第壱話〜登場!マジカル刹那!!
不良エミリオを更正するのは君だ!〜
「あのクソ野郎」悪態をつきながらとぼとぼと帰路についているのはエミリオ=ミハイロフ、この物語の主人公である。二年前までは内気な性格で校内切っての虐められっ子であったが、ついに逆切れして、今では手の付けられない極悪不良となっていた。
彼は今日も学級主任のカルロに散々絞られたのを根に持っているのである。「くっくっく、このせつなさまのたすけがひつようなようだな。」
物蔭からがさごと現われる影!
見た所小学生低学年の少年がエミリオの前を立ちふさがった。
その特異なコスチュームが目を引く少年にはハスキー犬を思わせる耳と尻尾がついていた。「誰だテメー。」
ご挨拶程度に足蹴にするエミリオ。ぎゅーっと潰れる少年。ちたぱたともがく姿がエミリオの嗜虐心をくすぐる。しかしそれもすぐ飽きて解放してやった。泣きそうな顔をぬぐう少年。
「おれさまはまじかるせつなっ!まほうのくにからいいことをするためにはけんされたのだっ」
カッコ良くポーズを決める“せつな”、しかし、端から見るとお遊戯である。しかもその内容が滑稽である。しかし、尻尾をぱたぱたさせている所を見ると・・・と、エミリオはとりあえず尻尾をつかんで−せつなは当然逆さまになるが−ホンモノである事を確認した。
せつな君だと長く成ってしまうので端的に説明しよう。彼は魔法の世界の師匠(時使い)から派遣されてきたのだ。良い事をすればちゃんとした“にんげん”に成れるという。
「それで、ひねくれもので、くずなおまえのところにきたのだ。」
「余計なお世話だ、このガキ」
再び踏み潰される刹那。どうやら一言多い性格のようだ。
再び解放されて、また涙をぬぐうとせつなは踏まれた事を忘れたかのように(多分忘れてる)エミリオにポーズを決める。「ふっ、このおれさまのちからをしらないな!」
初めて逢ったのに知るわけが無い、と思った。
「じゃー、何かやってみろよ。」
全く、見下した顔で言う顔のエミリオが見下ろす。
しかしせつなは自信ありげにくくくと笑う。かなり芝居がって微笑ましい。
まぁ、エミリオ君にとってはブチ切れそうになる表情であったが。
せつなは一息呼吸を整えると、めいっぱい大声で叫ぶ!「やみにぃぃぃ そまれぇ!!」
突如、世界が闇に覆われた!しかもせつな君の姿も薄っすらとしか見えない!
「くっくっく、おれさまのすばらしさがわかったかぁ!」
「・・・だから?」
間髪を置かずにエミリオが吐き捨てた。・・・いや、よくよく考えればかーなり役に立ちそうだし、せつなもそれが説明出来れば良かったのだが・・・いかんせん子供である、冷ややかなエミリオの表情を見てパニックに陥ってしまった。
「・・・びえぇぇぇんん!!!!」
泣き出した・・・
当然と言えば当然、恐いお兄ちゃんが怒ってるんだもん。そりゃ泣くわな。
しかし、エミリオとしてはここで蹴りいれても良かったし、そういう性格であった。が、なんとなく、この得体の知れない少年であるが、家に連れてかえる事にした。気が向いたといえばそうであろう。泣いてるせつなの背中を押しながら・・・しかし、それが彼の運命を大きく狂わせていく事をまだ知らない・・・