、三段エコーがかかったと思って下さい。
 それまでピリピリしていた他の生徒達はカルロ先生がスケープゴートに成った事でほっと溜め息を吐く。凄く気になっていたエミリオの羽根。そして彼の連れてきた謎の少年。エミリオはプイと反抗的に目を逸らす。ずり落ちそうになる眼鏡をカルロは治しつつ落ち着きを取り戻す。

 「エミリオ、後で指導室に来なさい。」

 「やだ。」

 直立不動の体勢から腕を使って指差すカルロにエミリオは即答する。

 「先生の言う事が・・・何だねキミは。」

 好奇心だけで教壇に近づいて居たせつなをカルロは発見した。何だコイツは・・・小学生のようであり謎のコスチュームを身に纏い、犬の耳と尻尾・・・まるで何処かの研究所から逃げ出してきた様な生き物だ。ひょいと、まるで仔猫の様にせつなを引っつかむカルロ。彼の目はまるで実験動物を見るが如しである。

 「おれさまはマジカル☆せつな!まほうのくにからえみりおをこうせいするためにやってきたのだ!!」

 ポーズを取るせつな。喩えどんな状況下に置かれてもポーズだけは忘れないのが彼の長所である。状況をわきまえないのが短所であるが。

 「魔法の国? 何を非科学的な事を。」

 やれやれとカルロはポーズを取ったままのせつなを見下す。

 「UFOもネッシーも雪男も、アトランティス帝国もノストラダムスの大予言さえ科学で解明出来るのですよ。」

 その喩え、変だ。とクラスの四分の一の生徒が思った。
やっぱりそう来たか、と残りのほとんどは思った。エミリオを含む数名は聴いちゃいなかった。

 「察するに貴方は、物体転送装置のミスで犬と混ざってしまったのでしょう。エミリオ君は鳥ですね。」

 それもかなり非科学的だと、ほとんどの生徒が思った。エミリオを含む数名は聴いちゃいなかった。

 「くくく、まほうをしんじないとはいいどきょうだな。」

 「ほう、何が見せていただけますか?」

 カルロが言うが速いか、せつなは両手を頭上で交差させる。
きゅわーん・・・きゅいーん。無気味な音が唸ったかと思うと突如鏡に閉じ込められるカルロ!生徒達が見守る中刹那はおもむろにポーズを決める!
 ザクッ!何処からとも無く飛んで来た杭がカルロごと鏡を貫く!カルロは鏡からは解放されながらも教室の外へ・・・窓から校庭へと飛び出していった・・・
 沈黙、エミリオはすくっと立ち上がった。ツカツカと教壇へ歩いていき。黒板に一言走り書くと、再び席に戻り椅子に反り返って目を閉じた。

 『自習』




 校庭、朝の晴れやかな空をカルロは1人眺めていた。吹き飛ばされた後動けなかったのだ。身体のダメージは強烈であったが、それよりも心に受けたショックが大きい。自分の知らない力、未知の世界がそこに立ちふさがった。しかし次第にそれは、カルロの知識欲、まっどさいえんちすとの血潮を揺さぶっていった。使える、奴は使える!カルロの顔が笑いに崩れる。

 「次は本気で行きます。」

 一言闘志を燃やすと、胸を張って校舎に戻って行った。まさか全ての教室から全校生徒、先生の注目を集めているとは気がつかなかったが。


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特異効能的理力

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