27 アメリカにみる教員の勤務評定
    .... Colorado州の例など...提言わが国の場合

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Shoji Sugita
・U South Carolina州
 V その他の州の特記事項

  提言・わが国の勤務評定制度
● How to evaluate teachers in Japan ?

はじめに
 最近(2000年3月)、わが国においても教員に対する勤務評定の問題は避けて通れない問題
になってきている。勿論、今までも、その勤務評定はなされていたが余り効果的なものではな
かった。 ところが昨年(1999年) 東京都が成績率導入を柱のした新たな勤務評定制度を導入
し、現にボーナスなどに反映させるなどの動きも出てきたし、また[ 教員だけが何故、勤務評
定がなされないのか ]という率直な世間の疑問にも答える必要が強まってきているからである。
 そのさい、評定基準の明確化、公平性、自己申告制を含めて評定の手順、回数、時期、[不
満足]とされた教員に対する再教育など検討課題は多いが、私は評定者( Evaluators )の選定
も重要な事項であると考える。 当面、教頭を第一次、校長を第二次評定者とされることは現
実的な方法であろうが、いずれ、それだけでは公平・客観的な評定を期す上では不十分とされ
よう。
 そこで、わが国の参考に資するために、できるだけ評定者に重点を置きながらアメリカの例を
見ることにする。 資料は各州の規則、地方教委の規則などであるが、杉田の問いにたいして
応じてくれた回答も含まれる。
 いずれも、それらの関係部分の要約である。
 そのうち、Colado州のものが最も参考になるように思われるので、まずそれについて述べ、
以下逐次、South Carolina州などに触れていく。
 なお対象は、いわゆる正式採用教員に限った。それらは、Tenured teachers, Full-time
teachers, Certified teachers, Non-probational teachers, Continuing contract teachers,
Career teachers などと呼ばれているが、正式採用教員といっておこう。
T Colorado州
Colorado州規則 :State Code, Article 9 Certificated Personnel Evaluations
( 1 ) 州議会の宣言
○ わが州においては、教育の質を向上させることは緊急の課題である。 そのためには教員の
 勤務評定は極めて重要であるが、その目的は学習指導力を高め、カリキュラムの実効を促進
 し、教員の職業的資質の向上と発展を図るためである。 州議会は勤務評定制度が健全で信
 用できるものにするためには、評定を受ける者および市民も巻き込む必要があると考える。
( 2 ) 州教委の権限と義務  規則22-9-104
 ○ 州教委はガイドラインをつくり、これを広めるべきである。 また、それらは各地方教委によっ
   て利用される必要がある。 しかも常に弾力性のあるものであることが求められる。
 ○ 州教委はトレーニングを実施し、技術的な援助についてリーダシップをとらななければならない。
 ○ 州の管内の大学と提携し、教員、校長、教育行政職の勤務評定のプログラムをつくる必要が
   ある。 それは勤務評定を徹底したもの、信用できるもの、公平、教育的なものにするためで
   ある。
 ○ 州勤務評定会議(council)とも、よく協議すべきである。
( 3 ) 州勤務評定会議 ( Council )  規則 22-9-105
 ○ 州教委は、勤務評定会議の委員( advisory )を指名する。
 ○ 7名  それらは異なった教育区から選出される。 そのうち 4名は教員、 3名は市民である。
      ディーンを含め、また政党からの人も含める。
( 4 ) 地方教委の責任   規則22-9-106
 ○ 地方教委が教員を採用する。【註 わが国と異なる 】
 ○ 地方教委が、教員、校長、行政管理職の勤務評定規定を作成する義務がある。そのために
   彼ら及び勤務評定会議と協議すべきである。
 ○ 評定者も評定される。
 ○ 評定の期間と回数は、十分な資料が集められるに必要なものであるべきである。 最小限、
   正式採用教員については、毎年 1回、 文書による評定書は3年に 1回。
 ○ [不満足]とされた者は、63条により解雇の手続きがとられる。
 ○ 教委は 標準要件 (standards) と基準 (criteria)を定める。
   その標準要件の一つは、直接の授業観察であり、その他に生徒の学習状況をはかる複数
   の方法である。 基準とは、その標準要件に合致しているかどうかを計る基準のことである。
   また、これらの標準要件と基準は文書で、すべての教員に知らせなければならない。

 ○ 評定者は直接、授業観察した結果および評定制度にもとづいて集められたデーターを用い
   ること。
 ○ 電子的な方法(electroic devices)は利用できない。
 ○ 評定者の上司 (supervisor) は評定結果を点検し署名すること。
 ○ これらの条項の他に、同僚教員 (peer)、親、生徒の分を追加することができる。【註 後述の
   ように地方教委によっては追加規定している 】
 ○ 校長、行政管理職も評定を受ける。
 ○ [不満足](Unsatisfactory )となれば、欠点を通知すること。またそれを[直す]ためのプラン
   ( Remediation plan )、その期間、役に立つ材料、援助も示すこと。
 ○ それでも満足できる状態にならなければ、追加的に[ 直し ]を勧告するか、解雇の手続きが
   とられる。 第63章
 ○ 地方教委の勤務評定制度は、この州のガイドラインに拠ること。 また州教委は、その承認
   を与えること。(shall approve)
( 5 ) 地方勤務評定会議の義務  規則 22-9-107
  最小限、次のメンバーで構成する。
   一名は教員、一名は行政管理職、一名は校長、一名は親、一名は親でない住民
( 6 ) 評定者の訓練、大学の協力
  州議会は全州にわたって、校長、行政管理職のトレーニングが必要であると考える。それ故に
  22-2-109 によって評定者を承認すること、またそのトレーニングを行い、管内のすべての大学
 がこれに協力するものとする。 評定者のトレーニングは最低限、次の領域にわたること。
    ・ 教え、学ぶことの方法   ・ 生徒の学習結果の評価方法   
    ・ 教委の標準要件と委任された事項
【資料協力者】 Barbara L. Lautenbach氏 : Program Assistant 1, Office of Professional Services,
         Colorado Department of Education 感謝している。
それでは次に、地方教委の例を見てみよう。
U Colorado州の地方教委
1. Mesa County Valley 51 教委   GCOA : Evaluation of Certified Staff
  ほとんど前述の州の規定と同じである。
 ただ、この教委規則の特色としては、[転任、解雇の決定については、この資料を予備的資料とし
 て用いてはならない]と定めていることである。より慎重な手続きをとることを示唆しているのであ
 ろう。また、評定者が誠実に職務を執行しているならば、些細な手続きミスは、苦情の対象にはな
 らないと明記している。
【付記】 Allen Russel氏: Phsical Education Specialist of Columbine Elementary School から
    回答があり、そのなかに「ガイドラインづくりには教員組合も参画しています」とあった。
2. Jefferson Couty 教委   GCOA : Evaluation of Instructional Staff , Certificated Personnel
                   Evaluation Act
 前述のMesa County Valley 51 の場合と同じである。
 ただ、次の場合は解雇の通知を州教委にしなければならない、と規定しているのが特記事項で
 ある。
  @ 裁判所によって、教員本人に精神的に問題あり、とされた場合
  A 州教委規則に触れる子供に対する性的違法行為があった場合
  根拠法 : Discipline, Suspension and Dismissal of Professional Staff and Contact Nonrenewal
3. Colorado Spring 11 教委  Evaluation of Evaluators , Evaluation of Instructional Staff
                   District Personnel Performance Evaluation Council
前述のものと大差はない。
  ただ、正式採用教員については、3年毎に評定する。
 また、不意打ちの授業観察を義務づけている。しかし、一回だけは教員本人と打ち合わせること
 ができるとしている。
......2000年3月7日記               無断転載禁止
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