80. アメリカの教育関係統計

      学校規模  学校歳入の区分  教員の満足度  教員給料


杉田 荘治

はじめに
    アメリカの公立学校(小・中・高校)の学校規模、学校歳入の区分、教員の満足度、教員給料などの統計に
    ついて、連邦教育省統計資料:NCES(U.S.Department of Education,National Center for Education Statistics
    (2001年度)から要約しよう。

T 学校規模(生徒数)と生徒と教員の比率     (1998-1999)現在

    場所 全体 大都市 中都市 大都市の
周辺部
中都市の
周辺部
大きい
小さい
田舎の
周辺部
田舎
 学校の規模
 (生徒数)
 521   650  567   655   596  485  413  273  471
 教員一人当たりの
 生徒数
 15.6  17.0  15.5   17.2   16.1  16.5  15.4  15.1  16.4

 【註】場所の区分は、MSA(Metroplitan Statistics Area)という公式区分による。例えば、大都市は
    40万人以上の都市、大きな町は25,000人以上、小さい町は最低2,500人、田舎は2,500人以下。
 【コメント】教員一人当たりの生徒数には大きな違いはない。しかしこれは『学級定員』(別途)とは異なる。
     管理職教員や主任など総ての教員を分母とするからである。また田舎の学校は統合した学校
     (分校制度)が多いためであろうか。   

U 学校歳入の区分割合

  場所 全体 大都市 中都市 大都市の
周辺部
中都市の
周辺部
大きい
小さい
田舎の
周辺部
田舎
連邦政府からの
補助金    %
  6.5   9.6   7.7   4.3   5.6   7.5   7.6   8.1  4.0
州政府からの
補助金    %
 47.7  47.0  52.0   41.6   48.9  53.7  54.0  55.2  48.8
地方からの
交付金    %
 45.8  43.4  40.3   54.0   45.5  38.8  38.4  36.7  47.2
   合計  %  100  100  100  100  100  100  100  100  100

 【註】 学校歳入の区分で連邦政府からの補助金は、2カ国語教育、インデアン教育、身体不自由児教育、
     麻薬対策教育、職業教育、TitleT実施などの費用について交付される。
     また州政府からは、州の定めるスクールランチについて、 また地方からの支出金は、物品税の一部、
     親の教育参加費用補助、ランチ販売金から、生徒の輸送費その他の費用について交付される。
 【註】 連邦TitleT補助金とは低所得者が多い教育区に与えられ、学力的に遅れている生徒に余分の教育サー
     ビスを受けられるようにするための基金であるが次ぎの論文を参照してください。
     45. アメリカの包括的教育改革法案ー提言とともにー追記: 教育改革法成立 

 【コメント】ご覧のとおり、小さい町や田舎の学校はその地方からの交付金は少なく、従って州政府から
    の分は多くなる。連邦政府からの交付金は前述のとおり「条件付き」のものが多い。

    わが国の場合は、学校予算の相当の額を占める教員給料について、公立高校教員は当然の
    こと、小・中学校教員のそれも『県費負担教職員』といわれることからもわかるように、都道府
    県(アメリカの州相当)の負担であり、しかもその2分の1は国庫からの交付金である。従って
    特別な場合を除いて市町村(アメリカの地方)からの支出はない。 また学校などの建物、施設
    設備の多くも国庫負担法によって国または都道府県から交付される点もアメリカとは大きく異なる。   

V 教員の経験年数、取得学歴、満足度など

  2000年度資料で、しかも1996年度の状況であるが下記しよう。またそれぞれについて1961年度分も付記
  するので比較されるとよい。
 1 教職経験年数......平均15年 (1961年度には平均11年)  
 
 2 取得資格...............学位以下 0.3% (1961年度には14.6%)    学位 .43.6% (1961年度には61.9%)
               修士資格 54.5% (1961年度には23.1%)   博士 1.7% (1961年度には0.4%)  
 3 平均年齢............全体では44歳、うち男子 46歳、 女子 44歳 (196年度、全体41才、男子34才、
                                                女子46才) 

 4 教員としての満足度.....非常に満足 32.1%(1961年度では49.9%)  やや満足 30.5% (1961年度 26.9%)
                   普通 17.3% (1961年度 12.5%)      やや不満 15.8% (1961年度 7.9%)
                   非常に不満 4.3% (1961年度 2.8%)   
 5 公立学校教員数........ 全体 216,4000人 (1961年度 1408,000人)
                   内、男子 25.6%   女子 74.4% (1961年度 男子 31.3%   女子 68.7%)
    【註】別のNCES(2001)によれば、2001年秋現在で、
        全国教員数........3,551,000名 (うち公立  3,119,000名、 私立  432,000名)
        全国生徒数......53,157,000名 (うち公立 47,213,000名  私立 5,944,000名)
        教員一人当たりの生徒数......15.0名 (公立 15.1  私立 13.8)

 6 教員の人種.................白人 90.7%   黒人 7.3%   その他 11.8% (1961年度 統計なし)

 7 学級定員..................24名 但し中等学校は31名 (1961年度 29名 但し中等学校 28名)

 【コメント】とくに「教員としての満足度」が低下していることに注目したい。 

W 公立学校教員の給料(州別)  年平均給料 ドル (2000-01)年度 
                     資料:連邦教育省、一部NEA

  Alabama  39,150   Montana  34,679
  Alaska  48,512   Nebraska  38,219
  Arizona  47,779   Nevada  42,469
  Arkansas  35,777   New Hampshire  47,184
  California  49,539   New Jersey  56,709
  Colorado  41,356   New Mexico  34,614
  Connecticut  54,000   New York  52,491
  Dekaware  49,080   North Carolina  42,798
District of Columbia  50,749   North Dakota  31,194
  Florida  39,037   Ohio  44,250
  Georgia  44,328   Oklahama  36,220
  Hawai  43,281   Oregon  44,254
  Idaho  38,093   Penssylvania  50,700
  Illinois  50,746   Rode island  55,609
  Indiana  44,262   South Carolina  39,171
  Iowa  37,811   South Dakota  31,142
  Kansas  41,687   Tennessee  38,566
  Kentucky  39,227   Texas  40,720
  Louisiana  35,904   Utah  40,682
  Main  39,000   Vermont  38,696
  Maryland  46,796   Virginia  41,103
  Massachusetts  59,763   Washington  44,223
  Michigan  49,975   West Virginia  37,006
  Minnesota  41,926   Wisconsin  44,634
  Mississippi  34,292   Whoming  35,393
  Missouri  38,700  United States  44,993

【コメント】ご覧のとおり最高のNew Jerseyと最低のSouth Dakota との差は大きい。しかも同じ州のなかでも
   富裕な地方や教委と貧困なそれらとの格差も大であろう。また先に述べた『NEA発表による教員給料』も
   参照されるとよい。若干の相違がある。そこでコメントしたように、わが国の方式は優れていると考える。
   すなわち、いかに財政的に貧しい地方や地教委といえども教員給料について心配する必要はないし、優
   れた教員を確保することができる(市町村立学校職員給与負担法)。
   さらに、その県費の半分は国庫から支出される(義務教育費国庫負担法)。従って財政的な厳しい県といえ
   ども余り教員給料について心配する必要はなく、全国的にみても良い教員を確保し高い教育水準を維持す
   ることができる。

 2003. 4. 4記                無断転載禁止