U South Carolina州
わが国の勤務評定


Shoji Sugita

1. South Carolina州のガイドライン ... TEAM ( Team-Based Evaluation and Assistance Model )
 一般的に正式採用教員の勤務評定は、このTEAMに準じて各地方教委でなされる。 その要点
は次のとおりである。
○ すべての教員は、評定以前に、文書と口頭で評定の手順と結果を、どのように用いるかについ
  て説明を受ける。
○ 教員は、長期のプラン、中間地点での点検、最終段階における点検を評定者とともに実施す
  ること。
○ 評定者は、授業観察 <予告なしに行うものを含むこと>、授業以外の、その教員の活動や専門
  的責任、教室・校舎の管理、学校の改善計画、地方教委の方針に適っているかどうかについて、
  また職業的成長について評定すること。 秋と春の学期ごとに実施すること。

○ 少なくとも 1年間に一つの領域でパスしなければならない。 最長評定猶予期間は 3年である。
○ 評定者は州が実施するトレーニングを修了しなければならない。
○ 予備的な評定会議は、12月の休暇以前に、最終評定会議は、4月 15日までに行うこと。
 そのいずれも、関係教員の件については関係評定者は証拠をもって出席しなければならない。
○ 地方教委は雇用契約更新の有無について、その結果報告をすること。
○ なお、教員本人が到達目標を決め、校長の承認を得て評定を薦める方法を採用することがで
  きる。
しかし、1, 2年目の教員について、要件をやや厳しくしている例がある。 次がそうである。
2. Lexington 第一教委  Rollin W. Mills氏: Coordinator of Employee Assessment and
                  Developmentからの回答によれば
a. 1, 2年目の教員に対しては下記のADEPTによって評定を行います。
○ 3人によるメンバー・チーム。 まず年間プランについて協議する。
○ どの評定者も、少なくとも毎学期、50分は授業観察する。 その間、証拠を残すために必
  ずノートをとる。
○ 2名の評定者が一学期中に、教員と面接する。 他の1名は二学期中に。
○ 次の 10 の領域( dimentions )について評定する。
   ・ 長期の計画   ・ 短期の学習指導計画   ・ 生徒の評価方法と進歩   
   ・ 生徒の学習意欲  ・ それを高めるための指導戦略 ( Instructional Strategies )  
   ・ 生徒に与える課題  ・ 学習およびそれを高めるための調査   ・ 学習環境の調査   
   ・ クラス管理   ・ 授業以外の領域での責任の果たしかた
○ 最終会議は教員本人もいれて行われます。 そこで上述の10のうち 7つ以上パスしていな
  ければなりません。 もしそうでなければ、再雇用しないか、[直し]が勧告されます。
b. 3年以上の教員については、TEAMによって評定を行います。それにパスしなければ年度末
 までに改善しなければなりません。 それに失敗すれば再雇用されないことになります。
3. Richland 第二教委  Margaret W.Walden氏: Instructional Services Coordinatorからも
               次のような回答を得た。
教員の勤務評定には次の二つの方法があります。
@ チームによって評定する方法 ( 註 これは前述の州ガイドラインのTEAMによる意味であろう。)
 3名のメンバーは校長が決めます。 すなわち、校長または校長が指名した者、  
    同じ学年または同じ教科の教員( 多分、他の学校の教員 ),   行政管理職
 そして、この3名は、それぞれ3回、評定し合議で結論を出します。
 また、この評定者は州規程によるトレーニングを受けていなければなりません。
A 他の方法は教員本人に到達目標をきめさせ、同僚教員によって評定される方法です。
  この方法は事前に、その学校の校長の承認を受けていなければなりません。また 6年以上
  の経験のある者に限ります。
   ・ 本人が三つの目標を設定します。   ・ 校長の承認を得ます。   
   ・ 目標が達成された証拠を提出し、それを校長とともに点検(review)します。これも事前に、
    証拠とともにその同僚教員に示し、その提案を得てから最終的に校長へ提出することが
    求められます。
わがRichland 教委は最近、このAの方法を新たに追加・規定しました。
もちろん、その同僚教員も評定の方法についてトレーニングを受けていなければなりません
4. Lexington 第五教委  Valerie Truesdale氏: Instructional Coordinator からの回答
 前述のものと、ほぼ同様であったが、『一人の評定者が評定する人数は、学校の規模によっ
て違います。また新しい教員は、少なくとも年、3回、授業観察と評定者との面接をうけなければ
なりません。 進歩がないとされた領域については、さらに多くの回数、観察をうけなければなり
ません。 経験を積んだ教員は、到達目標をきめさせ、評定回数を少なくすることができます』と
あった。
V その他いくつかの州の特記事項
1. Arizona州
 正式採用教員の勤務評定は、State Code, Title 15, Chapter 15-537 による。 他の州・教委
のものとくらべて特記事項はない。 評定者の認定も州の基準にもとづき統一的におこなわれて
いる。ただ、Felix,Paul氏 Assistant Derector of Human Resources, Tucson Uinfied 教委から
の回答では、『評定者は校長と副校長で、一年間に、それぞれ 20人ほどの教員を評定します 』と
のことであった。
2. Arkansas州
特記事項はない。 ただし、教員の評定のみならず広く州全般の公務員の評定については、
Arkansas Employee Suggestion System Evaluator's Handbook があり、そのなかにEvaluator's
Form ( PDF )で形式が示されている。 しかもそこで評定者に次のような自覚をうながしていること
が興味深い。 すなわち、
 『皆さん評定者は、評定を受ける人を激励し、時には駄目だといい、彼らの提案の価値を認め、
 それらを有効にするための役割ですから、評定を受ける人、皆さん自身、ひいては州の利益に
 なることです 』
3. California州    Education Code: Section 44666-44669による。
 日本的な勤務評定の考え方といえようか。 すなわち、
○ ルールに基づく授業観察や職務を量るシステムは勿論、必要ですが、それには柔軟性がなけ
  ればならない。
○ 教員と校長が教育的チームとして協力しあって、自分達の学校をグループとして効果的な教
  育条件にすることが大切です。 階級的な決定方法Hierarchical decisionmaking は建設的な
  効果を減殺します。もっと協力して意思決定する方法が効果的でしょう。
○ より大きい責任、高いサラリーも必要です。 それは職業に貢献しようとする意欲を高めます。
○ 州議会は学校単位の管理 school-based management project やクラスルーム教員同志の
  プロジェクト classroom teachers project をつくることを促進したい。 また、地方教委や管
  理職はクラスルーム教員や教員組合などと協議し、教員自身の意思決定権を増加するよう
  に議会として図りたい。 このことは、教員の勤務評定の手順についても当てはまります。
○ [不満足]とは、どの程度なのかの数値 についても教員を参加させるようなシステムづくりも
  同様です。
4. Florida州  1999 Florida States, Title 33 Educatin Chapter 5 による。
 州教委がガイドラインをつくるなど、他とほぼ同じ。
5. Idaho州   Idaho Code, Idaho Statues, Title 33 Education Chapter 5, District Trustees
          による。
○ 他と大差はないが、サラリーを減ずる場合でも、いきなりそうするのではなく、一定期間、試験
  的とされることが明記されている。
  このことについては、Bob West氏 ph.D : Chief Deputy Supt.からも回答を得たが内容的には
  同じであった。
6. Indiana州   Indiana Code 20-6, 1-9 による。 他とほぼ同じ。
7. New Jersey州   Union-city, Code: 4115, Supervision and Evaluation of Instructional
             Personnelによる。 他とほぼ同じ。
8. North Carolina州  Comberland 地方教委の場合、GBI -R Evaluation Procedures による。
               他と大差はないが、解雇した場合は、州政府に報告し、州政府は毎年、
              その氏名を公表するとしてい。
 厳しい
          わが国の教員勤務評定
○ 国および都道府県教委が、教員勤務評定のガイドラインを策定されることを期待したい。
○ 評定者は、校長、教頭のみならず、都道府県教委のトレーニングを修了した者もつくる必要
  があろう。しかし、評定者については、さらに検討を要する。
○ 教員本人の自己評定制度を活用されることを強く望みたい。 勿論その計画は事前に校長
  の承認を受け最終的に校長その他、関係者によって点検される必要がある。
○ 同一校における同僚教員( 同じ学年または同じ教科など) を活用する方法もあろう。
○ 教員本人の授業観察、仕事ぶりなどの評価はいうまでもないが、同僚教員との協力、その
  成果などについても評価され、むしろ、それにポイントを多くするような評定制度を望みたい。
○ 給与などに反映されることは当然であるが、余り厳しい、いわゆるメリット・ペイ方式を採ら
  ないほうがよいように思われる。 中間層を非常に厚くした 3段階程度、精々 5段階程度で
  あろうか。
以下、纏めて別稿: 30. 提言 我が国の教員勤務評定で詳述する。

   追記(2006年8月)   なお第188編を参照してください。

  2000年3月記 ..................無断転載禁止