第九話〜嵐の予感!
そよかぜ娘ウェンディーにエミリオの心はドキドキさ!〜
「エミリオ!今日は何を仕出かしたのよ!!」「げっ・・・おねぇちゃん・・・」
先程までの勢いは何処へやら。奥の間からの帰り道、急に掛けられた女性の声にエミリオは凍り付いた。
「全くもう!奥の間に呼び出されたりして、心配したんだから!」
桃色の髪の毛を三つ編にしたその少女はエミリオの前に仁王立ちになり、少々びくつくエミリオを諭している。
ウェンディー・ライアン、十八歳。エミリオのお隣りのお姉さんである。。しっかり者で気が優しく、それで居て突っ走ると止まらない性格、いつもみんなの人気者である。そして内向的なエミリオをいつも可愛がったり、守ってあげたりしていた。しかし、二歳も違い、彼女が中学を卒業してしまうと、エミリオもそれに呼応するが如く不良の道を突っ走ってしまったのであった。
エミリオとしては、頼りになる、憧れのお姉さん。ずっと自分の事を大切にしてくれて、ずっと彼女を見てきた。それが愛情に替っていったのか自分でも分からない。
当然、彼女はそのことを知らない。知られてしまうと、全て駄目になりそうな気持ち。
そんな切なさを胸に秘めながら黙って居るエミリオ。
「これだよ、これ。何かやった訳じゃないから。」
自分の羽根を忌々しそうに指差す、ウェンディーは目を丸くした。彼としては無駄な心配をしてほしくない、そんな気持ちの方が大きかった。もしかしたらバケモノ呼ばわりされるかも・・・若干の不安もあった。でも、ウェンディーに嘘は付けない。
彼女は俯くエミリオに微笑んでくれた。
「それは、エミリオが良い子だから神様がプレゼントしてくれたんだよ。」
思わず頬が染まりそうになるのを、プイと拗ねる。彼女はそんなエミリオのしぐさを優しく見つめる。
「ところで、この子誰?」
ウェンディーはせつなを指差す。 エミリオの豹変ぶりに、思わず人見知りモードに入っていたせつな。いつものようにうろちょろせず、エミリオの足元から様子を窺っていたのだ。
「マジカル・・・せつな。」
いつもよりちょっと大人しめで、上目でウェンディーを見上げる。そして、ちょこりとお辞儀をする。
「きゃ〜!可愛いぃ〜♪」
せつなに抱き付くウェンディー。実は彼女、可愛いものに目が無い。高い高いをして、頭撫ぜまわす。せつなもあまりに激しく遊ばれるので目が回っている。彼女の胸に抱かれ、キスの嵐が顔をおそった。
げしっ!突如エミリオはせつなを蹴飛ばした。
「なにするのよ!ヒドイじゃない!!」
ケッ、とそっぽを向くエミリオ、先程の素直さは何処へやら、複雑なお年頃なのだ。ウェンディーが散々非難していると言うのに知らん顔を決め込む。せつなはつーっと廊下を滑っていき、通りがかった男の足にぶつかった。
「何だコイツ?」
男はせつなを摘み上げる。エミリオもウェンディーも、声のする方を見やる。
「あ〜ウェンディー、こんな所に居たのか。」
男が声を掛けると、ウェンディーの顔が綻んで朱に染まった。
ピクリと、エミリオの顔が引き攣る。